食品中の病原ウイルスの検出法に関する研究

文献情報

文献番号
201327036A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の病原ウイルスの検出法に関する研究
課題番号
H25-食品-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
野田 衛(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 智之(堺市衛生研究所)
  • 斎藤 博之(秋田県健康環境センター)
  • 名古屋 真弓(小原 真弓)(富山県衛生研究所)
  • 鈴木 達也(財団法人食品薬品安全センター秦野研究所)
  • 上間 匡(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウイルス性食中毒は依然多発し、近年はノロウイルス以外のウイルスによる事件も増加傾向にある。食中毒の原因究明や食品のウイルス汚染実態の把握には食品のウイルス検出法の確立が必要であるが、困難な場合が多く、遺伝子が変異し検出困難な事例も認められる。そのためノロウイルス以外のウイルスの検出法や検出困難なウイルスを迅速に検出同定する技術が必要である。また,そのような変異株の出現を早期に探知し、迅速に対応するためには食品や環境のウイルスサーベイランスが不可欠である。一方現在食品ウイルス検査は外部精度管理体制が確立されておらず信頼性が確保されていない。以上の背景から,本研究では,ウイルス性食中毒の検査体制の強化,高度化および標準化並びにウイルス性食中毒予防に必要な疫学データ等の蓄積等を目的として研究を行った。
研究方法
全国18地方衛生研究所等の協力の下,研究を実施した。
(1)食品からのウイルス検出法および遺伝子解析法の開発:研究班で開発した食品からのウイルス検出法であるパンソルビン・トラップ法の高精度化に向けた検討を実施した。市販カキを用いて,nested PCR法とリアルタイムPCR法による検出率等を比較した。異なる次世代シークエンサー(MiSeqおよびIon PGM)を用いて,網羅的ゲノム解析のノロウイルス食中毒調査の適応に向けた基礎的な研究を実施した。
(2)変異株等早期検出のための食品・環境等のサーベイランス:市販カキ等を対象として,ノロウイルス,サポウイルス,A型およびE型肝炎ウイルス等の腸管系ウイルスの検索を実施した。下水等を対象として,ノロウイルス,サポウイルス等の検索を実施し,ヒトの食中毒および胃腸炎散発例,集団発生事例から検出されたウイルスとの関連性等を分析した。計382の遺伝子型GII/4のノロウイルス株について,ORF2-3全長の塩基配列を決定し,進化系統解析および立体構造解析を行った。各地域で発生した食中毒,胃腸炎集団発生,散発例等からウイルス検出を行い,検出ウイルスの遺伝子解析を行うとともに,疫学的な解析を行った。
(3)食品のウイルス検査の精度管理体制の確立に関する研究:12地方衛生研究所を対象として,共通試料(陽性試料2種類,陰性試料1種類および標準cDNA溶液)を配布することにより外部精度管理を行った。
結果と考察
(1) 食品からのウイルス検出法および遺伝子解析法の開発:食品からにウイルス検出法の開発として,パンソルビン・トラップ法で得た濃縮検体の逆転写反応やPCRに使用する酵素や反応条件の最適化,DNase処理やアミラーゼ処理の改善により,結果のばらつき要因の減弱化や高感度化など検査精度の向上が図れた。通知法の陽性判定基準(実測値10以上)に基づくリアルタイムPCRによる検査では,偽陰性となる場合が多く,カキの安全性を確保することが困難であると考えられた。網羅的ゲノム解析法において、PCR産物を解析対象とした場合は効率的にノロウイルス遺伝子を検出し,解析可能であったが,検体から直接得たRNAを用いた場合はノロウイルス以外の遺伝子が多く含まれ,解析が困難であった。
(2) 変異株等早期検出のための食品・環境等のサーベイランス:加熱調理用カキは生食用カキと比較して,検出率,汚染ウイルス量,汚染ウイルスの遺伝子型数等が高い傾向にあった。生食用カキの汚染率は採取海域により大きく異なった。2012/13シーズンに流行したGII/4 2012変異株のカキへの蓄積が確認された。A型およびE型肝炎ウイルスはカキから検出されなかった。下水,カキ,ヒトから検出されるノロウイルス遺伝子型は大まかには一致するものの,GI.4が多く検出されるなど,異なる傾向を示す場合も認められた。2012/13シーズンにおけるノロウイルスの主な流行株はGII/4 2012変異株であった。GII/4 2012変異株はORF1がGII.4_2007a,ORF2と3のGII.4のキメラウイルスであった。2013/14シーズンもノロウイルスGII/4 2012変異株が主流であったが,それ以外の遺伝子型の占める割合が増加した。
(3) 食品のウイルス検査の精度管理体制の確立
糞便試料を用いたノロウイルスGIIのリアルタイムPCR検査の外部精度管理を12機関を対象に実施した。定量値のバラつきの要因として,各機関で使用している検量線作成用cDNA溶液の違いが影響している可能性が示唆された。一方,得られた測定値の対数変換値を用いてXbar-R管理図を採用することにより,精度管理の評価ができるものと考えられた。
結論
ウイルス性食中毒の検査体制の強化,高度化および標準化並びにウイルス性食中毒予防に必要な疫学データ等の蓄積等が図れた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201327036Z