食品中残留農薬等の安全性確保に関する研究

文献情報

文献番号
201327026A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中残留農薬等の安全性確保に関する研究
課題番号
H25-食品-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
根本 了(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
  • 坂井隆敏(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 齊藤静夏(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品に残留する農薬等に関するポジティブリスト制度の導入に伴い、規制対象の農薬等は約800品目を超える。食品中の残留農薬等の安全性を確保するためには、膨大な数の残留農薬等を分析し、精確かつ効率的に分析値を求める必要がある。また、食品中の残留農薬等の分析では、食品由来の夾雑成分の影響により精確な分析値を求めることが困難な場合がある。そこで本研究では、残留農薬等の分析に適した1)精確な定量法の確立及び2)効率的・網羅的な分析法の開発について検討した。1)では①安定同位体標識標準品(「安定同位体」と略す。)を用いた内標準法及び②標準添加法に着目し、その標準的使用方法及び評価方法について検討した。2)では①LC-(Q)TOF-MS法及び②GC-TOF-MS法を用いた残留農薬一斉分析法について検討した。
研究方法
1)精確な定量法の確立
安定同位体を用いた内標準法の検討では、LC-MS/MSを用いて安定同位体の種類や標識数、測定条件、未標識体の含有量などが分析値に与えるに影響について検討した。標準添加法の検討では、大豆マトリックス標準溶液を用いて検量点数や添加濃度の定量精度に与える影響について評価した。
2)効率的・網羅的な分析法の開発
LC-(Q)TOF-MS法の検討では、分子量約200~700の6農薬を用いて残留農薬分析に適したTOF-MS条件(キャピラリー電圧、コーン電圧及びコリジョンエネルギー(CE))、定量解析条件及び確認方法について検討するとともに、151農薬を用いて再現性や検量線の直線性について評価した。GC-TOF-MS法の検討では、ほうれんそう及び玄米のマトリックス標準溶液を用いて定量解析条件を確立し、184農薬について定量性、選択性、検出限界、検量線の直線性について評価した。
結果と考察
1)精確な定量法の確立
安定同位体を用いた内標準法の検討では、安定同位体の標識数の増加に伴い保持時間が短くなる傾向があることが確認された。農薬等と対応する安定同位体との保持時間が異なる場合には、試料マトリックスの影響が異なり、補正精度に影響することが推察された。安定同位体中の未標識体の含有量の検討から、低濃度を測定する場合には化合物によっては測定値が影響を受ける可能性があり、予め安定同位体中の未標識体の含有量を確認し、分析値に影響が無い添加量を用いることが重要であると考えられた。
標準添加法の検討では、大豆マトリックス標準溶液を用いて標準添加法における検量点数(1~5点)及び添加濃度の定量精度に与える影響について検討した結果、初期濃度に近い1点を回繰り返し測定した場合の方が、多数の検量点を用いた場合よりも良好な結果が得られると考えられた。
2)効率的・網羅的な分析法の開発
LC-(Q)TOF-MS法の検討では、残留農薬の一斉分析に適したTOF-MS条件を確立した。確認条件の検討から、CEを定量では4 eVで、確認では10~40 eVの範囲で走査して測定することにより、定量と確認を同時に行うことが可能であった。
GC-TOF-MS法の検討では、抽出質量幅のピーク面積の再現性及び選択性に与える影響について検討し、最適な抽出質量幅として20~50 mDaが得られた。また、マトリックス標準溶液(試料中0.005 ppm相当濃度)を用いた検討より、検討農薬の約9割で良好な再現性及び選択性が得られた。
結論
1)精確な定量法の確立
安定同位体を用いた内標準法の検討では、保持時間の違いや非標識体の含有量などの検討から、本法を用いる際に分析結果に影響を及ぼす因子等について考察した。今後、実際の試料マトリックス存在下で検討し、本法を使用して精確な分析値を得るために必要な条件等を明らかにする予定である。
標準添加法の検討では、大豆マトリックス標準溶液を用いた検討から、初期濃度に近い1点を回繰り返し測定する方法が良好な結果を与えることが示唆されたことから、更に様々な食品を用いて検討し、残留農薬検査に適用可能な標準的な方法を確立するとともに、その性能評価基準について検討する予定である。
2)効率的・網羅的な分析法の開発
LC-(Q)TOF-MS法の検討では、残留農薬一斉分析に適したTOF-MS条件や定量解析条件を確立した。今後、農薬及び動物薬を対象にLC-(Q)TOF-MSを用いて妥当性評価試験を行い、本法の一斉分析への適用性について検討を行う予定である。
GC-TOF-MS法の検討では、マトリックス標準溶液を用いて定量解析条件を確立した。また、定量性、選択性、検出限界、検量線の直線性について良好な結果が得られたことから、本法は残留農薬一斉分析法の測定法として適用可能であり、スクリーニングのみならず基準値判定にも用いることが可能であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201327026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,000,000円
(2)補助金確定額
6,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,573,603円
人件費・謝金 0円
旅費 230,140円
その他 196,699円
間接経費 0円
合計 6,000,442円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-05-18
更新日
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