東日本大震災の被災地における地域精神保健医療福祉システムの再構築に資する中長期支援に関する研究

文献情報

文献番号
201325066A
報告書区分
総括
研究課題名
東日本大震災の被災地における地域精神保健医療福祉システムの再構築に資する中長期支援に関する研究
課題番号
H25-医療-指定-013
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
樋口 輝彦(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター )
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤順一郎(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所社会復帰研究部)
  • 吉田光爾(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所社会復帰研究部)
  • 池淵恵美(帝京大学医学部)
  • 西尾雅明(東北福祉大学総合福祉学部)
  • 田島良昭(社会福祉法人南高愛隣会(コロニー雲仙))
  • 大野 裕(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター)
  • 佐竹直子(独立行政法人国立国際医療研究センター国府台病院)
  • 鈴木友理子(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所成人精神保健研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
38,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、東日本大震災の被災地における精神保健医療福祉分野における支援者支援、および精神障害をもつ当事者・家族支援の一環として実施され、○各地域のニーズに基づいたコンサルティング・研修活動等のネットワークづくりに向けた活動を通じて、市町村圏域における地域精神保健医療福祉システムの再構築に寄与すること、および○ケースマネジメントやアウトリーチ活動等、精神障害者の地域生活のための精神保健医療福祉システムの発展の一助となることを目的とした。
研究方法
被災地の地域精神保健医療福祉のシステムづくりに先行して取り組みを始めている地域や臨床チームを対象として計7地区(仙台市宮城野区、女川町、石巻地区、福島県全域、相馬市、宮古市、盛岡市)を選定し、各地区に支援のコンサルティング担当者をたて、支援活動を実施した。
各地区における支援活動の前後において、現地支援者とコンサルティング担当者、調査担当者を含めたフォーカスグループによるインタビュー(各サイトにおいて年1~2回実施)を行った。各地区のコンサルティング担当者は、各地区のニーズにもとづいた支援計画をたて、コンサルティング活動や研修活動等の継続的・定期的な支援を実施し、年度末時点において、支援活動による成果と改善点についての共有を行った。
また、研究機関が中心となり、被災地における精神障害者の震災に伴う変化や影響、震災後の生活実態やニーズを明らかにすることを目的として、○福島県の精神保健福祉サービス事業所の利用者、および、○福島県相双地域における精神保健福祉手帳所持者に対する生活実態調査を実施した。
さらに、本研究班全体の活動として、研究班に関わる現地支援者を対象とした支援者支援にかんする交流会(ワールド・カフェ方式により実施)を設定し、本研究の協力機関である被災地同士のネットワークづくりに向けた活動も実施した。加えて、インタビューにおいて抽出されたニーズにもとづき、本研究班全体の活動として、外部支援者による支援者支援にかんする検討会や現地支援者の交流会(ワールド・カフェ方式により実施)を設定し、本研究の協力機関である被災地同士のネットワークづくりに向けた活動も実施した。
結果と考察
震災から3年の経過する本年度においては、各サイトでのニーズはさらに多様化しており、本研究の各対象地区では、コンサルティング担当者による地域特性やニーズに応じた多様な活動が継続的に実施され、活動による成果や意義、課題点等が示された。
各サイトにおける定期的・継続的なコンサルテーションやスーパーバイズの実施、各地域・関係者のニーズに応じた研修会・交流会の実施や情報提供は、地域内外のネットワークの構築やケースマネジメントやアウトリーチ活動の実施において有用な学びになったとの声が現地支援者より確認された。また、定期的なフォーカスグループ・インタビューや被災地同士の横のネットワークづくりを目的とした交流会の実施などを通し、本研究班による活動が各地域における精神保健医療福祉システムの再構築の大きな一助となっていることが成果として示された。今後、本研究に関わる被災地の現地支援者や臨床チームとしての成長のみならず、コミュニティ全体として持続可能な支援体制を構築していくことが重要であり、今後、地域を含めた視点での支援活動の展開・定着、対外的な情報発信等などが課題として示されている。
精神保健福祉サービス事業所利用者に対する生活実態調査においては、仮設住宅での生活者や定期的な収入のない者、社会活動の機会の少ない者は精神的健康度が低いことや、客観的に被害が認定されづらいものの精神的健康度が低い一群がいることも確認された。今後、本研究により実施済みの、相双地域に精神保健手帳所持者に対する生活実態調査のデータの分析を含め、被災地における精神障害をもつ者の生活実態の全体像を把握していくことや、本研究班に関連する他の複数の市町村圏域もフィールドとして同様の調査を展開していくことも重要と考える。
結論
本研究の活動を通じ、地域のニーズに応じた継続的・定期的なコンサルティング・研修活動は、被災地域における現地支援者のケースマネジメントやアウトリーチ等の支援技術の向上や地域精神保健医療福祉システムの土台作りにおいて、有用なものであることが示された。本年度の活動により明らかになった知見にもとづいた支援活動の継続やニーズ調査等を通じたさらなる知見の蓄積等、被災地域における精神保健医療福祉システムの再構築に向けた中長期的な支援活動および研究活動の実施が必要である。
本研究による活動の記述は、東日本大震災被災地における復興や今後起こりうる大規模災害の備えとして、あるいは、我が国における経験を他国と共有するという点においても、有用な知見を与えるものである。

公開日・更新日

公開日
2014-07-17
更新日
2017-06-08

行政効果報告

文献番号
201325066C

収支報告書

文献番号
201325066Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
50,000,000円
(2)補助金確定額
50,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,532,065円
人件費・謝金 14,921,108円
旅費 3,867,570円
その他 13,141,595円
間接経費 11,538,000円
合計 50,000,338円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-06-08
更新日
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