作業実態に応じた効果的なVOC発散防止・抑制方法に関する調査研究 

文献情報

文献番号
201326014A
報告書区分
総括
研究課題名
作業実態に応じた効果的なVOC発散防止・抑制方法に関する調査研究 
課題番号
H25-労働-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
米持 真一(埼玉県環境科学国際センター大気環境担当)
研究分担者(所属機関)
  • 名古屋 俊士(早稲田大学理工学術院想像理工学部)
  • 村田 克((財)労働科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 化学物質による労働災害を減少させるためには、事業者による危険性または有害性等の調査及びその結果に基づく、合理的な安全衛生対策が重要であるが、近年は、現場において取り扱われる化学物質の種類や工程が多様化・複雑化する中で、リスクに基づく合理的な化学物質管理を進めるため必要が高まっている。これを受け、一定の要件の下で、『局所排気装置等以外の発散防止・抑制装置の導入を可能とすること』等とする有機溶剤中毒予防規則等の一部を改正する省令(平成24年度厚生労働省令第71号)が平成24年4月に交付され、同年7月から施行された。
 本課題では、我が国における本施策の今後の効果的な導入と推進に資するため、国内外の技術情報を調査するとともに、約40年前に性能要件基準を導入した英国、及び労働災害防止対策を先進的に進めてきた米国を例として、制度導入前、導入後の状況を詳細に調査し、我が国への導入可能性について評価する。また、印刷現場等で使用可能な、局所排気装置等以外の新たな発散防止・抑制技術の開発を行い、現場における効果的な有害物質によるリスク低減を目指す。
研究方法
①文献調査および英国における状況調査
 国内外において開発、検討された発散防止・抑制方法についての、技術情報調査を行った。また、約40年前に性能要件を導入した英国の安全衛生機関及びマンチェスター大学を訪問し、1972年の英国における労働安全衛生法および1988年の有害物質に関する規則(COSHH)導入までの経緯、導入後の課題、及び専門家育成等に関するヒアリングを実施した。
②発散防止・抑制技術の開発
 埼玉県環科セおよび早大では、これまで、作業環境および大気環境への揮発性有機化合物(VOC)の発散を抑制するため「中小企業への導入可能なVOC処理システムの開発」に関する共同研究を実施ししてきたが、本研究では、具体的事例として、塗装・印刷現場における使用済みウエス等に着目した。ここからの有害物質の作業環境中への発散防止を図るため、使用済みウエス入れ等について、その構造や光触媒を用いた有害物質の濃度低減を検討した。
結果と考察
 
結論
我が国における本施策の今後の効果的な導入と推進に資するため、約40年前に性能要件基準を導入した英国のマンチェスターの諸施設を訪問した。マンチェスター大学のAdrian A.Hirst博士を訪問しCOSHH制定の経緯や、運用上の課題、専門家の育成についてヒアリングを行った。また、安全衛生研究所(HSL)のJohn Saunders氏を訪問し、労働衛生専門家の育成や、事故調査と原因究明、作業環境モニタリング、リスクアセスメント、現場における有害物質低減手法の検討などについてもヒアリングを行った。
 英国の労働安全衛生法は授権法(Enabling Act)として労働安全衛生行政の体系を大きく変えたことは、よく知られている。しかし法制定後すぐに規制状況が変わったわけではなく、しばらくは以前の規制が残り続け、実際にはCOSHHの制定後から徐々に変わってきたとのことであった。これは何らかの障害があったというより、新法における考え方が社会へ浸透する時間がそれだけ必要だったと考えられる。すなわち換気装置の性能用件化だけでなく、その他の安全衛生要因も含めた政策転換が、英国の安全衛生データの改善に結びついたと考える。
 また、光触媒活性の高いシリカゲル光触媒を開発し、それを用いて有害物質をその場で処理できるような装置を作製し、分解実験を実施した。シリカゲル光触媒の吸着形態については吸着等温線から単層吸着と判断され、表面コーティング後の表面積の低下が吸着量の減少の原因であると考えられた。開発したシリカゲル光触媒を用いた有機溶剤処理では、始めは主に吸着の作用で気相濃度を低減させることができ、後に気相濃度の減少は緩やかになるが、時間をかけて完全分解が安定して進むようであった。
 さらに金属酸化物触媒(TiO2-ZrO2-MoO3)を用いた触媒燃焼法による有機溶剤の分解を試みた結果、管理濃度の10倍の濃度を約1/10倍の濃度まで分解することを確認し、難分解性である塩素系有機溶剤のうち四塩化炭素、クロロホルムに関しては完全分解を確認した。
 シリカゲル光触媒分解装置の現場適用を検討したところ、廃ウエス入れ容器内では少なくともトルエン濃度で500 ppmまでは十分に処理可能であることがわかった。また触媒はUV処理のみで再生
できる可能性が示され、シリカゲル光触媒反応容器を設計する際には単層充填とすることが望ましいと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201326014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,000,000円
(2)補助金確定額
4,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,961,658円
人件費・謝金 150,000円
旅費 797,353円
その他 171,192円
間接経費 920,000円
合計 4,000,203円

備考

備考
自己資金として203円を補填

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-