輸入食品のすり替え防止ステルスコードの開発

文献情報

文献番号
201327014A
報告書区分
総括
研究課題名
輸入食品のすり替え防止ステルスコードの開発
課題番号
H24-食品-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
河野 俊夫(高知大学 教育研究部自然科学系農学部門)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昨今、食品の流通管理において、産地不明な海外産の冷凍食品を国産の取引価格の高いブランドにパッケージ偽装する事件が起こり、国民の食の安全に対する不安を煽っている。 
工業製品であればICタグによって違法な製品を排除・摘発することができるが、食品の場合は、「梱包容器に」ICタグなどの識別ラベルを貼り付けることは可能であっても、食品自体に貼り付けることは不可能である。それゆえ、梱包内容物である食品をすり替えさえすれば、違法なものを、正規品やブランド食品として容易に流通させることが可能である。
したがって、食品の安全管理は、基本的に「食品自体へのラベル貼り付け」でなければ難しい。
 そこで、冷凍ものの多い輸入食品の、内容物すり替えを防止することを目的として、食品自体に直接貼り付け可能な食用暗号コード(食用ステルスコードと呼ぶ)について研究を行った。2013年度は、ESCのプリント法と、その存在域と非存在域の識別方法について検討した。
 食用ステルスコードは、非破壊検出による検査時間の短縮化と全数検査、検査費用の大幅コストダウンが期待でき、DNA鑑定の前段階としてのスクリーニングなどに利用することで、検査対象の拡大と検査スピードおよびその精度を上げるためのハイテクラベルによる「直接識別管理法」である。我が国に輸入される食品の安全を水際で「全数スクリーニング」するための技術として、将来活用できるものと考える。
研究方法
水分の多い冷凍肉の赤身部については、1)表面塗布法、2)保護シート法、3)マイクロインジェクション法、4)カモフラージュ法、水分の少ない脂肪部についてはマイクロインジェクション法を、ESC候補物質のプリント方法として採用し測定を行った。
冷凍食肉(冷凍牛肉、冷凍豚肉、冷凍鶏肉)に付着(もしくは埋込み)したESCの存在領域(プリント部)および非存在域をラインスキャン(直線走査)し、近赤外域での二次微分値の変化から、プリント部と非存在域とを判別する閾値候補を試算した。
結果と考察
ラインスキャンの結果より、赤身部についてはマイクロインジェクション法と、色素混合利用によるカモフラージュ法が有用であることが明らかとなった。また、ESC候補物質によっては冷凍食肉表面の解氷によって、反射スペクトルが著しく低下するものもあり、ESC候補物質のプリントは脂肪部に行う方が効果的と考えられた。
 ESC候補素材の食品添加物の中では、L-酒石酸水素カリウムと、L-アスコルビン酸が光反射率も高く二次微分値の特性が維持されやすい傾向があることが分かった。特にL-酒石酸水素カリウムは溶解度が低く、冷凍食肉の冷凍温度管理が変動し、表面状態が変わる場合にも、安定した検出力があるものと推察された。
 また、試算した、プリント部と非存在域とを判別する閾値候補の数値上も、L-酒石酸水素カリウムとL-アスコルビン酸は、他のESC候補物質よりも数値が高い傾向が見られ、プリント部と非存在域との境界を識別し易いことが明らかとなった。
結論
ESC候補物質のプリント法として有望な方法はマイクロインジェクション法である。また、ESCを埋め込む部位は、水分の影響を受けにくい脂肪部分が望ましい。冷凍食肉の赤身部分にプリントする場合は、赤身部分との色調を調整する食用色素を混合利用する方法を採れば、識別に大きな影響を及ぼすことなくESC領域を特定できる。現在までに利用したESC候補物質のなかでは、L-酒石酸水素カリウムおよびL-アスコルビン酸が識別に適した物質である。L-アスコルビン酸は、一般にはビタミンCとして知られる物質であり、ESC候補物質として冷凍食肉にプリントしたとしても、国民の理解を得られやすい点で有用である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201327014Z