ニュートリゲノミクス解析に基づく機能性食用油の安全性に関する研究

文献情報

文献番号
201327015A
報告書区分
総括
研究課題名
ニュートリゲノミクス解析に基づく機能性食用油の安全性に関する研究
課題番号
H24-食品-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
内藤 由紀子(独立行政法人国立循環器病研究センター 病態ゲノム医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岩井 直温(独立行政法人国立循環器病研究センター 病態ゲノム医学部)
  • 大原 直樹(金城学院大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、特定保健用食品(トクホ)の植物油3品目の有効性、安全性について解析評価するものである。生活習慣病モデル動物およびその起源動物(正常動物)に各植物油を摂取させ、生活習慣病患者あるいは予備軍のヒトの食生活指導、健常者への予防指導のための情報を得ることを目的とした。本研究の2年目である今年度(平成25年度)は、トクホ植物油を摂取させた脳卒中易発症高血圧自然発症モデルラット(SHRSP)および正常血圧(WKY)ラットでのマイクロアレイ解析および肥満・糖尿病(ob/ob)マウスおよび由来系統のC57BL/6Jマウスへの投与・解析を行った。また、トクホ植物油の原料であるカノーラ油摂取によるステロイドホルモン代謝への影響について調べた。
研究方法
トクホの植物油であるHR、HCおよびKSを用いた。HRは中鎖脂肪酸強化、HCおよびKSは植物ステロール強化植物油である。これらを、AIN93G精製粉末飼料の脂肪源である大豆油(7w/w%含有)と置き換えた配合の飼料を調製した。AIN93G無脂肪精製粉末飼料に、含量7w/w%となるようHR、HCまたはKSを添加し、それぞれHR、HCまたはKS飼料とした。また対照(Cont)飼料としてAIN93G精製飼料を用いた。
雄性SHRSPおよびWKYラットを用い、収縮期血圧および体重をもとに各系統とも4群に分けた。それぞれCont群、HR群、HC群およびKS群とし、各飼料を4週間自由摂取させた動物の肝臓組織からRNAを抽出・精製し、群毎にプールして各群のサンプルとし、遺伝子発現を網羅的に調べ、パスウェイ解析を行った。
雄性ob/obマウスおよびC57BL/6Jマウスを用い、血糖値および体重をもとに各系統とも4群に分け、ラットと同様に各飼料を4週間自由摂取させた。摂取期間中は体重、摂餌量、血糖値を測定し、摂取最終週に尿検査および経口糖負荷試験を行った。摂取期間終了後は、剖検、血液検査および血液生化学検査を行った。また、肝臓からRNAを抽出・精製してマイクロアレイ解析により遺伝子発現を調べ、この結果をもとにパスウェイ解析を行った。
ステロイドホルモン代謝に及ぼす影響を調べる実験では、SHRSPに、トクホ植物油の原料油として用いられているカノーラ油およびダイズ油を8週間摂取させ、精巣中ステロイドホルモンの代謝に関わる遺伝子(StAR、CYP11AおよびSYP17)およびタンパク発現(CYP11A)を調べた。
結果と考察
SHRSPおよびWKYラットにトクホの植物油3種(HR、HCおよびKS)を7 w/w%含有する飼料を4週間摂取させ、肝組織のマイクロアレイ解析をもとにパスウェイ解析を行ったところ、脂肪酸代謝、ステロイドホルモン代謝、細胞周期・分化、アポトーシス等に関連する経路に変化が認められたが、全体的に遺伝子発現の増減変化は小さく、顕著な有害作用は無かったとした前年度の結果に影響を及ぼすものではないと考えられた。
肥満・糖尿病モデルであるob/obマウスおよび正常C57BL/6Jマウスに、上記トクホ植物油含有無脂肪精製粉末飼料を4週間自由摂取させた。体重および摂餌量に群間差は認められなかった。また両系統において、顕著な有害作用は認められなかった。ob/obマウスにおける経口糖負荷試験では、対照群と比較して、HR、HCおよびKS群の血糖値の低下が促進された。また同マウスでは、HR摂取により内臓脂肪が減少することが明らかとなった。C57BL/6Jマウスでは、HRおよびKS摂取による糖負荷後の血糖上昇抑制作用が認められた。ob/obマウスの肝臓のマイクロアレイ解析では、HRおよびHC群で共通して遺伝子発現が上昇および低下したパスウェイはそれぞれ3経路、HCおよびKS群で共通して発現上昇したパスウェイは4経路であった。また、HRおよびHCはカノーラ油を原料としている植物油であるが、これらの群に共通して発現低下がみられた遺伝子は、CYP1a2、Bdkrb2であり、脂肪酸ω酸化の抑制およびブラジキニン受容体刺激を介したNOS発現の抑制の可能性が示された。
SHRSPの精巣では、カノーラ油摂取群のStAR、CYP11AおよびCYP17遺伝子の発現が、ダイズ油摂取群と比較して有意に抑制されていた。CYP11Aは、そのタンパク質発現も抑制されることを確認した。
結論
SHRSPおよびWKYラットの両系統において、4週間トクホ植物油(HR、HCおよびKS)を摂取させた場合、顕著な有害作用が認められないことが明らかとなった。また、ob/obマウスおよび正常マウスにおいても、顕著な有害作用は認められなかった。その他、両系統のマウスでの血糖値低下作用や、ob/obマウスでのHR摂取による内臓脂肪減少作用が認められた。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201327015Z