スマートフォンを用いた安全な外来化学療法実施に関する研究

文献情報

文献番号
201325070A
報告書区分
総括
研究課題名
スマートフォンを用いた安全な外来化学療法実施に関する研究
課題番号
H24-医療-若手-052
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
大島 久美(金子 久美)(広島大学 原爆放射線医科学研究所 放射線災害医療研究センター 血液腫瘍内科研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 琢生(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター血液内科)
  • 沖川 佳子(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター血液内科)
  • 佐伯 康之(広島大学病院薬剤部)
  • 泉谷 悟(広島大学病院薬剤部)
  • 清本 美由紀(広島大学病院看護部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,217,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究代表者 大島久美 所属機関名 聖路加国際病院(平成24年4月1日~25年4月30日) → 所属機関名 広島大学原爆放射線医科学研究所(平成25年5月1日以降) 研究分担者交替 氏名 細谷要介(平成24年4月1日~25年4月30日)→氏名 伊藤琢生(平成25年5月1日以降) 氏名 扇田 信(平成24年4月1日~25年4月30日)→氏名 沖川佳子(平成25年5月1日以降) 氏名 石丸博雅(平成24年4月1日~25年4月30日)→氏名 佐伯康之(平成25年5月1日以降) 氏名 黒柳貴子(平成24年4月1日~25年4月30日)→氏名 泉谷 悟(平成25年5月1日以降) 氏名 宮尾 桜(平成24年4月1日~25年4月30日)→氏名 清本美由紀(平成25年5月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国でも、抗がん剤治療の診療形態が入院治療から外来治療に移行している。外来化学療法では、患者が日常生活を可能な限り維持しながら治療を続けられるためQuality of Life (QOL)を維持できる反面、患者・家族による体調管理(自己管理)と有害事象出現時の医療機関の迅速な対応が必須であるという難点もある。本研究では、スマートフォンを中心とした携帯情報端末を用いて、外来化学療法時に患者・家族と医療機関を緊密に結ぶ患者状態と副作用報告システムを確立することを目的とする。
研究方法
1年目にシステムを確立し、2年目にシステムを用いた臨床研究を行うことを計画した。
しかし、2年目に施設の異動のため、システムの改修が必要となった。

結果と考察
スマートフォンを用いた外来化学療法時の患者・家族からの有害事象報告システムの開発を行った。株式会社エイルの在宅医療用のアプリケーションをベースとして、聖路加国際病院の外来化学療法用のシステムとして開発を行った。株式会社ソフトバンクテレコム社のクラウド環境を利用し、患者、医師、看護師、薬剤師がクラウド環境に登録された情報を参照することで、リアルタイムに情報を共有し迅速な対応が可能なシステムである。患者の個人情報流出の危険を減らすため、病院の電子カルテとは切り離した。さらに、緊急対応が必要な可能性のある状況に対しては、医療従事者の持つスマートフォンにアラート機能を設定し、速やかな緊急対応が可能なシステムとした。このシステムはWEB上からも閲覧・操作が可能である。
システムに関して、施設の異動に伴い、施設の状況に応じた改修を要した。個人情報流出に対する対策として、診療録のシステムが、外部のインターネットと接続していない状況では、スマートフォン上での情報がリアルタイムに確認できず、また、診療録との互換性も悪い。スマートフォン上でも情報の確認は可能であるが、全部を確認するには見にくく、操作がしにくい。情報がどこでも入手可能でなければ、スマートフォンシステムの利点が損なわれてしまう。そのため、個人情報対策の強化に加え、スマートフォン上で情報確認がしやすいような画面設定への修正が必要であった。さらに、外来化学療法中の患者に対する問診事項が異なるため、問診内容の修正が必要であった。開発したシステムを用いた臨床研究計画を作成中であり、今後開発したシステムを用いた臨床試験を施行する予定である。
本システムを活用することで、軽微な段階で副作用情報が把握でき、重篤な副作用の軽減につながり、治療成績の向上が期待できる。また、患者にとっては治療における安心感と医療機関に対する信頼感の増加、医療スタッフにとっては多職種が患者情報とそれに対する対応をリアルタイムに共有できることによる医療安全の向上につながる。さらに、本システムは、システム構築が安価で実現可能性は極めて高い。
このような利点があるものの、一方では今後の課題も多い。医療機関内でシステムの運用体制を整備する必要性、開発したシステムを用いた臨床研究の評価の難しさ、個人情報に配慮した上での院内の電子診療録との連動、高齢患者などスマートフォンの使用になれていない患者・家族に対する適応のための工夫、対象患者の疾患や治療毎のシステムの対応などがあげられる。
結論
結論に至るには臨床試験の結果が必要であり、課題も多いと考えられるものの、スマートフォンなどの新通信システムを外来化学療法に導入することは時代の要求にも応えており、我が国の医療水準の向上と患者の満足度の向上に寄与することが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

文献情報

文献番号
201325070B
報告書区分
総合
研究課題名
スマートフォンを用いた安全な外来化学療法実施に関する研究
課題番号
H24-医療-若手-052
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
大島 久美(金子 久美)(広島大学 原爆放射線医科学研究所 放射線災害医療研究センター 血液腫瘍内科研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 琢生(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター血液内科)
  • 沖川 佳子(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター血液内科)
  • 佐伯 康之(広島大学病院薬剤部)
  • 泉谷 悟(広島大学病院薬剤部)
  • 清本 美由紀(広島大学病院看護部)
  • 細谷 要介(聖路加国際病院小児科)
  • 扇田 信(聖路加国際病院腫瘍内科)
  • 石丸 博雅(聖路加国際病院薬剤部)
  • 黒柳 貴子(聖路加国際病院看護部)
  • 宮尾 桜(聖路加国際病院看護部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
研究代表者の所属機関が、聖路加国際病院 血液腫瘍科より、広島大学原爆放射線医科学研究所 放射線災害医療研究センター 血液・腫瘍内科研究分野に変更となった。

研究報告書(概要版)

研究目的
抗がん剤治療の診療形態は、入院治療から外来治療に移行している。背景には、入院日数短縮の促進や外来化学療法に対する診療報酬の加算といった政策的側面、副作用の少ない治療薬や治療法の開発と副作用に対する支持療法の進歩といったがん医療の側面がある。外来化学療法では、患者が日常生活を可能な限り維持しながら治療を続けられるためQuality of Life (QOL)を維持できるという大きな利点がある反面、患者・家族による体調管理(自己管理)と有害事象出現時の医療機関の迅速な対応が必須であるという難点もある。有害事象出現時の医療機関の対応は電話相談と救急外来が中心であるが、多くの施設において、外来化学療法中の患者に対する相談・情報提供の窓口と緊急時の支援体制の整備は十分ではない。携帯電話を一人一台持つ時代となり、スマートフォンやiPadなどの携帯情報端末(PDA)も多く使用されているため、今回の研究では、外来化学療法時に患者・家族と医療機関を緊密に結ぶ患者状態と副作用報告システムを、スマートフォンを用いて確立することを目的とする。
研究方法
① 外来化学療法中の患者からの電話相談に関する後方視的調査、外来化学療法に関わる医師・看護師・薬剤師へのアンケート調査、外来化学療法を施行中の患者へのアンケート調査を行い、化学療法における患者の離院後の自己管理や緊急時の対処方法についての現状と問題点を把握・整理する。
② スマートフォンを用いた患者状態と有害事象報告システムを開発する。
③ ②で開発したシステムを用いて臨床試験を行う。
④ ④に基づき、システムの改善・改良を行う。
⑤ 汎用性のあるシステムを確立する。
結果と考察
外来化学療法中の患者の離院後の自己管理や緊急時の対応に関する問題点の調査により、離院後の自己管理において患者が相談が必要と感じる場面は多いことが明らかとなり、離院後の患者支援体制の確立は重要な課題であると考えられた。
スマートフォンを用いた外来化学療法時の患者・家族からの有害事象報告システムは、株式会社ソフトバンクテレコム社のクラウド環境を利用し、患者、医師、看護師、薬剤師がクラウド環境に登録された情報を参照することで、リアルタイムに情報を共有し迅速な対応が可能なシステムとした。患者の個人情報流出の危険を減らすため、病院の電子カルテとは切り離した。さらに、緊急対応が必要な可能性のある状況に対しては、医療従事者の持つスマートフォンにアラート機能を設定し、速やかな緊急対応が可能なシステムとした。スマートフォン上だけでなく、WEB上からも閲覧・操作が可能となっている。さらに、施設ごとで診療録の個人情報流出に対する対策が異なり、外部のインターネットと接続していない状況もありうるため、システムの修正が必要であった。
本研究で開発したシステムが利用可能となれば、軽微な段階で副作用情報が把握できるため、治療の安全性だけでなく治療成績の向上が期待できる。患者にとっては治療における安心感と医療機関に対する信頼感が増すため、QOLの向上が期待できる。抗がん剤治療に関わる多職種が患者情報をリアルタイムに共有することができ、それに対する対応も把握可能となるため、医療における安全性の向上につながる。何よりも、システム構築が安価で汎用性が高く、実現可能性は極めて高い。
しかし、開発したシステムの課題として、医療機関内でのシステムの運用体制整備、開発したシステムを用いた臨床研究の評価の難しさ、個人情報に配慮した上での院内の電子診療録との連動などの問題がある。また、高齢患者などスマートフォンの使用になれていない患者・家族に対する適応のための工夫、対象患者の疾患や治療毎のシステム設定を要する。
結論
結論に至るには臨床試験の結果が必要であり、課題も多いと考えられるものの、スマートフォンなどの新通信システムを外来化学療法に導入することは時代の要求にも応えており、我が国の医療水準の向上と患者の満足度の向上に寄与することが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201325070C

収支報告書

文献番号
201325070Z