知的障害を持つ人達の健康障害の実態と対策に関する研究

文献情報

文献番号
199800289A
報告書区分
総括
研究課題名
知的障害を持つ人達の健康障害の実態と対策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
有馬 正高(社団法人日本知的障害福祉連盟)
研究分担者(所属機関)
  • 原仁(国立特殊教育総合研究所)
  • 馬場輝実子(国立療養所長崎病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)知的障害を持つ人達に多い死亡や疾病の内容と頻度を子供から初老期にいたる各年齢段階ごとに明らかにする。2)急性死亡や肥満等の生活環境病の多発する環境条件を明らかにする。3)家庭、地域、学校、施設等において適切な医療保健を確保するに必要な重点項目を整理し、その指針を作成する。
研究方法
1)知的障害養護学校小、中、高等校30校、九州6県の知的障害者入所、通所、通勤寮等294施設および児童施設55施設へのアンケート調査、国立精神病院10施設にある動く重症児病棟入所児者についてのアンケート調査、知的障害児者の診療を専門とする医療機関の診療録およびその関係する施設への訪問による資料の収集を行った。2)突然死等の急性死の頻度と背景因子については、1)の調査で得られた資料のなかから突然死と見られる例を抽出し、それぞれの例の背景因子の解析を目的とする二次調査を実施した。九州以外の全国の知的障害更生、授産92施設における急性死亡例について、上記と同じ様式により再調査を実施した。3)地域生活支援センター等職員、訪問看護事業従事者、専門病院の外来看護婦等に面談、医療支援のニーズ、通院の手段、家族の要望等についての聞き取り調査を実施した。また、養護学校養護教員等との面接による健康管理の実態の聞き取り調査を行った。4)高度肥満の背景因子の解明と対策指針のために、知的障害者居住施設または在宅の作業所在籍者等の肥満の自然歴、生活環境、合併する慢性疾患、治療効果の解析を実施した。
結果と考察
1)健康障害の内容は多様であった。肥満は学齢期から増加し、卒業後作業所に通ううちに高度になる例が多かった。居住施設の肥満は施設間の差が大きかった。死亡率は同年齢の一般人口の3倍~10倍程度であり、重症心身障害との中間であった。死因は小学生から高校生は急性疾患による死亡と事故死が多く、青年期から壮年期になると、急性心不全、突然死などの急性死とガンの比率が高かった。2)急性死もしくは突然死は20―50歳の男性に高率であった。リスク因子は、てんかん、心筋炎、脳幹・自律神経異常、高度肥満、薬剤等が候補にあげられたが、さらに検討中である。通勤寮等の居住者には突然死は見られていないが、少数例であり、さらに検討の余地がある。3)学童および在宅重症心身障害児者は家族と主治医等による医療的連絡がかなり緊密であった。就労した成人も健康管理は一般に提供されたが、障害の重い地域生活者と更生施設居住者の医療には不安が大であった。母親への依存が突出していたが、地域生活の場合は支援者の活動が重要であった。4)高度肥満の多くは適当な食事と運動により改善可能であった。生活環境による肥満が重要であり、若い時からの対応が重要であろう。
結論
知的障害は若年の死亡率が一般よりも高率で、特に学齢期の事故、青壮年期の急性死亡が死因として重視されることが、確認できた。成人期の非就労者に多く見られる高度肥満の対策は、中~高校生の頃の対策と家庭および社会生活の指針を作成する必要がある。

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