文献情報
文献番号
201327003A
報告書区分
総括
研究課題名
食品を介する伝達性海綿状脳症のリスクと対策等に関する研究
課題番号
H23-食品-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
堀内 基広 (北海道大学 大学院獣医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 新 竜一郎(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 北本 哲之(東北大学 大学院医学系研究科)
- 坂口 末廣(徳島大学 疾患酵素学研究センター)
- 柴田 宏昭(独立行政法人医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター)
- 堂浦 克美(東北大学 大学院医学系研究科)
- 飛梅 実(国立感染症研究所)
- 萩原 健一(国立感染症研究所)
- 福田 茂夫(北海道総合研究機構 畜産試験場)
- 室井 喜景(帯広畜産大学 畜産学部)
- 村山 裕一(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所)
- 横山 隆(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
42,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
大きな社会問題となった定型BSE(C-BSE)は、飼料規制などの管理措置により発生は減少している。しかし、非定型BSE、非定型スクレイピー、鹿の慢性消耗病(CWD)など、性質が良くわかっていない伝達性海綿状脳症(プリオン病)が存在する。本研究は、1)動物プリオン病の性状解析によりヒトおよび動物への感染リスクの解明、2)プリオン病の感染・伝播・発病機構の解明、および、3)我が国に存在しない伝達性海綿状脳症への対策、に資する知見を得ることを目的とする。
研究方法
1)非定型BSEの病態および動物プリオン病のヒトへの感染リスクの解明:非定型および定型BSE感染牛およびカニクイザルの運動機能、学習記憶能、および感染病態を解析する。
2)BSEの起源の推定:異常型プリオンタンパク質を増幅可能なPMCAおよびQUIC法を応用して、試験管内でBSE様プリオンの産生について解析する。
3)プリオンの伝播・増殖機構および発病機構の解明:初代神経培養細胞系と感染動物を用いて、プリオンの伝播・増速機構と、神経変性機構を解析する。
4)我が国に存在しない動物プリオン病の対策整備:CWDのサーベイランスを実施するとともに、非定型スクレイピーの診断法を整える。
2)BSEの起源の推定:異常型プリオンタンパク質を増幅可能なPMCAおよびQUIC法を応用して、試験管内でBSE様プリオンの産生について解析する。
3)プリオンの伝播・増殖機構および発病機構の解明:初代神経培養細胞系と感染動物を用いて、プリオンの伝播・増速機構と、神経変性機構を解析する。
4)我が国に存在しない動物プリオン病の対策整備:CWDのサーベイランスを実施するとともに、非定型スクレイピーの診断法を整える。
結果と考察
1)非定型BSE (L-BSE) の病態および動物プリオン病のヒトへの感染リスクの解明
・L-BSE接種牛の歩様をモーションキャプチャーにより解析した。殿部後端と後肢球節間の距離の測定により、未発症牛と発症牛を区別できた。
・行動量の解析では、L-BSE感染牛の休息スコアは、発症前と比較して、発症後に明らかに減少した。
・L-BSE発症牛の臨床症状を詳細に動画に記録した。
・L-BSE牛脳乳剤を経口投与して接種後2年5月を経過したが、発症は認められていない。
・霊長類の感染モデル系を確立するために、カニクイザルを用いてL-BSEの連続継代 (脳内接種、2継代目) を実施した。高次脳機能解析、MRI画像解析の結果から、L-BSEとC-BSE感染サルは、異なる病態モデル系となることが明らかとなった。
2)BSEの起源の推定
・L-BSEがC-BSEの起源となる可能性を調べるために、L-BSE感染牛の脳乳剤を100℃あるいは112℃で加熱、150℃で油揚げ処理した。その後、C-BSEを増幅するPMCA法を実施したが、PrPScは増幅されなかった。
・Real-time QUIC (RT-QUIC)法を用いて、組換えマウスPrP (rMoPrP) とハムスターPrP (rHaPrP) を基質とすることで、L-BSEとC-BSEの識別が可能となった。この方法は、潜在的なL-BSEの存在の調査、L-BSEからC-BSE様の病原体が産生されるかを調べるための強力なツールとなる。
3)プリオンの伝播・増殖機構および発病機構の解明
・大脳皮質由来初代培養神経細胞は、多くのプリオン株が増殖可能であり、長期間 (プリオン接種後39~46日) 維持可能であった。プリオンの増殖に伴い細胞活性が低下することから、神経変性機構の解析の新たなツールとなる。
・PrPSc分子の輸送と分解に関与する新規分子としてSortilinを発見した。
・Glycoside-9のPrPSc産生阻害効果の解析を進めたところ、phosphodiesterase 4 D interacting proteinが、PrPScの産生に関与することを発見した。
4)我が国に存在しない動物プリオン病の対策整備
・CWDモニタリングを継続した。北海道のエゾシカ用簡易と殺場で処理された32頭を調べたが、全て陰性であった。
・コロラド州立大学を訪問し、米国におけるCWDの発生状況と検査体制に関する情報を収集した。
・L-BSE接種牛の歩様をモーションキャプチャーにより解析した。殿部後端と後肢球節間の距離の測定により、未発症牛と発症牛を区別できた。
・行動量の解析では、L-BSE感染牛の休息スコアは、発症前と比較して、発症後に明らかに減少した。
・L-BSE発症牛の臨床症状を詳細に動画に記録した。
・L-BSE牛脳乳剤を経口投与して接種後2年5月を経過したが、発症は認められていない。
・霊長類の感染モデル系を確立するために、カニクイザルを用いてL-BSEの連続継代 (脳内接種、2継代目) を実施した。高次脳機能解析、MRI画像解析の結果から、L-BSEとC-BSE感染サルは、異なる病態モデル系となることが明らかとなった。
2)BSEの起源の推定
・L-BSEがC-BSEの起源となる可能性を調べるために、L-BSE感染牛の脳乳剤を100℃あるいは112℃で加熱、150℃で油揚げ処理した。その後、C-BSEを増幅するPMCA法を実施したが、PrPScは増幅されなかった。
・Real-time QUIC (RT-QUIC)法を用いて、組換えマウスPrP (rMoPrP) とハムスターPrP (rHaPrP) を基質とすることで、L-BSEとC-BSEの識別が可能となった。この方法は、潜在的なL-BSEの存在の調査、L-BSEからC-BSE様の病原体が産生されるかを調べるための強力なツールとなる。
3)プリオンの伝播・増殖機構および発病機構の解明
・大脳皮質由来初代培養神経細胞は、多くのプリオン株が増殖可能であり、長期間 (プリオン接種後39~46日) 維持可能であった。プリオンの増殖に伴い細胞活性が低下することから、神経変性機構の解析の新たなツールとなる。
・PrPSc分子の輸送と分解に関与する新規分子としてSortilinを発見した。
・Glycoside-9のPrPSc産生阻害効果の解析を進めたところ、phosphodiesterase 4 D interacting proteinが、PrPScの産生に関与することを発見した。
4)我が国に存在しない動物プリオン病の対策整備
・CWDモニタリングを継続した。北海道のエゾシカ用簡易と殺場で処理された32頭を調べたが、全て陰性であった。
・コロラド州立大学を訪問し、米国におけるCWDの発生状況と検査体制に関する情報を収集した。
結論
・客観的な行動解析により、L-BSE感染牛の臨床症状を把握できることが示唆された。
・L-BSEは容易にカニクイザルには経口感染しないと考えられるが、継続して経過観察が必要である。
・C-BSEとL-BSEを高感度に検出し、かつ精度良く鑑別可能なRT-QUIC法を確立した。
・L-BSEプリオンがC-BSEの起源となる可能性に関して、これまで、このことを示す実験結果は得られていない。
・大脳皮質由来初代培養神経細胞がプリオン感染のex vivo解析系として有用であることを示した。
・PrPC及びPrPScともにSortilinと結合し分解される可能性を示した。
・PrPSc増殖の制御に働く因子群として、phosphodiesterase 4 D interacting proteinを同定した。
・我が国に生息するシカでCWD陽性個体は発見されなかった。
・L-BSEは容易にカニクイザルには経口感染しないと考えられるが、継続して経過観察が必要である。
・C-BSEとL-BSEを高感度に検出し、かつ精度良く鑑別可能なRT-QUIC法を確立した。
・L-BSEプリオンがC-BSEの起源となる可能性に関して、これまで、このことを示す実験結果は得られていない。
・大脳皮質由来初代培養神経細胞がプリオン感染のex vivo解析系として有用であることを示した。
・PrPC及びPrPScともにSortilinと結合し分解される可能性を示した。
・PrPSc増殖の制御に働く因子群として、phosphodiesterase 4 D interacting proteinを同定した。
・我が国に生息するシカでCWD陽性個体は発見されなかった。
公開日・更新日
公開日
2015-05-22
更新日
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