リスク評価のためのバイオロジカル・モニタリング手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201326003A
報告書区分
総括
研究課題名
リスク評価のためのバイオロジカル・モニタリング手法の開発に関する研究
課題番号
H23-労働-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
圓藤 吟史(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山中 健三(日本大学薬学部環境衛生学)
  • 山野 優子(昭和大学医学部衛生学)
  • 市場 正良(佐賀大学医学部社会医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 半導体などの製造に使用されているアルシンの急性毒性である溶血のメカニズムは明らかではない。そこで、in vivoならびにin vitroで曝露したマウス保存血を用いたアルシン曝露実験を行いHb付加体の検出を試みた。
 皮膚吸収があるN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)の生物学的許容値はN-メチルアセトアミド(NMAC)として欧米より勧告されているが、測定法が古く、リスク管理に用いるためには、代謝経路をふまえた測定対象物質の選択と測定法の吟味などをする必要がある。そのため、全衛連の労働衛生検査精度向上研究会においてDMACばく露の生物学的モニタリング法(BM法)についてNMAC測定状況と濃度レベル調査を行うとともに、精度のよいBM法を開発し,全国の労働者のBM体制を作ることを目的とする。
研究方法
 亜ヒ酸を塩酸と亜鉛末で還元して発生したアルシンを雄性ICRマウスにin vivoで曝露した血漿部分ならびにマウス保存血にin vitroでの曝露した血漿部分をサンプルとした。Hb付加体の検出の前処理として、サンプルを0.1%トリフルオロ酢酸で25~100倍に希釈し、マトリックスと混合してターゲットプレートにスポットした。分析はマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析計(MALDI-TOF-MS)で行い、得られたピークの分子量から付加体を推定した。
 NMACの測定法については全衛連の労働衛生検査精度向上研究会会員7機関に対し行った。昨年の研究から、NMAC分析では、GC注入口の熱によって代謝物であるDMAC-OHが熱分解しNMACに変化していることが分かったので、DMAC-OHとNMACを分離定量する方法として、LC-MSMSでの分離測定を検討した。
結果と考察
 アルシン曝露により通気の有無にかかわらず溶血が認められた。MALDI-TOF-MSの結果は、酸素の存在の有無にかかわらずアルシンに曝露したサンプルに分子量15 kDaと15.6 kDaの2本のピークが得られた。15kDaはグロビンα鎖にヒ素(74.9)が結合したものであり、15.6kDaはグロビンα鎖+ヘム(616.2)+ヒ素が結合したものと推測できた。
 NMACの測定は4施設がGC-高感度窒素リン検出器(NPD, FTD)法、1施設がGC-質量分析(MS)法であり、いずれの施設もNMAC、NMFともに同じ分析条件を用い、使用カラムは1施設を除いて極性カラム、定量は内部標準法を採用していた。低濃度試料に若干ばらつきがみられることが、3年間の調査で確認できた。
NMACの測定はGC法ではNMAC濃度はばく露尿に含まれるDMAC-OHがNMACに完全に変化していることが重要であり、低濃度試料に若干問題が残った。LC-MSMSでは親水性相互作用(HILIC)を利用した分析モードカラムを用いることによりDMAC-OHを分離できた。今後の課題は、夾雑ピークにより定量下限値が高いことから、今後の課題は、夾雑ピークにより定量下限値が高いことから、固相を用いる等の夾雑ピークの除去、S/N比を上げるための分析条件の再検討が必要である。またAMMAを再現性良く定量できる分析条件等の検討があがる。
 夾雑ピークの除去(例えば、固相を用いる等)、S/N比を上げるための分析条件の再検討が必要である。またAMMAを再現性良く定量できる分析条件等の検討があがる。

結論
 アルシン曝露により通気の有無にかかわらず溶血が認められ、これらのピークはグロビンα鎖 + ヒ素またはグロビンα鎖 + ヘム + ヒ素であると推測された。
 DMAC-OH、NMACの分離定量条件を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201326003B
報告書区分
総合
研究課題名
リスク評価のためのバイオロジカル・モニタリング手法の開発に関する研究
課題番号
H23-労働-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
圓藤 吟史(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山中 健三(日本大学薬学部環境衛生学)
  • 山野 優子(昭和大学医学部衛生学)
  • 市場 正良(佐賀大学医学部社会医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 経皮吸収が無視できない化学物質の曝露評価にはバイオロジカルモニタリング(BM)法による評価が必要とされる。近年、低濃度の作業環境におけるアルシン中毒やN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)中毒が報告され、これらには経皮吸収が関与している可能性がある。そこで、本研究は、アルシンの皮膚吸収の可能性を追及するとともにアルシンの急性毒性である溶血のメカニズムは明らかにする。次に、DMACの生物学的許容値はN-メチルアセトアミド(NMAC)として欧米より勧告されているが、測定法が古く、リスク管理に用いるためには、代謝経路をふまえた測定対象物質の選択と測定法の吟味などをする必要がある。そのため、全衛連の労働衛生検査精度向上研究会においてNMAC測定状況と濃度レベル調査を行うとともに、精度のよいBM法を開発することを目的とする。
研究方法
 アルシンについては、亜ヒ酸を塩酸と亜鉛末で還元して適切かつ安定な濃度のアルシンガスを発生する装置を作製した。雄性ICRマウスに経皮または全身曝露を行い、溶血などの生体影響との量反応関係を明らかにした。発生したアルシンを雄性ICRマウスに曝露し、得られた血漿部分ならびにマウス保存血にアルシン曝露した血漿部分をサンプルとした。Hb付加体の検出の前処理として、サンプルを0.1%トリフルオロ酢酸で25~100倍に希釈し、マトリックスと混合してターゲットプレートにスポットした。分析はマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析計(MALDI-TOF-MS)で行い、得られたピークの分子量から付加体を推定した。
 NMACの測定法については全衛連の労働衛生検査精度向上研究会会員機関に調査を行った。DMAC-OHとNMACを分離定量する方法として、カラムの検討ならびにGCおよびLC-MSMSでの分離測定を検討した。
結果と考察
 約300ppm5分間の経皮曝露では、溶血は認められず、血球中HbへのAs付加体形成も見られなかった。アルシン約300ppm5分間全身曝露では曝露直後から溶血が認められ、Ht値は3時間後に曝露前の30%、6時間後では16%にまで減少した。約90ppm5分間の4回反復曝露の場合、4回目曝露後12時間においてHt値は24.4%にまで減少した。溶血にともない腎臓、肝臓および脾臓に変化がみられた。腎臓では、近位尿細管曲部の上皮の細胞質内にエオジン好性の球状物質が多量に沈着し、尿細管の内腔にも貯留がみられた。同様に肝臓のクッパー細胞と脾臓の赤脾髄内の網内系細胞にも認められたが、沈着の程度は腎臓が最も顕著であった。エオジン好性物質はいずれの臓器もHb免疫染色に陽性であり、Hbの沈着であることが確認できた。なお、これらの臓器に壊死性の変化は認められなかった。また、肺組織には特に変化は認められなかった。in vitro 曝露したマウス血液試料では通気の有無にかかわらず溶血が認められた。MALDI-TOF-MSの結果は、酸素の存在の有無にかかわらずアルシンに曝露したサンプルに分子量15 kDaと15.6 kDaの2本のピークが得られ、15kDaはグロビンα鎖にヒ素が結合したものであり、15.6kDaはグロビンα鎖+ヘム(616.2)+ヒ素が結合したものと推測できた。
結論
 アルシンの高濃度の皮膚曝露では影響は認められなかった。吸入曝露では溶血が認められ、ヘモグロビンアダクトはグロビンα鎖 + ヒ素またはグロビンα鎖 + ヘム + ヒ素であると推測された。
 DMAC-OH、NMACの分離定量条件を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201326003C

収支報告書

文献番号
201326003Z