病院情報システムのデータを利用した薬剤市販後調査の効率化に関する研究

文献情報

文献番号
201325063A
報告書区分
総括
研究課題名
病院情報システムのデータを利用した薬剤市販後調査の効率化に関する研究
課題番号
H25-医療-指定-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
木村 通男(国立大学法人 浜松医科大学 医学部附属病院 医療情報部)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 直樹(国立大学法人 九州大学 医学部附属病院 メディカル・インフォメーションセンター)
  • 村田 晃一郎(北里大学メディカルセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,050,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤市販後調査は、治験段階で検知できなかった副作用等の早期発見のために必要であるが、現状において主に次のような問題を抱えている。1)紙ベースの記入、EDCの場合でも診療録からの転記事項が多く記載者の負担や間違いも多い。2)紙ベース運用は、全体のプロセスの迅速性に欠ける。3)記載者、対象患者選択バイアスが生じる。4)全件調査が求められても、それが実施できていないことが多い。5)同期間の該当薬処方全体の母集団を定義できていない。このような問題点の解決をめざして、本研究は次項目を目的とする。1)病院情報システムのデータを用いて薬剤市販後副作用調査の調査票記入を簡便にするシステムの構築。2)調査票記載の適切な時期を病院情報システムにより記載者に知らせる機能の開発、全件調査の可能化。3)個々の報告書と報告書作成ソフトの分離化、各施設におけるIT機器操作の極小化、副作用報告、更に研究者主導臨床研究の簡便な実施。
研究方法
本年度は、まず、研究代表者、木村が提唱、開発に関わった厚生労働省標準的診療情報交換推進事業(以下、SS-MIX)の成果物であるSS-MIX標準化ストレージに蓄積された処方・検査結果・患者基本情報を用いて副作用報告書を簡便に作成するシステムを試作し運用した。更に、病院の処方オーダシステムを改変し報告書を書くべきタイミング(処方中止、退院、あるいは定時一斉)を医師に知らせる仕組みを試作し運用した。本研究は介入研究ではなく、実際の患者データは扱わなかったため、倫理的な配慮を特に必要としなった。
結果と考察
SS-MIX標準化ストレージのデータを用いた薬剤市販後副作用調査の調査票記入を簡便化システムの構築は、すでに試作が済んでいる。いままでは、処方(当該薬、併用薬、検体検査結果)は、医師あるいは製薬会社派遣のCRCの手作業入力であるため、このシステムによる記載の効率化は明らかである。ただし、有害事象は、さまざまな記述形式、また、病院情報システム側でも文字情報として以上の構想化がなされてないため、この部分はいままでと変わらない。今回は、ほぼ直線的な記述進行で作成できるものとして実現したが、各種有害事象報告書は、枝分かれにより求める記載内容が変わるものも多い。次年度は、このような分岐を扱うことができるように調査、開発を行う。一方、調査票記載の適切な時期を病院情報システムにより記載者に知らせる機能の開発については、浜松医大病院の病院情報システムで試作運用を実施した。投与の母集団を損なわないようにするには、記載のタイミングは、2通り考えられる。『ある時点で処方継続中の患者すべてとするか』または、『ある一定の期間内に処方が中止された患者すべてとするか』である。今年度は、後者の機能を作成した。SS-MIX標準化ストレージは、2013年6月時点において、全国で200以上の医療機関で稼働している。更に全国立大学病院への導入も決まった。これは、今回開発するものが利用される基盤はすでに、かなり広く分布していると言える。また、本研究では、設定した条件に該当する全投与患者を対象とできるため、母数団を把握することが可能となる。いままでの自発的報告ではわからなかったものであり、選択バイアスを減らすことにもなり、疫学的価値は大きいと考える。また、新薬で全数検査を求める場合が最近増えており、これに人手で対応することはかなり困難であるが、これを可能とするITソリューションと言える。
結論
本年度は、SS-MIX標準化ストレージから処方、検査結果を取りこみ市販後有害事象報告のその部分を簡便にするシステムを開発した。更に、全数報告をめざし該当する患者来院時に記載が求められる様に病院情報システムを改造した。次年度は、報告書記載が枝分かれを含む場合の対応、実際の運用の際に発見されるであろう問題点の抽出を目指す。SS-MIX標準化ストレージを稼働している医療機関は、すでに200以上となっている。これに加えて、全国立大学病院への導入も決まった。このような基盤状況により病院情報システムのデータを用いての薬剤市販後調査の電子化、簡便化、全数化、更に、臨床研究の支援を全国規模で推し進めることが可能となる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201325063Z