生体試料バンクを有効活用した食品および母乳の継続的モニタリング

文献情報

文献番号
201327013A
報告書区分
総括
研究課題名
生体試料バンクを有効活用した食品および母乳の継続的モニタリング
課題番号
H24-食品-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小泉 昭夫(京都大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 原田 浩二(京都大学 大学院医学研究科)
  • 原口 浩一(第一薬科大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東日本大震災では、津波により多くの沿岸部にある化学物質貯蔵庫や取扱施設が破壊され、放射能のみならず化学物質による汚染も引き起こし、多くの国民が重大な懸念を抱いている。また、我が国の食料自給率は低く食料を海外に依存している。特に震災以降東北における食糧生産は大きな減産を余儀なくされ、海外依存はさらに高まった。食の安全を確保するために、国外で不正に使用されていることが多い古典的なPOPsとともに新たなPOPsについて食事を用いモニタリングを行う必要性は、さらに増加した。また特殊な事例として乳児には、母乳を通じた間接的な曝露評価を行うことも必要になる。
我々の研究目的は、京都大学生体試料バンクを有効活用し、東日本大震災以降の食の化学物質汚染への国民の不安に対して科学的に妥当な情報を提供するとともに、引き続き継続モニタリングを行い、食の安全と安心の基盤を強化することである。
研究方法
1.東日本大震災以降の化学物質による食品汚染を評価するための系統的サンプルの採取: 東日本大震災被災地のうち福島県で、前年度に続き陰膳方式により1日食の採取を行った。また、母乳についても並行して採取した。昨年度の宮城県仙台市の対照として、京都府、岐阜県の授乳婦から母乳試料を収集した。京都府において血清、全血試料を収集した。また試料バンクの試料を他機関の研究者へ提供した。
2.食事・母乳の残留性有機汚染物質のモニタリング: 平成24年度までに試料バンクに採取済みの食事・母乳・血液で測定を行った。日中韓の陰膳食事試料について、殺菌剤、難燃剤由来を含むフェノール性ハロゲン化合物を分析し、一日摂取量を評価し、その摂取による体内蓄積量について母乳試料で評価した。食品容器、フッ素加工器具などに残留する有機フッ素化学物質ペルフルオロアルキルカルボン酸類について2000年前後の食事中、血清中測定を関西・東北地域の試料を用いて行った。また動物実験により摂取から体内分布の動態モデル化を行った。震災後の宮城県の母乳試料中の残留性有機汚染物質を分析した。
3.新たなPOPsの汚染源の調査: 昨年調査された食品容器、生活用品などに用いられる残留性有機フッ素化合物について、関西地方大都市における水系への汚染負荷を調査し、排出量とその影響を推定した。
結果と考察
1.東北大震災の被災地である福島県で、夏期、冬期において、それぞれ96名、105名分の食事試料を収集した。京都府、岐阜県の25名の授乳婦から母乳試料を収集した。京都府の地域市民を対象としたフォーラムを開催し、研究への協力、意義の理解の機会とし、血清、全血試料各130検体を収集した。試料バンクの尿試料を他機関の研究者に提供し、ネオニコチノイド系農薬の経年的曝露評価を実施している。
2.抗菌剤として用いられているトリクロサンの1990年および2009年の一日摂取量は、韓国で増加傾向を示したが、中国および日本の食事では3μg/day前後と推定され、両年代で大きな変動は見られなかった。他のフェノール性臭素化合物の母乳中濃度については、tetrabromobisphenol Aが食事、母乳ともに中国で高く、2,4,6-tribromophenolは韓国で高かった。水酸化PBDEのうち6-OH-BDE47が日本の食事で検出されたが、母乳中には検出されなかった。ペルフルオロアルキルカルボン酸類の関西における食品経由の総摂取量は79 ng/day、東北における総摂取量は45 ng/dayであった。その摂取量は最大値でも耐容一日摂取量より低い値であった(TDIの0.1%)。構築された体内動態モデルより血清中濃度は、C8においては3割から9割が食事由来であると推定された。宮城県授乳婦の母乳試料100検体を分析した結果、2012年時点で、過去の水準とほぼ同程度であった。現時点で曝露の増加は認められなかった。
3.淀川水系の河川水45地点を採取、分析して、下水処理場を通じた排出という観点から解析を行った。その結果、桂川、宇治川、木津川全体でPFCAsの排出量は237 g/dayとなった。排出量に対する因子分析の結果、2つの排出源が存在し、その1つは食料品製造業との関連が示唆され今後食品の汚染については評価が必要と考えられた。
結論
継続的なモニタリングと試料の収集ができた。

公開日・更新日

公開日
2015-05-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-05-12
更新日
-

収支報告書

文献番号
201327013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,970,000円
(2)補助金確定額
8,970,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,342,098円
人件費・謝金 5,356,350円
旅費 40,000円
その他 161,553円
間接経費 2,070,000円
合計 8,970,001円

備考

備考
預金利息による。

公開日・更新日

公開日
2015-05-12
更新日
-