文献情報
文献番号
201327004A
報告書区分
総括
研究課題名
既存添加物の品質評価と規格試験法の開発に関する研究
課題番号
H23-食品-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
穐山 浩(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
- 天倉 吉章(松山大学 薬学部)
- 水上 元(名古屋市立大学大学院 薬学研究科)
- 受田 浩之(高知大学 教育研究部 総合科学系生命環境医学部門)
- 松井 利郎(九州大学大学院農学研究院)
- 石川 洋哉(福岡女子大学 国際文理学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
13,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
既存添加物365品目のうち、約140品目の成分規格が未設定である。国の成分規格が設定されていない既存添加物約140品目について、今後の成分規格作成の技術的実現性を調査研究する。また、今後規格設定する価値があり、技術的に可能と考えられる品目については、含有成分の解析と基原(製造原料)確認及び成分規格試験法の検討を進める。含有成分の分離分析ができない酸化防止剤製品の品目を対象にして、抗酸化活性測定法を用いた酸化防止剤の規格試験法を確立する。
研究方法
既存添加物の成分規格の設定に関する調査研究を行った。既存添加物の含有成分解析に関する研究では、含有成分の解析、品質評価に有効な指標成分の検討を行った。既存添加物の成分規格試験法の検討では、定量用標準品として使用するカンゾウ抽出物中の甘味成分であるglycyrrhizic acid市販試薬の純度測定を行った。天然酸化防止剤の抗酸化活性規格試験法開発に関する研究では、DPPH法の室間再現性の妥当性評価を行った。酸化防止剤の相加・相殺現象および複数の抗酸化活性測定法による反応性の違いを検討し、抗酸化活性メカニズムの解析を行った。
結果と考察
既存添加物の成分規格作成の技術的実現性に関する調査では、第10版公定書の作成に備え検証規格の作成を実施した。ゲンチアナ抽出物の品質規格作成のための化学的検討として、新たに7種の既知化合物とともに1種の新規化合物の構造を明らかにした。また有効成分として知られているamarogentinはHPLC分析においてマイナー成分として検出されるのみであった。抗酸化活性が認められた3種の抗酸化活性画分につき、活性に重なるピークとカンゾウからの単離標品との詳細な比較検討を行い、それぞれlicochalcone B、licochalcone D、hispaglabridin Aであることを明らかにした。カンゾウ抽出物中の甘味成分であるglycyrrhizic acidについて、市販標準品の純度をqNMR法によって評価するとともに、カンゾウ抽出物中の含量測定を試みた。DPPH法の改良プロトコルを用いた複数機関による評価研究では、同一試験機関内での再現性が極めて高いことが判明した。チオール化合物との併用時にカテコール・ピロガロール構造を有する抗酸化物が大きな相乗効果を発現することが明らかになった。DPPH法でアセトニトリル系の活性測定を試み、カテコール化合物の活性値の低下が著しいことが判明し、水/エタノール系でのカテコール構造の再生がDPPH法での活性値の増加の直接的原因であることが示唆された。またDPPH法とWST-1法の活性値を比較検証し、両者の活性値に高い相関は得られなかったが活性傾向は類似していることが判明した。キサンチンオキシダーゼの阻害効果がWST-1法の活性値に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
結論
第9版食品添加物公定書に未収載の既存添加物の中から、第10版公定書の作成に備え検証規格の作成を実施した。ゲンチアナ抽出物の品質規格作成のための化学的検討として、新たに7種の既知化合物とともに1種の新規化合物を単離し、その構造を明らかにした。また既報で有効成分として知られているamarogentinはHPLC分析においてマイナー成分として検出されるのみであった。抗酸化活性が認められた3種の抗酸化活性画分につき、UPLC/TOF-MSを用いて、活性に重なるピークとカンゾウからの単離標品との詳細な比較検討を行い、それぞれlicochalcone B、licochalcone D、hispaglabridin Aであることを明らかにした。Glycyrrhizic acidの12位の水素由来のシグナルを用いて市販のglycyrrhizic acid試薬の純度を評価できた。同じプロトンシグナルを用いて、カンゾウ抽出物製品中のglycyrrhizic acid含量を直接定量することを試みたが、夾雑物に由来するシグナルやベースラインのゆがみによって正確な定量は困難であることがわかった。qHNMR法によって純度評価を行ったglycyrrhizic acid標準品を用いるHPLC法による定量が望ましいものと思われる。DPPH法は既存添加物に分類される酸化防止剤の力価評価の標準法として適用可能であると判断した。DPPH法とWST-1法の活性相関を検討した結果、両者の相関は高くないものの類似した活性傾向を示すことが明らかになった。
公開日・更新日
公開日
2015-06-26
更新日
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