震災に起因する食品中の放射性物質ならびに有害化学物質の実態に関する研究

文献情報

文献番号
201327046A
報告書区分
総括
研究課題名
震災に起因する食品中の放射性物質ならびに有害化学物質の実態に関する研究
課題番号
H24-食品-指定(復興)-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
蜂須賀 暁子(国立医薬品食品衛生研究所 代謝生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 堤 智昭( 国立医薬品食品衛生研究所  食品部)
  • 渡邉 敬浩( 国立医薬品食品衛生研究所  食品部)
  • 松田 りえ子( 国立医薬品食品衛生研究所  食品部)
  • 畝山 智香子( 国立医薬品食品衛生研究所  安全情報部)
  • 鍋師 裕美( 国立医薬品食品衛生研究所  食品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大震災と津波により、放射性物質を含む多量の規制化学物質が環境に放出された。これらの物質の食品中への移行は食品衛生上、大きな問題である。食品中の放射性物質は、平成24年度に食品衛生法第11条が適用され、新たな基準値による規制が施行されたことから、検査の信頼性が一層重要となった。一方、震災により放出された放射性物質以外の化学物質の食品への影響は全く検討されていない。本研究では、効率的・効果的な検査手法の確立、検査結果の信頼性の向上、きめ細やかな規制のあり方等について検討する。また、震災による放射性物質以外の化学物質の影響を評価するための研究を行う。
研究方法
現在の出荷前の検査体制による食品安全への効果を検証するため、福島周辺の18都県産の流通食品を買い上げ、放射性セシウムの濃度を測定する。放射性物質検査に適した適正なサンプリング計画を策定するために、サンプリングの国際規格等を比較検討する。効率的な検査計画の立案に資するため、厚生労働省に報告されたモニタリング検査データを詳細に解析し、食品中の放射性セシウムの分布、変動、減衰の状況を把握する。また、放射性物質測定に伴う不確かさの要因及びその大きさを明らかにする。調理加工による放射性物質濃度の変動を調べる。
震災・津波により環境に流出した可能性が高く、健康影響へのリスク管理の観点から実体を把握すべき化学物質として、ポリ塩化ビフェニル(PCBs)並びに重金属を取り上げ、魚介類を中心とした食品中の濃度実態を調査する。また、震災前後にリスクが変化している化学物質を探索し、今後のリスクコントロールの必要性を評価する。
結果と考察
流通食品1674試料を購入し、放射性セシウム濃度を測定した。基準値である100 Bq/kgを超過した試料は5試料(0.3%)であり、昨年度の調査と同程度であった。
放射性物質検査の適正なサンプリング法の検討では、食品ロット内の濃度に分布を想定しない(想定し得ない)場合に合意されうるサンプリング計画について国際的な規格等を比較した。さらに、ロット内濃度の分布型を仮定し、合意されうるサンプリング計画を実行した場合の性能についてシミュレーション解析した。
また、効率的検査計画の検討のため、公表されている食品中の放射性セシウム濃度データ90,826件を集計し、産地、食品カテゴリ別等により放射性セシウム検出率、濃度等を求めた。流通食品では、基準値超過食品の割合は0.02%で非常に低いが、非流通食品では検出割合が高く、高濃度の試料が見られることから、高濃度の放射性セシウムを含む食品が、効果的に流通から排除されていると考えられた。今後は、山菜、きのこ、淡水魚、野生鳥獣肉のような天然の食品中の放射性セシウムの測定を増加させていくことが重要と考えられた。
検査の信頼性保証の検討として、食品衛生法に基づく食品中放射能検査における各操作と不確かさの要因との関連を考察し、試料の形状の違いによるジオメトリーの変化に伴う、検査結果への影響を試算した。
調理に伴う食品中の放射性セシウム量の変化を、なめこおよびわかさぎを用いて調べ、茹でによる放射性セシウムの除去率は約40%となることを明らかにした。
津波による新たな食品汚染の発生の有無を明らかにするため、本年度はPCBsを対象に、津波被災地域で市販された魚類製品101試料を買い上げ、それら食品のPCBs濃度の実態を調査した。また、昨年度の研究により取得した各種食品中の15元素濃度データを主成分分析した。
また、震災前後に健康リスクが変化している化学物質は、環境や食品中の濃度変動よりも個人の行動変化のほうが寄与率が高そうであることが昨年度の研究成果として示唆された。そこで、消費者が適切なリスク管理を行うために必要な情報について調査した。その結果、食生活全体のリスクを適切に管理するためには、特定の項目だけではなく全体のリスクに関する情報も同時に提示することが望ましいことが示唆された。
結論
放射性物質の非流通食品も含めた検査結果解析から、規格不適合食品の排除は適切になされていると考えられた。今後、監視を強化継続すべき食品群は、山菜、きのこ、淡水魚、野生鳥獣肉のような天然の食品と考えられた。信頼性が高い検査体制の充実により、安全な食品の流通を保証すること、並びに消費者が適切なリスク管理を行うために必要な情報を提供していくことは、食品の安全・安心に繋がるとともに、風評被害を防止し、被災地域における農漁業の復興に繋がると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201327046Z