食品用器具・容器包装等に含有される化学物質の分析に関する研究

文献情報

文献番号
201327027A
報告書区分
総括
研究課題名
食品用器具・容器包装等に含有される化学物質の分析に関する研究
課題番号
H25-食品-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
六鹿 元雄(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部 裕(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品用器具・容器包装、おもちゃ及び洗浄剤(以下、「器具・容器包装等」)の安全性は、食品衛生法の規格基準により担保されているが、器具・容器包装等の多様化、新規材質の開発、再生材料の使用、諸外国からの輸入品の増加等により多くの課題が生じている。また近年、食品の安全性に対する関心が高まり、食品の試験及び分析に求められる信頼性の確保も重要な課題となっている。そこで、器具・容器包装等の安全性に対する信頼性の確保を目的として、規格試験法の性能評価に関する研究及び市販製品に残存する化学物質に関する研究を行った。
研究方法
規格試験法の性能評価に関する研究では、ポリエチレンテレフタレート(PET)製器具・容器包装のアンチモン(Sb)及びゲルマニウム(Ge)溶出試験、並びにゴム製品の亜鉛(Zn)溶出試験について試験室間共同試験を行い、これら試験法及び代替法の性能評価を行った。市販製品に残存する化学物質に関する研究では、ポリ塩化ビニル製玩具のフタル酸エステル測定における共存可塑剤の影響と高速液体クロマトグラフ/タンデム質量分析法(LC/MS/MS)を用いた測定法の検討及び植物油総溶出量試験法の改良を行った。
結果と考察
PET製器具・容器包装のSb及びGe試験については、電気加熱方式原子吸光光度法(GF-AAS)及び誘導結合プラズマ発光強度測定法(ICP-OES)の性能パラメーターの値はSb、Geともに目標値を満たしており、規格試験法として十分な性能を有していることが判明した。食品衛生法では採用されていない誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)では、いずれの試験機関の定量下限値も規格値より十分に低く、性能パラメーターの値もGF-AAS及びICP-OESと同等以上であり、規格試験法の代替法として十分に適用可能であった。しかし、いずれの試験法においても一部の試験機関でSbの定量値が添加量よりも明らかに高い傾向が見られた。その主な原因として検量線溶液の濃度が不正確であった可能性が高いと考えられた。また、ICP-OESにおいては、試験溶液を蒸発乾固させたのち、4%酢酸に再溶解して10倍濃縮して測定する方法についても検討したが、約半数の試験機関では正確な定量値が得られなかった。ゴム製品のZn試験については、フレーム方式原子吸光光度法(AAS)及びICP-OESの性能パラメーターの値は目標値を満たしており、規格試験法として十分な性能を有していることが判明した。ただし、装置や器具からの汚染に注意を払う必要がある。また、食品衛生法では採用されていないICP-MSでは、性能パラメーターの値はAAS及びICP-OESと比べてやや劣っていたが、規格試験法の代替法として適用可能であった。ポリ塩化ビニル製玩具のフタル酸エステル測定における共存可塑剤の影響とLC/MS/MSを用いた測定法の検討については、食品衛生法で規定されているガスクロマトグラフ/質量分析法(GC/MS)による6種のフタル酸エステル試験法において、アジピン酸ジイソノニル及びテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)が大量に含まれている場合、フタル酸ジ-n-オクチル及びフタル酸ジイソノニルの定量値が実際の含有量よりも大きくなることを明らかにした。さらに、新たなフタル酸エステル測定法としてLC/MS/MSを用いた方法を開発した。本法は3種類のカラムを使い分ける必要があるが、6種のフタル酸エステルを他の可塑剤と分別して定量することが可能であり、その真度、併行精度及び室内再現精度も良好であった。植物油総溶出量試験法の改良では、欧州規格EN 1186のオリブ油総溶出量試験法の工程うち、試料の恒量化及び植物油の定量法について検討を行った。その結果、試料の恒量化においては43.4%硫酸を用いた温度20℃、相対湿度50%の硫酸デシケーターによる安定化が最適であった。本条件により、安定化が困難とされていた材質においても短期間で安定化することができた。また、植物油定量法においては、メチルエステル化にナトリウムメトキシド法を採用し、その反応条件を検討した。ナトリウムメトキシド法は、EN 1186の三フッ化ホウ素メタノール法と同程度のメチルエステル体が得られ、さらに操作が簡便であり、しかも0.5~1500 mgの広範囲のオリブ油に適用可能であった。
結論
本研究によって得られた科学的知見は、極めて有用であり、厚生労働行政に大きく貢献するだけでなく、器具・容器包装等に関連するすべての者に対して有益な情報をもたらすことが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201327027Z