中小企業用産業保健電子カルテの開発とそれによる効果的・効率的な産業保健手法に関する検討 

文献情報

文献番号
201326015A
報告書区分
総括
研究課題名
中小企業用産業保健電子カルテの開発とそれによる効果的・効率的な産業保健手法に関する検討 
課題番号
H25-労働-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
大神 明(産業医科大学 産業生態科学研究所作業関連疾患予防学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 喜多村紘子(産業医科大学 産業生態科学研究所作業関連疾患予防学)
  • 只野 祐((公社)全国労働衛生団体連合会)
  • 小林祐一(産業医科大学・産業生態科学研究所・産業保健経営学)
  • 櫻木園子(一般財団法人京都工場保健会)
  • 永田智久(産業医科大学・産業生態科学研究所・産業保健経営学)
  • 塩田直樹(産業医科大学・小児科学)
  • 中尾 智(産業医科大学・産業生態科学研究所・産業保健管理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,231,000円
研究者交替、所属機関変更
秦浩一については退職のため、平成26年度研究者名簿より削除。

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、国内中小企業における健康診断・保健指導データの活用実態を調査し、中小企業に提供可能な健康診断統合電子カルテあるいはツールを開発し、より実効的な産業保健サービスの定着と産業保健活動の充実を図る事を目的とする。
研究方法
企業外健診機関と、その機関と産業医契約をしている中小事業所を中心に次の開発研究と調査とを行う。(Ⅰ)事業所における健康診断システム活用に関する実態調査、(Ⅱ)中小企業を対象とした、汎用性・低コスト性を重視した産業保健電子ツール(パーソナルヘルスレコード:PHR)・システムの開発、(Ⅲ)開発電子カルテおよびツール・システムを用いた介入実証実験。
≪平成25年度:初回調査の実施≫
(Ⅰ)企業外健診機関の健康診断及び保健指導の実態調査(H25年度)
 企業外健診機関に対して健診後に行う保健指導等の実態に関する質問票による調査を行った(537機関に送付)。アンケート調査の回答は、187機関よりあり,集計を行った。質問票には産業医活動に際しての健康診断情報の流れやその活用の実態、保健指導時に生じた課題に関する質問のほか、業種・従業員数・産業保健システム利用に携わるスタッフ等の企業および健診機関の基本情報を調査項目に含めた。
(Ⅱ)(Ⅰ)の調査を踏まえて、産業保健版電子カルテのプロトタイプをデザインし制作するために、産業保健スタッフから事業所側に必要な情報と、産業保健スタッフから従業員の健康管理に必要な情報との中間にリンクされるべき情報集合体を想定し、以下のような点に関し産業医の視点からの提言をまとめた。
ⅰ)中小企業における健診データの持ち方や活用方法、セキュリティや個人情報の取り扱い方法など
ⅱ)中小企業における医療区分と就業区分~産業医と保健師の役割について
ⅲ)健診後の管理体系と課題について
ⅳ)経営指標や健康会計的なコストパフォーマンスなど
ⅴ)労働衛生機関における中小企業健診データ取り扱いの現状と課題について


結果と考察
企業外健診機関の健康診断及び保健指導の実態調査
 約500の企業外健診機関に対して健診後に行う保健指導等の実態に関する質問票による調査を行った。質問票には産業医活動に際しての健康診断情報の流れやその活用の実態、保健指導時に生じた課題に関する質問のほか、業種・従業員数・産業保健システム利用に携わるスタッフ等の企業および健診機関の基本情報を含んだ。
調査結果の要点は以下の通りである。
 i) 健康診断について
  健診機関は労働者の健康確保の担い手としての重要な役割を果たしているが、健診結果について、事業場の部署ごとあるいは男女別・年代別での分析結果等の提供は必ずしも行われていないこと。
ii) 保健指導について
  健診機関による安衛法に基づく保健指導は十分には実施されておらず、保健指導を適切に実施するための課題として、
 1)対象者の選定基準が示されていない。(環境整備課題)
 2)保健指導実施のためのマニュアルがない。(環境整備課題)
 3)過去の労働時間などの必要な情報が事業者から提供されていない。
 4)保健指導のフォローアップがあまり行われていない。
以上の点があげられること。
iii) 労災二次健康診断について
  指定を受けている健診機関での労災二次健診は取組みが少なく、本制度が事業者、労働者に周知されておらず、ニーズが少ないという可能性があること。
iv) 産業医・産業保健職の活動について
  健診機関は産業医活動の重要な一翼を担っており、産業保健職(医師以外の産業保健活動従事者)も保健指導をはじめとする多彩な活動が展開されているが、更に発展させるためには、産業医活動のための助成金の創設、産業保健職の位置付けの明確化の要望などの意見があること。

結論
(Ⅰ)の調査を踏まえて、産業保健スタッフから事業所側に必要な情報と、産業保健スタッフから従業員の健康管理に必要な情報との中間にリンクされるべき情報集合体を想定したツールの開発にあたり、以下の点が指摘された。
1)キーパーソンは産業保健スタッフ(産業医、保健師)、主治医、健診機関、事業場内担当者(衛生管理者、人事総務担当者)であること、2)産業医が責任を持つ形にし、保健師を活用すべきであること、3)大企業で既に動いているシステムの考え方を導入すべきであること、4)健診情報を含む多様な健康管理情報データベース作成が特に必要であること、5)作成したデータベースを活用するには企業と健診機関の契約にデータの授受に関しての条件も含める仕掛けが必要であること。

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201326015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,200,000円
(2)補助金確定額
4,220,636円
差引額 [(1)-(2)]
-20,636円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,026,157円
人件費・謝金 60,000円
旅費 930,518円
その他 1,234,961円
間接経費 969,000円
合計 4,220,636円

備考

備考
預金利息及び自己資金20603円を含むため。

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-