文献情報
文献番号
201326017A
報告書区分
総括
研究課題名
産業保健分野のポピュレーションアプローチ推進手法の開発と産業保健師等の継続教育に関する研究
課題番号
H25-労働-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
荒木田 美香子 (国際医療福祉大学 小田原保健医療学部)
研究分担者(所属機関)
- 池田 俊也(国際医療福祉大学 大学院薬科学研究科)
- 五十嵐 千代(東京工科大学 医療保健学部)
- 吉岡 さおり(国際医療福祉大学 小田原保健医療学部)
- 谷 浩明(国際医療福祉大学 小田原保健医療学部)
- 三好 智美(東京工科大学 医療保健学部)
- 青柳 美樹(国際医療福祉大学 小田原保健医療学部)
- 大谷 喜美江(国際医療福祉大学 小田原保健医療学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、労働者に産業保健サービスを提供する方法としてPAによるgood practiceの推進手法を開発し、さらに産業保健の推進に貢献できる産業保健師等を育成するためのキャリアラダーを開発することを目的とする。今年度は、①高齢労働者を操作的に定義し、②労働者、衛生管理者、産業保健に携わる保健師・看護師(以下、保健師等)への質問紙調査を実施することにより、現在の産業保健の実施状況と高齢労働者の健康保持増進、疾病の悪化防止・就労継続支援を考えた場合の産業保健サービスの在り方を検討すると共に、③保健師等への継続教育のあり方を検討し、キャリアラダーを提案することを目的とした。
研究方法
方法:①は文献の検討及び質問紙調査、②は労働者、衛生管理者、産業保健に従事する看護職(看護師・保健師)への質問紙調査、③は文献の検討及びグループインタビューにより実施した。
結果と考察
①高齢労働者の操作的定義:老化には生理的老化と病的老化があるが、生理的老化として、総タンパク、アルブミン、クレアチニンクレアランス、赤血球数、ヘモグロビンなどの減少だけでなく、脳の形態、感情の変化、聴覚・視覚、呼吸機能、心血管系の機能、腎泌尿器系、内分泌系、骨・運動器系などの全身的な変化が起きる。定期健康診断の結果や、受診行動や、有病率などの変化を総合的に判断し、50歳以上の労働者を高齢労働者と定義した。
②労働者を対象とした調査では、40歳代の自覚的健康観は低く、またそれ以前より健康診断の有所見が増加していた。また、つまずきや転倒などは年代に関係なく経験していた。労働者へのポピュレーションアプローチは50歳代以前より早い段階より開始する必要があった。保健師を対象とした調査では、「健診前後の保健指導の充実」、「慢性疾患(癌、生活習慣病、喘息等)をもった社員の就業継続支援」「がん健診の導入やがん検診の拡大」のなど、生活習慣病対策に加えて、「継続的な受診がしやすい制度の検討」といった両立支援が必要であると認識していた。また、「筋力や体力の保持に関する対策」「腰痛などの筋骨格系の疾患を持った社員への支援」などの対策も必要であると認識していた。
以上のことより、高齢労働者に対しては、「健診前後の保健指導の充実」、「慢性疾患(癌、生活習慣病、喘息等)をもった社員の就業継続支援」「がん健診の導入やがん検診の拡大」のなど、生活習慣病対策に加えて、「継続的な受診がしやすい制度」を検討する必要があり、保健師等には産業医、精神科医、衛生管理者、理学療法士、THPの運動指導担当者などを活用した産業保健活動を推進する能力が求められた。
③文献の検討及びグループインタビューより、キャリアラダー(案)の修正を行い、提案した。産業保健師のキャリアラダー構築については、先駆的な活動をおこなっている産業保健師や研究班の産業保健師からの意見をもとに検討を行った。キャリアラダーの全体像として、おおよそ5年目までのファーストレベル、5年目から10年目までのマスターレベル10年目以降にベーシックマネジメント、さらにマネジメントからエキスパートへの到達を目指すものと、ベーシックマネジメントの研修の後に労働衛生コンサルタントを含む特定領域のスペシャリストに進むものとに分けた。平成23年の「新人看護員研修ガイドライン~保健師編~」(厚生労働省)にあるように、産業保健師においても「専門職としての能力」「組織人としての能力」「自己管理・自己啓発に関する能力」に分けられる。「専門職としての能力」は労働衛生5管理がベースとなる。しかし、保健師の場合、衛生管理能力に看護の能力が加わることから、個人と集団・組織を連動して考えていく視点は必須となる。また、キャリアラダーが上位レベルになればなるほど、その能力はさらに包括的になり深化していく。さらに、産業保健師の場合の「組織人としての能力」は特に重要であり、事業場所属の場合は自分が置かれている立ち位置と企業人としてのバランス感覚が問われ、健康保健組合や外部専門機関所属の保健師の場合、自分が所属する機関での立ち位置に加え、健康支援の対象となる事業場の組織のあり方や関わりの中から、組織人としての能力を有さなければならない。これらの産業保健の特徴を考慮し、各レベル・項目ごとに到達度を設定した。
②労働者を対象とした調査では、40歳代の自覚的健康観は低く、またそれ以前より健康診断の有所見が増加していた。また、つまずきや転倒などは年代に関係なく経験していた。労働者へのポピュレーションアプローチは50歳代以前より早い段階より開始する必要があった。保健師を対象とした調査では、「健診前後の保健指導の充実」、「慢性疾患(癌、生活習慣病、喘息等)をもった社員の就業継続支援」「がん健診の導入やがん検診の拡大」のなど、生活習慣病対策に加えて、「継続的な受診がしやすい制度の検討」といった両立支援が必要であると認識していた。また、「筋力や体力の保持に関する対策」「腰痛などの筋骨格系の疾患を持った社員への支援」などの対策も必要であると認識していた。
以上のことより、高齢労働者に対しては、「健診前後の保健指導の充実」、「慢性疾患(癌、生活習慣病、喘息等)をもった社員の就業継続支援」「がん健診の導入やがん検診の拡大」のなど、生活習慣病対策に加えて、「継続的な受診がしやすい制度」を検討する必要があり、保健師等には産業医、精神科医、衛生管理者、理学療法士、THPの運動指導担当者などを活用した産業保健活動を推進する能力が求められた。
③文献の検討及びグループインタビューより、キャリアラダー(案)の修正を行い、提案した。産業保健師のキャリアラダー構築については、先駆的な活動をおこなっている産業保健師や研究班の産業保健師からの意見をもとに検討を行った。キャリアラダーの全体像として、おおよそ5年目までのファーストレベル、5年目から10年目までのマスターレベル10年目以降にベーシックマネジメント、さらにマネジメントからエキスパートへの到達を目指すものと、ベーシックマネジメントの研修の後に労働衛生コンサルタントを含む特定領域のスペシャリストに進むものとに分けた。平成23年の「新人看護員研修ガイドライン~保健師編~」(厚生労働省)にあるように、産業保健師においても「専門職としての能力」「組織人としての能力」「自己管理・自己啓発に関する能力」に分けられる。「専門職としての能力」は労働衛生5管理がベースとなる。しかし、保健師の場合、衛生管理能力に看護の能力が加わることから、個人と集団・組織を連動して考えていく視点は必須となる。また、キャリアラダーが上位レベルになればなるほど、その能力はさらに包括的になり深化していく。さらに、産業保健師の場合の「組織人としての能力」は特に重要であり、事業場所属の場合は自分が置かれている立ち位置と企業人としてのバランス感覚が問われ、健康保健組合や外部専門機関所属の保健師の場合、自分が所属する機関での立ち位置に加え、健康支援の対象となる事業場の組織のあり方や関わりの中から、組織人としての能力を有さなければならない。これらの産業保健の特徴を考慮し、各レベル・項目ごとに到達度を設定した。
結論
文献の検討及び質問紙調査から50歳以上の労働者を高齢労働者と定義した。高齢労働者への健康確保対策を展開するために、産業保健師には生活習慣病対策に加えて、「継続的な受診がしやすい制度」を検討する必要があり、保健師等には産業医、精神科医、衛生管理者、理学療法士、THPの運動指導担当者などを活用した産業保健活動を推進する能力が求められる。また、それらの能力獲得を見すえたキャリアラダーの提案を行った。
公開日・更新日
公開日
2015-06-22
更新日
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