文献情報
文献番号
201327007A
報告書区分
総括
研究課題名
食中毒調査の精度向上のための手法等に関する調査研究
課題番号
H23-食品-一般-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
- 春日 文子(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
- 小沢 邦寿(群馬県衛生研究所)
- 野田 衛(国立医薬品食品衛生研究所)
- 徳田 浩一(東北大学病院感染管理室)
- 杉下 由行(東京都健康安全研究センター)
- 窪田 邦宏(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
- 八幡 裕一郎(国立感染症研究所 感染症疫学センター )
- 脇田 隆字(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
- 岡部 信彦(川崎市健康安全研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
広域食中毒に関連する様々なエビデンスの収集ならびに方法論の整理・開発を行い、これらのエビデンスと方法論のそれぞれの研究を有機的に連携させることで、広域食中毒調査の精度向上のためのガイドラインを策定した。本研究は最終的に自治体、国における食品安全課題の優先順位付け、広域食中毒事例の探知から対策のためのエビデンスづくりの方法論開発を目的とした。
研究方法
1.食品媒介感染経路の占める比率と原因食品の推定
2.国内食品媒介感染症被害実態の推定
3.広域散発食中毒事例の効率的な調査方法の開発・実施
2.国内食品媒介感染症被害実態の推定
3.広域散発食中毒事例の効率的な調査方法の開発・実施
結果と考察
8自治体における腸管出血生大腸菌O157感染症の散発事例における人口寄与危険率、川崎市における腸管出血生大腸菌O157感染症の散発事例における人口寄与危険率を算出した。肉の生食が腸管出血生大腸菌感染症の感染リスクを周知することの必要性、自治体における散発例の症例対照研究は長期的対策に有用であることが示唆された。
宮城県において食中毒として報告されない散発発症患者を含めたCampylobacter、Salmonella、Vibrio parahaemolyticusによる胃腸炎疾患の患者数を推定。年間を通した予防策及び継続的な検出状況の注視の必要性が示唆された。
ノロウイルス(NoV)及びサポウイルス(SaV)の塩基配列データを収集、系統樹を作成し、CaliciWeb及びNESFDに掲載。GⅡ/4 2012変異株が2012/13シーズンのNoV食中毒事件に寄与していると推定された。
NoV及びSaVの国内流行株データを基にマスメディアと共にNoV予防衛生の啓発活動を実施した。マスメディアによる注意喚起の有効性が示唆された。A型肝炎(HAV)、E型肝炎(HEV)患者数データを収集。HAVⅢAの低下傾向、HEVの明らかな上昇傾向が見られた。あわせて韓国・台湾・タイ・ベトナムとのNoVデータ共有、韓国・台湾とのHAV、HEVデータ共有を進行させた。
高齢者施設で発生した集団食中毒事例について疫学的研究を実施した。症状としては嘔吐、病因物質としてはNoVが多かったことから、吐物処理時の感染拡大防止策の徹底、NoV感染症を考慮した対応の必要性が示唆された。
川崎市をモデルとした腸管病原性大腸菌EPECのスクリーニングを実施、全国的な潜在保菌者を推測し、EPECの病原性について検討した。EPECの細胞付着性と病原性には相関性があることが示唆された。
食鶏由来大腸菌の薬剤耐性遺伝子を検索、地域における検出状況を確認。食鶏由来大腸菌は血清型に地域共通性があり、その大部分が多剤耐性菌であること、ESBL産生菌は農場によって分離率に差があることが示唆された。牛肝臓から分離される食中毒原因菌及び肝臓内部に置ける分布状況の調査。カンピロバクター菌の汚染は感染牛の肝臓ほぼ全体に及んでいること、喫食時の加熱調理には十分な注意が必要であることが示唆された。
上記の通り収集したエビデンスに加え、行政関係者や専門家へのインタビュー、国内外の資料文献、各種食中毒対応マニュアル、関連法規についての情報を収集し、広域食中毒疫学調査ガイドラインを策定した。本ガイドラインの策定により、複数の自治体にまたがり広域散発的に発生する食中毒事例への対応に関する一定の方向性が示された。本ガイドラインは今後活用が期待され、自治体における広域散発例の共通理解が進むものと考えられた。更に、本ガイドラインは適宜の改訂が必要であると考えられた。
宮城県において食中毒として報告されない散発発症患者を含めたCampylobacter、Salmonella、Vibrio parahaemolyticusによる胃腸炎疾患の患者数を推定。年間を通した予防策及び継続的な検出状況の注視の必要性が示唆された。
ノロウイルス(NoV)及びサポウイルス(SaV)の塩基配列データを収集、系統樹を作成し、CaliciWeb及びNESFDに掲載。GⅡ/4 2012変異株が2012/13シーズンのNoV食中毒事件に寄与していると推定された。
NoV及びSaVの国内流行株データを基にマスメディアと共にNoV予防衛生の啓発活動を実施した。マスメディアによる注意喚起の有効性が示唆された。A型肝炎(HAV)、E型肝炎(HEV)患者数データを収集。HAVⅢAの低下傾向、HEVの明らかな上昇傾向が見られた。あわせて韓国・台湾・タイ・ベトナムとのNoVデータ共有、韓国・台湾とのHAV、HEVデータ共有を進行させた。
高齢者施設で発生した集団食中毒事例について疫学的研究を実施した。症状としては嘔吐、病因物質としてはNoVが多かったことから、吐物処理時の感染拡大防止策の徹底、NoV感染症を考慮した対応の必要性が示唆された。
川崎市をモデルとした腸管病原性大腸菌EPECのスクリーニングを実施、全国的な潜在保菌者を推測し、EPECの病原性について検討した。EPECの細胞付着性と病原性には相関性があることが示唆された。
食鶏由来大腸菌の薬剤耐性遺伝子を検索、地域における検出状況を確認。食鶏由来大腸菌は血清型に地域共通性があり、その大部分が多剤耐性菌であること、ESBL産生菌は農場によって分離率に差があることが示唆された。牛肝臓から分離される食中毒原因菌及び肝臓内部に置ける分布状況の調査。カンピロバクター菌の汚染は感染牛の肝臓ほぼ全体に及んでいること、喫食時の加熱調理には十分な注意が必要であることが示唆された。
上記の通り収集したエビデンスに加え、行政関係者や専門家へのインタビュー、国内外の資料文献、各種食中毒対応マニュアル、関連法規についての情報を収集し、広域食中毒疫学調査ガイドラインを策定した。本ガイドラインの策定により、複数の自治体にまたがり広域散発的に発生する食中毒事例への対応に関する一定の方向性が示された。本ガイドラインは今後活用が期待され、自治体における広域散発例の共通理解が進むものと考えられた。更に、本ガイドラインは適宜の改訂が必要であると考えられた。
結論
食中毒に関する様々なエビデンスの構築および収集を行い、それらを基に広域食中毒疫学調査ガイドラインを策定した。本ガイドラインを活用するとともに、さらに事例対応に有用なものとするため、継続的な疫学情報の収集及び実際の事例対応の検討に基づいたガイドラインの改訂が必要である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-26
更新日
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