食品添加物等における遺伝毒性・発がん性の短期包括的試験法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201327023A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物等における遺伝毒性・発がん性の短期包括的試験法の開発に関する研究
課題番号
H24-食品-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 梅村 隆志(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部 )
  • 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ラット発がん性試験は長期間を要する。そのため、評価の迅速化を図る目的で開発されたラット肝中期発がん性試験法は予測精度が高いが、検出するのは発がん性自体ではなく主に発がん促進作用である。一方、種々の遺伝毒性試験の中ではin vivo試験の成績が重視されるが、検索細胞・組織が限定されるため、発がん標的臓器における遺伝毒性をどの程度正確に反映しているか不明な点も多い。近年開発されたレポーター遺伝子導入動物による遺伝毒性検索モデルは、臓器・組織レベルでの遺伝毒性の検索を可能にし、中でもgpt deltaは点突然変異及び欠失変異を効率よく検出できる利点がある。本研究は、gpt deltaラットを用いた肝臓および腎臓を主たる標的とする発がん性・遺伝毒性物質の短期検出モデルの開発を目的とする。
研究方法
ラットにCYP2E1、CYP1A2またはCYP2B1誘導剤を4週間経口投与し、6週後にジエチルニトロサミン(DEN)を単回腹腔内投与した。また、DEN投与時に残存肝組織の細胞増殖活性が最大となるように、DEN投与18時間前に部分肝切除を施し、切除肝においてCYP2E1、CYP1A2またはCYP2B1活性を測定した。4週後に一旦休薬し7週後から投与を再開する群と13週間継続投与する群を設けた。開始13週後の残存肝組織においてGST-P陽性肝細胞巣の定量的解析を行った。

ラットにニトリロ三酢酸三ナトリウム(NTA)を4週間経口投与後、6週後にDENを単回腹腔内投与した。DEN投与時に残存腎組織の細胞増殖活性が最大となるように、DEN投与の48時間前に片側腎を摘出し、その後8-16週で剖検し、残存腎を用いて前腫瘍性病変の病理組織学的解析を行った。gpt deltaラットにaristolochic acid(AA)、d-limonene(DL)、potassium dibasic phosphate(PDP)またはphenylbutazone(PB)を4週間投与し、6週後にDENを投与した。DEN投与の48時間前に片側腎を摘出し、摘出腎を用いてgpt assayを実施した。投与12週間後に残存腎を用いて病理組織学的解析を行った。

gpt deltaラットに2-メチルフラン(2-MF)を13週間経口投与後、肝臓の一部をin vivo変異原性試験用に採材し、液体窒素で急速凍結し保存した。また、主要臓器については重量測定を行い、全身諸臓器についてホルマリン固定後、常法によりパラフィン切片を作製しH-E染色後、病理組織学的検査に供した。前癌病変(GST-P陽性細胞巣)の解析に際しては、免疫組織化学的に染色し画像解析装置を用いて定量した。
結果と考察
休薬期間を設けない群においては、部分切除肝におけるCYP2E1活性の有意な減少あるいはCYP1A2およびCYP2B1活性の有意な上昇がみられたものの、休薬期間を設けた群においては明らかな変化はみられなかった。休薬期間を設けない群においては、GST-P陽性細胞巣の数・面積ともに有意に減少したが、休薬期間を設けた群において差はみられなかった。

NTA投与による前腫瘍性病変形成の促進傾向がみられ、DEN 40 mg投与後NTAを投与した群において、片側腎摘出後12週時における発生頻度および個数、16週時における発生個数がDEN単独群に比して有意な高値を示した。PDP投与群およびPBZ投与群において、最終体重が有意に減少し、腎臓の絶対および相対重量が有意に増加した。DL投与群においては相対腎重量が有意に増加した。

2-MF の13週間反復投与において、6 mg/kg以上の雄でALPの高値、雌で相対肝重量の高値が認められた。病理組織学的に、6 mg/kg以上の雌で肝細胞のアポトーシス、雌雄で胆管増生、30 mg/kgの雌雄で胆管線維症、雄で卵円形細胞の増殖が認められた。雌雄の30 mg/kgでGST-P陽性細胞巣が有意に増加した。一方、gptおよびSpi-アッセイのいずれにおいても投与の影響は認められなかった。
結論
gpt deltaラット肝を用いた遺伝毒性・発がん性の短期包括的試験法の開発を目的として、被験物質とDENの相互作用を回避する改良プロトコールを確立した。gpt deltaラット腎を用いた遺伝毒性・発がん性の短期包括的試験法の開発のための条件を検討し、標準プロトコールを確立した。また、本試験法に種々の既知発がん物質を適用する動物実験を終了した。2-MFの一般毒性については、雌雄において肝・胆道系障害を示唆する病理組織学的変化等が認められたことから、無毒性量は雌雄ともに1.2 mg/kg/日であると考えられた。また、肝臓において前癌病変が増加したことから、肝発がん性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201327023Z