文献情報
文献番号
201327019A
報告書区分
総括
研究課題名
食品由来細菌の薬剤耐性サーベイランスの強化と国際対応に関する研究
課題番号
H24-食品-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 治雄(国立感染症研究所 )
研究分担者(所属機関)
- 黒田 誠(国立感染症研究所)
- 秋庭 正人((独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所)
- 五十君 静信(国立医薬品食品衛生研究所)
- 甲斐 明美(東京都健康安全研究センター)
- 倉園 貴至(埼玉県衛生研究所)
- 泉谷 秀昌(国立感染症研究所)
- 田口 真澄(大阪府立公衆衛生研究所)
- 田村 豊(酪農学園大学)
- 柴山 恵吾(国立感染症研究所)
- 富田治芳(群馬大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
家畜現場の耐性菌モニタリングJVARM (Japanese Veterinary Antimicrobial Resistance Monitoring System)と院内感染菌耐性モニタリングシステムJANIS(Japan Nosocomial Infections Surveillance)のデータの統合を目指す、わが国の耐性菌のサーベイランス体制の強化を行う。また、動物等で選択された耐性菌が実際の臨床の場に入り込んで、ヒトに健康危害を及ぼしているのかに関しての解析を行うため、動物や臨床で分離される耐性菌およびその耐性遺伝子のゲノムレベルでの比較解析を行い、その伝播ルートの解明を目指す。
研究方法
JVARMのデータをJANISデータフォーマットに準じたものに変換し、JANISシステム集集計プログラムを用いて、人由来株と家畜由来株のデータの比較が出来るようにする。次世代シークエンサーを用いて菌の染色体および耐性プラスミドの全ゲノム配列の解析を実施する。特に、増加傾向にある第三世代セファロスポリン耐性大腸菌を中心に解析を行う。現在公開されているプラスミド 2981配列の特徴(Incタイプ、薬剤耐性因子、Insertion sequence、Transposon等)を用いたPlasmidome ネットワーク解析と、プラスミド保有菌種の情報(菌種、分離年・国・地域・宿主、各種タイピング結果等)を網羅しデータ・ベース化を行う
結果と考察
1)9月2日~7日までコロンビアで開催された第5回AGISAR会議に出席した。ヒトへの抗菌薬のCIA(critically important agents)リストを作成した。WHOは2013-2017年に向けての耐性菌対策のaction planを作成し、2014年初めを目処にWHO Global AMR reportを出すことを計画している。2)JANISデータフォーマットに準じた新JVARMデータフォーマット(Ver1.0)を作成した。JVARMデータをJVARMフォーマットに変換するプログラムを作成し、まずダミーデータを用いてアンチバイオグラム作成を試行している。農水省からJVARMの実データ利用が許可された後、過去の全データをJVARMフォーマットに変換し、JANISと同じ形式の集計を行う事で、人と家畜との薬剤耐性菌分離状況が比較可能となる。3)腸内細菌科におけるESBL(CTX-M)およびカルバペネマーゼ(NDM-1, KPC)のプラスミドを介した伝達頻度をPlasmidome ネットワークとして図示化することに成功し、俯瞰的な解析法の基盤を作成した。このネットワーク・データベースを重厚なものとするため、プラスミド配列解析ソフト GPAT、そして得られたプラスミド配列の関係性を明確にするネットワーク解析ソフトiPAT を開発した。腸内細菌間のプラスミドの伝達はかなり頻繁で、且つ容易に組み換えを起こし遺伝学的に多様性が生じるので、 マスとして解析しないと、耐性遺伝子がどのように(動物由来細菌からヒト由来細菌への伝播)移動しているのかを解析するのは難しい。プラスミドの大規模なデーター・ベース化からの解析が重要である。4)食肉由来腸内細菌の中でのベーターラクタム剤への耐性:腸内細菌科耐性菌に関しては国内産食肉121検体(121/135:89.6%)、および輸入食肉115検体(115/150:76.7%)からペニシリン(アンピシリン)耐性菌を検出した。これらの耐性株のうち、ESBL生産菌の分離頻度は、国内産食肉:分離頻度25/135:18.5%、輸入食肉分離頻度11/150:7.3%であった。AmpC生産菌は国内産食肉:分離頻度14/135:10.4%、輸入食肉:分離頻度3/150:2%であった。
結論
JVARMのデータをJANISファーマットに変換するためのソフトの開発がほぼ完了しつつある。近い将来、WHO-AGISARが求めているintegrated surveillanceに到達できるであろう。耐性遺伝子が腸管内で、高頻度で移動している可能性があり、それらを明らかにするためのツールとして、プラスミド配列解析ソフト GPAT、そして得られたプラスミド配列の関係性を明確にするネットワーク解析ソフトiPAT を開発した。
公開日・更新日
公開日
2015-06-26
更新日
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