検査機関の信頼性確保に関する研究

文献情報

文献番号
201327001A
報告書区分
総括
研究課題名
検査機関の信頼性確保に関する研究
課題番号
H23-食品-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小島 幸一 (一般財団法人食品薬品安全センター 秦野研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 尾花裕孝(大阪府立公衆衛生研究所)
  • 斉藤貢一(星薬科大学)
  • 村山三徳((社)日本食品衛生協会衛生研究所)
  • 鎗田孝((独)産業技術総合研究所)
  • 渡辺卓穂(一般財団法人食品薬品安全センター 秦野研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
26,830,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品の安全性確保のための精度管理体制の整備や適正な精度管理用調査試料の開発とこれに付随した精度管理調査を実施し、食品衛生検査機関における検査成績の信頼性の確保に貢献することを目的とした。
研究方法
食品に対する放射線照射検知の精度管理体制の構築では、開発した2-アルキルシクロブタノン分析法で実際に照射した加工食品について外部精度管理試験を実施すると共に長期安定性を確認した。マイコトキシン検査では、市販のビールを対象とし、スクリーニング法としてのマイコトキシン(デオキシニバレノール)に対するELISA法の確立を目指し、測定精度等の確認を行った。マトリックスの影響評価では、マトリックス効果の補正方法を検討した。高信頼性分析に関しては、同位体希釈質量分析法によって、調査試料に添加した残留農薬を分析した。精度管理用の適正試料の作製において、理化学では食品添加物検査として、魚肉製品及び果実ペースト、残留農薬検査として、玄米及び野菜ペーストを機材とした試料作製の検討、微生物では一般細菌数検査に使用した寒天状基材中の生菌数に対するストマッカーの影響について検討した。アレルギー検査では、そばを対象とした調査試料の作製を、組換えDNA食品では遺伝子組換え米およびパパイヤ遺伝子についてランモードの違うリアルタイムPCRで測定し、精度管理調査の結果を比較した。
結果と考察
放射線照射食品の検知の精度管理体制の構築では、加工食品の原材料照射の検知において、2-アルキルシクロブタノン類を検知指標として外部精度管理を行った結果、おおむね良好であった。また、照射履歴の判定に関しては、すべての機関で正当な回答を得た。さらに、冷凍保存食肉類では照射1年後でも検知が可能であった。マイコトキシン検査では、市販のELISAキットを用いることで、ビール中のデオキシニバレノールのスクリーニングに十分適用が可能であった。マトリックスの影響評価では、標準溶液添加法がより簡便、高精度なマトリックス効果補正方法であることが実証された。高信頼性分析に関する研究では、同位体希釈質量分析法を用い、マトリックスマッチングすることによりニンジン、トウモロコシ試料中10種類の農薬でほぼ100%の定量値を示した。適正試料の作製における理化学検査では、着色料で魚肉製品、保存料で果実ペースト、また、残留農薬では枝豆ペーストが新基材として使用可能であることが示唆された。微生物学検査では、寒天状基材でストマッカー袋のメーカーにより対象菌の回収率が異なることが確認されたが、ストマッカー処理時間の延長で改善した。アレルギー検査では、そばタンパク質抽出液を基材に添加した試料の精度管理調査で、良好な回収率と保存安定性を確認した。組換えDNA食品では、実際に食品から抽出したDNA溶液中にPCR阻害物質を多く含んでいる場合には、使用するランモードにより、増幅効率に差が生じる可能性が考えられた。
結論
加工食品における放射線検知の適否判断およびかび毒検査における試験法の有用性が検証された。また、理化学と微生物の検査における適正な外部精度管理調査試料の開発を進めることができた。

公開日・更新日

公開日
2018-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201327001B
報告書区分
総合
研究課題名
検査機関の信頼性確保に関する研究
課題番号
H23-食品-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小島 幸一 (一般財団法人食品薬品安全センター 秦野研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 尾花裕孝(大阪府立公衆衛生研究所)
  • 斉藤貢一(星薬科大学)
  • 村山三徳((社)日本食品衛生協会食品衛生研究所)
  • 鎗田孝((独)産業技術総合研究所)
  • 渡辺卓穂(一般財団法人食品薬品安全センター 秦野研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品の安全性確保のために精度管理体制の整備、適正な精度管理用調査試料の開発と提供及び外部精度管理を実施し、食品衛生検査機関における検査成績の信頼性の確保並びに向上に貢献することを目的とした。
研究方法
加工食品中の残留農薬分析及び放射線検知の精度管理体制の構築では、模擬加工食品中の残留農薬分析を行い規格適合性を検証した。また、放射線検知において効率的な前処理法を含む改良した2-アルキルシクロブタノン類分析法で添加回収試験及び実際に照射した加工食品について外部精度管理試験を実施すると共に長期安定性を確認した。マイコトキシン検査では、市販のビールを対象とし、スクリーニング法としてのマイコトキシン(デオキシニバレノール)に対するELISA法の確立を目指し、測定精度等の確認を行った。食品中に含まれる微量残留有害物質については、シクロピアゾン酸を含む標準試料の作製と品質評価及びこれを用いた内部精度管理及び外部精度管理の実施と、これまでの液状食品を対象としての検討に加えて、固形食品における分析法の確立を検討した。マトリックスの影響評価では、検査精度の向上を目的とした質量分析検出器におけるマトリックススタンダードの有用性を評価するために、各種マトリックスの農薬測定に及ぼす影響について系統的に検討した。加えて、マトリックス効果の補正方法を検討した。高信頼性分析に関しては、同位体希釈質量分析法によって、調査試料に添加した残留農薬を分析した。適正試料の作製において、理化学検査では残留動物用医薬品、残留農薬及び食品添加物検査用試料の開発を行った。微生物では米飯を基材として用いてセレウス菌の各種条件下における安定性について検討を加えた。また、一般細菌数検査に使用した寒天状基材中の生菌数に対するストマッカーの影響について検討した。アレルギー検査では、卵の定量検査を対象とした外部精度管理調査の実施とそばを対象とした調査試料の作製を、組換えDNA食品ではリアルタイムPCRによる定性試験の結果の解析方法を検討すると共に、遺伝子組換え米及びパパイヤ遺伝子についてランモードの違うリアルタイムPCRで測定し、精度管理トライアルの結果を比較、評価した。
結果と考察
放射線検知の精度管理体制の構築では、加工食品の原材料に対する放射線照射の検知において、2-アルキルシクロブタノン類を指標として外部精度管理を行った結果、おおむね良好であった。また、照射履歴の判定に関しては、すべての機関で正当な回答を得た。さらに、冷凍保存食肉類では照射1年後も検知が可能であった。マイコトキシン検査では、市販のELISAキットを用いることで、スクリーニング法として満足できる結果が得られた。また、ビール中のデオキシニバレノールのスクリーニングとして十分適用が可能であった。食品中に含まれる微量残留有害物質では、シクロピアゾン酸についてアフラトキシンと同時汚染が懸念される食品試料の抽出・前処理方法を検討した結果、抽出には高速溶媒抽出法が効率よく、クリーンアップには懸濁した抽出液でも固相抽出法を適用できることが確認できた。マトリックスの影響評価では、標準溶液添加法がより簡便、高精度なマトリックス効果補正方法であることが実証された。高信頼性分析に関する研究では、同位体希釈質量分析法を用い、マトリックスマッチングすることによりニンジンおよびトウモロコシ試料中の10種類の農薬で、ほぼ100%の定量値を示した。適正試料の作製における理化学検査では、牛肉を用いた残留動物用医薬品検査用試料の開発を行い、安定性は豚肉より良好であることが確認できた。また、大根漬け中のソルビン酸は長期的に安定であり、残留農薬では枝豆ペースト及び米が新基材として使用可能であることが示唆された。微生物学検査では、米飯を基材としてセレウス菌検査用調査試料を作製することができた。また、寒天状基材でストマッカー袋のメーカーにより対象菌の回収率が異なることが確認されたが、ストマッカー処理時間の延長で改善できた。アレルギー検査では、卵の定量検査の外部精度管理はおおむね良好な結果が得られ、そばタンパク質抽出液を基材に添加し、良好な回収率と保存安定性を確認した。組換えDNA食品では、リアルタイムPCRによる定性試験の結果の解析方法について検討した結果、DNA溶液試料はCt値を用いてそのまま解析できることが確認された。また、実際に食品から抽出したDNA溶液中にPCR阻害物質を多く含んでいる場合には、使用するランモードにより、増幅効率に差が生じる可能性が考えられた。
結論
加工食品の放射線検知の適否判断及びかび毒検査における新規試験法の有用性とマトリックス効果に対する有効な補正効果が検証された。また、理化学と微生物の検査のための適正な外部精度管理調査試料の開発を進めることができた。

公開日・更新日

公開日
2018-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201327001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究で開発した精度管理調査用試料は、約500機関の日本国内食品衛生検査機関を対象として実施している外部精度管理調査に順次取り入れている。その結果、各検査機関からの検査成績は良好であり、食の安全を確保するための社会的ニーズに答えるべく信頼性の確保に貢献できた。
臨床的観点からの成果
臨床分野と直接かかわる内容はない。
ガイドライン等の開発
新規測定法や改良法が公定法などに取り入れられるように努めたい。
その他行政的観点からの成果
輸入食品が増加する中、加工食品中の放射線照射の検知、マイコトキシン分析の精度管理体制構築の基礎検討のほか、アレルギー物質や組換えDNA検査の外部精度管理導入のための検討が進捗し今後実施が期待できる。
その他のインパクト
食品衛生検査施設信頼性確保部門責任者等研修会(厚生労働省)、業務管理研修会(食品衛生登録検査機関協会)、精度管理研修会(食品衛生登録検査機関協会)および地方自治体が主催する精度管理関連業務の研修会等で本研究の成果をもとに、精度管理に関する講習を実施した。これらの講習会は一部の県単位でも行った。また、学会(日本食品衛生学会)や大学でも精度管理の意義や重要性についての講習や講義で研究の内容を踏まえて説明を行った。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
29件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
福井直樹、高取聡、北川陽子、他
加工食品原材料中における残留農薬濃度の推定の試み
食品衛生学雑誌 , 54 (6) , 392-396  (2013)
原著論文2
福井直樹、高取聡、北川陽子、他
LC-MS/MSによる農産物を主原料とした加工食品中の残留農薬一斉分析法の検討
食品衛生学雑誌 , 54 (6) , 426-433  (2013)
原著論文3
Kitagawa Y, Okihashi M, Takatori S, et al.
A rapid and simple method for the determination of 2-alkylcyclobutanones in irradiated meat and processed foods
Food Analytical Methods , 7 (5) , 1066-1072  (2014)
原著論文4
笠間菊子、井上雪乃、穐山浩、他
プラスミドDNAを用いた中国産安全性未承認遺伝子組換えコメ検査に関する外部精度管理調査
日本食品化学学会誌 , 19 (3) , 215-222  (2012)
原著論文5
笠間菊子、小熊恭代、穐山浩、他
ダイズおよびトウモロコシ抽出DNAの精製度の検討
日本食品化学学会誌 , 20 (3) , 203-208  (2013)

公開日・更新日

公開日
2014-06-19
更新日
2018-06-18

収支報告書

文献番号
201327001Z