食中毒調査における食品中の病原大腸菌の統括的検査法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201327021A
報告書区分
総括
研究課題名
食中毒調査における食品中の病原大腸菌の統括的検査法の開発に関する研究
課題番号
H24-食品-一般-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 由起子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 西川 禎一(大阪市立大学大学院 生活科学研究科)
  • 大西 真(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品からの腸管出血性大腸菌の効率的検出法は、血清群O26、O103、O104、O111、O157について個別に通知されているものの、対象食品の限定もあり、統括的な検査法が必要とされている。また、諸外国では血清群O157に加え、感染の多い血清群4~6種類を対象にした食品または牛肉からの検査法が検討されており、日本でも独自に主要な血清型を決定し、食品検査法を確立する必要がある。また、腸管毒素原性大腸菌については食品での検査法は確立されていない。このため、食品中の病原大腸菌の統括的検査法の開発を行うことを本研究の目的としている。平成25年度は、日本での主要な6血清群の腸管出血性大腸菌の検査に必要なVT遺伝子およびO抗原遺伝子検出スクリーニング法を確立し、それら血清群の効率的分離法を検討した。
研究方法
平成25年度に、(1)大西は、近年にヒトから分離された腸管出血性大腸菌についてO血清群ごとに報告数、症状を解析した。また、必要に応じて血清群O165を含めることが効果的な検査になるものと思われ、これらを対象にした菌株および患者検体での検出法を検討した。(2)工藤は、腸管出血性大腸菌のVero toxin (VT)遺伝子(またはstx)検出スクリーニング法の効率化を行ない、通知された。また、日本での主要な血清群であるO157、O26、O111、O103、O145およびO121の6血清群を流通食品や原因食品調査の試験の対象に、O血清群特異的遺伝子の検出系の検討を行なった。さらに、多血清群に有用な選択分離培地を検討し、各種優れた検出法を組み合わせて統合した方法について、コラボレイティブ・スタディを一部実施した。(3)西川は、ヒト、家畜、食肉等から各種病原大腸菌の網羅的検出を試みた。
結果と考察
食品中の病原大腸菌(下痢原性大腸菌)の検査法を開発するために、(1)腸管出血性大腸菌の血清群解析および検査法への応用の検討として、昨年に構築した血清群O157、O26、O111、O103、O121、O145およびO165のO抗原遺伝子、志賀毒素遺伝子(stx)、接着因子Intiminをコードするeaeの計10種類の遺伝子を同時に検出するコンベンショナルなマルチプレックスPCR系の改良を行い、重症例検出における有用性を確認した。また、(2)病原大腸菌の統括的検査法の開発として、①食品培養液からのVT遺伝子検出によるスクリーニング法について、インターナル・コントロールを含む優れた遺伝子検出系を確立した。②食品での血清群O26、O103、O111、O121、O145およびO157特異的遺伝子の検出法の具体的条件を明らかにした。③複数種類の酵素基質培地にて特徴的発色性によって対象血清群を一括または鑑別した分離が可能であること、新規に開発されたO103、O121、O145に対する免疫磁気ビーズの優れた濃縮効果が明らかになった。④多機関によるコラボレイティブ・スタディを計画し一部を実施した。日本での腸管出血性大腸菌の主要な血清群を対象にした食品での検査法の開発につながる成果が得られた。さらに、(3)病原大腸菌の分布および病原性解析として、腸管病原性大腸菌の分子疫学指標はウシ由来株と患者由来株の関連を示し、ブタや健康者の分離株は下痢原性が低い可能性が示唆された。健康者では毒素原性大腸菌の保菌は見つからず、ブタや食鳥が高率に本菌を保菌する実態が明らかとなった。以上の研究成果を今後発展させて、腸管出血性大腸菌や毒素原性大腸菌など病原大腸菌の食品での検査法を開発し、食中毒の解明や汚染食品の調査等に貢献することが期待される。
結論
(1)腸管出血性大腸菌の主要な血清群の菌株および患者検体での優れた検出法を確立した。今後さらに病原性の高い血清群について検討する。(2)日本での腸管出血性大腸菌の主要な血清群を対象にした食品での検査法を、今後コラボレイティブ・スタディを実施して確立する。(3)腸管病原性大腸菌はウシ由来株と患者由来株に関連があるが、ブタや健康者の分離株は下痢原性が低い可能性が判明したまた、毒素原性大腸菌はブタや食鳥が高率に本菌を保菌されている実態が明らかとなった。さらに、今年度の成果を参照し、毒素原性大腸菌食中毒の発生に関連する食品の解明を進め、食品での検査法の開発を行う。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201327021Z