食品中の放射性物質濃度の基準値に対する影響に関する研究

文献情報

文献番号
201327047A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の放射性物質濃度の基準値に対する影響に関する研究
課題番号
H24-食品-指定(復興)-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
明石 真言(独立行政法人放射線医学総合研究所 食品放射性物質等研究チーム)
研究分担者(所属機関)
  • 青野 辰雄(独立行政法人放射線医学総合研究所 食品放射性物質等研究チーム)
  • 高橋 知之(京都大学原子炉実験所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
23,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成23年の東京電力(株)福島第一原子力発電所(FDNPS)事故による放射性物質の放出で、食品による内部被ばくが懸念され、厚生労働省は食品に関して年間線量1 mSvから導出された濃度を基準値とし、適用している。この基準値は、放射性セシウム濃度について設定し、その他の核種は放射性セシウムとの比からその濃度を推定し、それらすべての核種からの線量が年間1 mSvを超えないように設定されている。このため、食品及びその加工等における放射性核種濃度比の変化についても把握した上で、個別食品の摂取から受ける線量に対する放射性セシウムの寄与を精度良く評価するために、食品の基準値を策定する際に推定された放射性セシウムの線量への寄与率について、その妥当性の検証をする。
研究方法
1. 食品加工や調理に伴う食品中の放射性物質の濃度変化に関する研究
平成23年3月のFDNPSの事故由来の放射性物質だけでなく、その後新たに流出された放射性核種の影響を確認する必要があり、FDNPS から20km圏内の海域の魚介類を採取し、放射性核種濃度を測定した。また調理加工に伴う濃度の減少について検討した。
2. 環境中における放射性物質動態の実態把握に関する研究
市場流通している福島県産農畜産物から、放射性核種濃度等を測定し、その結果を基準値導出に用いられた濃度比や、過去の大気圏内核実験によるフォールアウトに起因する農作物中の放射性核種の濃度レベルと比較検討した。あわせて、農畜産物の経口摂取による放射性セシウムに起因する内部被ばく線量を評価した。
結果と考察
1. 食品加工や調理に伴う食品中の放射性物質の濃度変化に関する研究
食品中の基準値を超えた試料は、相馬沖合のコモンカスベだけであった。また調理加工に伴い、可食部の放射性セシウム濃度(Cs-134+Cs-137)とK-40が40%程低下することが明らかとなった。 海水中の放射性セシウム濃度が事故前のレベルに近い濃度で、また餌となるプランクトン中の濃度が事故前の濃度レベルまで下がっている。一方で海底堆積物中の濃度は底質組成により濃度差が大きいため底生生物を捕食するヒラメやコモンカスベのような底層魚では放射性セシウム濃度は高い傾向にあることが考えられた。
2. 環境中における放射性物質動態の実態把握に関する研究
平成24~25年度の農畜産物中の放射性セシウム濃度は検出下限値未満から40.2 Bq/kg-生重量で、一般食品の基準値を超えるものはなかった。平成24年度試料中のSr-90濃度は、検出下限値未満であった。約10 kgの玄米、キュウリ、ジャガイモ、大豆試料からSr-90濃度を定量した結果、0.012~0.30 Bq/kg-生重量であった。Cs-137濃度及びSr-90濃度検出下限値と、過去のフォールアウトの影響及び食品中放射性セシウム基準値導出に用いられたに用いられた核種濃度比との比較検討を行った。その結果、Sr-90濃度は過去の大気圏内核実験由来の濃度レベル以下と推定された。基準値の導出の考え方によるSr-90/Cs-137濃度比よりも低く、基準値導出における推定方法が妥当であることが示唆された。大量試料中の核種濃度を用いても同様の結果であった。農畜産物中Cs-137濃度から推定した食品(農畜産物)摂取に起因する成人男子及び女子に対する線量は、平成24年度はそれぞれ0.069 mSv及び0.054 mSv、平成25年度は0.016 mSv及び0.012 mSvであった。年間1 mSvを大幅に下回っており、平成25年度は平成24年度より低くなっていることが明らかとなった。この推定値は保守的な仮定に基づく過大評価であり、より現実的な被ばく線量の評価方法について検討する必要がある。
結論
1. 食品加工や調理に伴う食品中の放射性物質の濃度変化に関する研究
採取された魚介類11種類のうち、可食部で食品中の基準値を超えた試料は、楢葉町沖合のコモンカスベだけであった。調理加工に伴い、可食部の放射性セシウム濃度が40%程低下することが明らかとなった。
2. 環境中における放射性物質動態の実態把握に関する研究
福島県産品食品中の放射性物質濃度を測定した結果、一般食品の基準値である100 Bq/kgを超える農畜産物はなく、Sr-90濃度は、平成24年度試料において全て検出下限値未満で、またSr-90濃度は、0.012~30 Bq/kg-生重量であった。本研究の結果を過去の農作物中の濃度及び食品中放射性セシウム基準値の導出の際に評価した核種濃度比と比較検討した結果、基準値導出における推定方法が妥当であることが示唆された。また食品からの被ばく線量を試算した結果、保守的な仮定でも、年間1mSvを大幅に下回っていることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201327047Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
30,000,000円
(2)補助金確定額
30,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 15,375,574円
人件費・謝金 0円
旅費 618,486円
その他 7,082,940円
間接経費 6,923,000円
合計 30,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
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