非動物性の加工食品等における病原微生物の汚染実態に関する研究

文献情報

文献番号
201327034A
報告書区分
総括
研究課題名
非動物性の加工食品等における病原微生物の汚染実態に関する研究
課題番号
H25-食品-一般-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 春日 文子(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
  • 窪田 邦宏(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
  • 杉山 広(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 田口 真澄(大阪府立公衆衛生研究所 感染症部)
  • 百瀬 愛佳(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腸管出血性大腸菌やボツリヌス菌等、病原微生物の中には人命を脅かすものが少なくない。危害性の高いこれらの病原微生物に対する衛生対策はこれまで動物性食品を主体として進められてきたが、近年では漬物や容器包装詰低酸性食品等に起因する食中毒事例が相次いでおり、汚染実態を把握し、食の安全確保に必要となる基礎的知見を集積することが求められている。本研究では、非動物性の加工食品等を対象として、危害性判断に当たって求められる国内外の情報収集・整理および実態を捉えた定量データの集積をはかることを目的とする。
研究方法
1.病原微生物(細菌・寄生虫)による食中毒発生に関する情報調査:非動物性食品、特に野菜・果実・漬物等に関連して発生した食中毒アウトブレイク事例あるいは食品汚染実態に関する情報収集を行い、その発生頻度・大きさ・原因物質・汚染原因等に関し、動物性食品との比較を行った。
2.国内浅漬け製品における細菌汚染実態に関する検討:国内浅漬製品166検体を対象として、主要病原細菌(EHEC,サルモネラ属菌,リステリア・モノサイトゲネス)並びに衛生指標菌の定量検出を行った。更に、次世代シークエンサーを用いたメタゲノム解析を通じ、構成細菌叢を明らかにした。また、製造工程における衛生状況把握を目的として、事業者の協力の下で中間製品・施設ふき取り検体を対象として、上述の細菌試験を行った。漬物の生産・流通実態に関する情報を取りまとめた。
3.ボツリヌスの食品内増殖に係る理化学的検討:容器包装詰低酸性食品として流通する食品種についてインターネット検索により実態を明らかにすると共に、「たくあん」製品を無作為に抽出・購入し、理化学性状(酸化還元電位、pH)および指標菌数等の細菌検査を実施した。代表検体を用いて、ボツリヌス菌(A・B型)を用いた保存試験を実施した。
4.寄生虫卵回収法に関する検討:細菌試験に汎用されるストマッカーを使用した場合の回収率を従来法と比較することで、その適用性を評価する基礎資料の作成にあたった。
結果と考察
1.浅漬け検体は何れもEHEC及びサルモネラ陰性であった他、一般細菌・大腸菌群数は一定の汚染値を示し、夏季に増加傾向を示した。12検体はリステリア陽性であったが、これらは異なる時期に特定の施設で製造されており、施設内持続汚染が想定された。メタゲノム解析により、構成細菌叢は概して原材料に関連すると考えられた。浅漬け製造過程における細菌汚染状況を調査したところ、塩漬と殺菌工程を通じて指標菌は段階的な低減を示し、最終製品の安全性確保に寄与すると考えられた。この他、漬物の生産・流通実態に関する情報収集を行い、年末~春先にかけて生産量が増加する傾向を把握した。原材料別では大根、キュウリ等が大半を占めた。
2.寄生虫症例に関する情報収集を行い、回虫症を始めとする土壌媒介寄生蠕虫症が、少ないながらも依然として国内で発生している実態を把握した。検査機関における汚染実態に関する成績を鑑みて、それらの感染源は、海外流行地から輸入される野菜(特に根菜類)ではないかと考えられた。この他、野菜等から寄生虫卵を回収する手法として、ストマッカーの利用性に着目した。虫卵検出率は従来法と同等であった。
3. 容器包装詰低酸性食品として国内に流通する食品のうち、「たくあん」が通年で流通し、厚生労働省による指導内容を逸脱した製造基準を経て製造流通される製品が存在する実態を把握した。一部製品ではボツリヌス菌の短期保存が確認された。
4. 非動物性食品における食中毒リスクとして注視すべき食品と病原体の組み合わせは、サルモネラでは生鮮野菜、生鮮果物、ナッツ類、香辛料等であった。STECでは生鮮野菜、特にサラダ、スプラウト、ホウレンソウ、レタス、バジル等が危害要因として抽出された。
結論
野菜浅漬けは多様な原材料から製造されており、地域性や季節性にも富んでいた。リステリア陽性となった検体の製造事業者については、実態を伝えると共に状況改善への協力を行っていく必要があると考える。また、原材料との関連性が認められた細菌叢に関する知見は、原材料別に当該製品の衛生管理を行う必要性と可能性を示唆している。寄生虫汚染に関する項目では、海外汚染地域からの輸入生野菜に特に留意する必要性があることを示す他、国内情報の更なる収集が望まれる。一部のたくあん製品でボツリヌス菌の短期保存が確認されており、異なる温度帯での検証及び食品内毒素挙動等に関する検討が必要と思われる。海外の各種情報収集を通じ、特に危害性が懸念される食品と微生物の組み合わせを抽出できた。来年度以降は、国内実態に関する情報収集が必要と考えられるが、国内食品における汚染実態検討対象候補として捉えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201327034Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
10,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,648,641円
人件費・謝金 500,400円
旅費 902,150円
その他 1,949,307円
間接経費 0円
合計 10,000,498円

備考

備考
預金利息 498円

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-