文献情報
文献番号
201325059A
報告書区分
総括
研究課題名
専門医の地域分布に関する研究
課題番号
H25-医療-指定-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小池 創一(東京大学 大学院医学系研究科 医療経営政策講座)
研究分担者(所属機関)
- 康永 秀生(東京大学 大学院医学系研究科 公共健康医学専攻 臨床疫学・経済学)
- 井出 博生(千葉大学 医学部附属病院 高齢社会医療政策研究部)
- 松本 正俊(広島大学 医歯薬保健学研究院 地域医療システム学講座)
- 河原 和夫(東京医科歯科大学大学院 政策科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、専門医の地域分布の現状と課題についての検討を既存統計資料等の分析を行うことを通じて、今後の専門医の構築に向けた検討に資することを目的としている。
研究方法
専門医へのアクセスと主たる診療科の状況、医療従事者の診療密度と患者アウトカムの関連および市区町村別平均所得と人口当たり病院医師数の関連、悪性腫瘍手術、分娩、および画像診断件数の地理的分布と集約度、在宅医療サービスの地理的検討、専門医分布の地理的特性に関する研究、専門医の必要数の推計に関する事例研究等に関し、既存統計やその他の利用可能なデータベースからの情報を施設あるいは市町村単位で連結し解析を行うとともに文献調査等を行うことで実施した。
結果と考察
専門医へのアクセスと主たる診療科に関する研究では、医師・歯科医師・薬剤師調査及び医療施設静態調査を用いて、小児科、産婦人科領域における医師・専門医の勤務の有無別、夜間診療体制別に、病院医療への運転時間によるアクセス時間・面積を算出、地図上に表記するとともに、医師の主たる診療科の変更状況について勤務種別の変更状況に着目して分析を行った。病院医療へのアクセスは、95%以上の人口が運転時間1時間以内でアクセスが可能となっているものの、地域によってはアクセスが必ずしも十分ではない地域も見られることが示された。
医療従事者の診療密度と患者アウトカムの関連および市区町村別平均所得と人口当たり病院医師数の関連に関しては、医療施設調査の病院票およびDPC データ調査研究班データを施設レベルで連結し、医療従事者の診療密度と患者アウトカムの関連を分析した。その結果、心臓血管外科手術に関しては、施設別年間手術件数が多いほど在院死亡率が有意に低いことが示された。急性膵炎に関しては、在院死亡率に対するロジスティック回帰分析の結果、患者レベル背景要因、病院種別を調整しても、消化器内科医師数/年間症例数と在院死亡率の有意な関連は認められなかった。成人市中肺炎に関しては、在院死亡率に対するロジスティック回帰の結果からは患者レベル背景要因をしても、百床あたり医師数・百床あたり看護師数のどちらも、在院死亡率と有意な関連を認めた。
悪性腫瘍手術、分娩、および画像診断件数の地理的分布と集約度の研究では、医療施設静態調査を用いて悪性腫瘍手術、分娩、画像診断に関して地理的分布と集約度について検討を行った。悪性腫瘍手術の件数については病院間格差が拡大と手術件数全体に占めるhigh volume 病院の比率が増大を認めた。分娩については、件数の施設間格差の縮小と、high volume施設の比率の増大を認めた。CT、MRI、上下部消化管内視鏡検査についても実施件数の施設間格差の拡大を認めたが、中小規模病院については人口過疎地であるほどCTと内視鏡の所有率が高い一方、病床規模を問わず過疎地の病院ほどこれら検査の撮影/実施件数が少ないことが明らかとなった。
在宅医療サービスの地理的検討では、医療施設静態調査データを市区町村別に集計・人口あたり件数等に単位化した上で、全国の地方間、首都圏の都県間でのサービス提供状況の地理的差異を検討したところ、地方間ではサービス提供量(中央値)には違いがあり、均てん化していないこと、さらにサービスの種類別に見ると、精神科訪問看護・指導などで特に普及が進んでいないことが明らかとなった。
専門医分布の地理的特性に関する研究では、医師・歯科医師・薬剤師調査、医療施設調査のデータを用いて全国市区町村の人口10 万人当たりの医師数を地図上に表記した。その結果北海道、東北、信越に医師密度が低いところが比較的多く見られた一方、大都市以外で医師密度が高いところは、大学医学部や医科大学が設置された人口が少ない市区町村であることを明らかとした。
専門医の必要数の推計に関する事例研究では、アメリカ、ドイツ、イギリスを対象に、専門医制度に係る論文、調査報告書、政府機関等の公開情報から、専門医数の推計方法を整理したところ、ドイツについては、2012 年の医療供給構造法の施行後、連邦共同委員会の保険医需要計画ガイドラインに基づき、医師1 人あたりの住民数に基づく専門医の必要数に地域の年齢構成等を医療需要の補正方法として取り入れていることが明らかとなった。
医療従事者の診療密度と患者アウトカムの関連および市区町村別平均所得と人口当たり病院医師数の関連に関しては、医療施設調査の病院票およびDPC データ調査研究班データを施設レベルで連結し、医療従事者の診療密度と患者アウトカムの関連を分析した。その結果、心臓血管外科手術に関しては、施設別年間手術件数が多いほど在院死亡率が有意に低いことが示された。急性膵炎に関しては、在院死亡率に対するロジスティック回帰分析の結果、患者レベル背景要因、病院種別を調整しても、消化器内科医師数/年間症例数と在院死亡率の有意な関連は認められなかった。成人市中肺炎に関しては、在院死亡率に対するロジスティック回帰の結果からは患者レベル背景要因をしても、百床あたり医師数・百床あたり看護師数のどちらも、在院死亡率と有意な関連を認めた。
悪性腫瘍手術、分娩、および画像診断件数の地理的分布と集約度の研究では、医療施設静態調査を用いて悪性腫瘍手術、分娩、画像診断に関して地理的分布と集約度について検討を行った。悪性腫瘍手術の件数については病院間格差が拡大と手術件数全体に占めるhigh volume 病院の比率が増大を認めた。分娩については、件数の施設間格差の縮小と、high volume施設の比率の増大を認めた。CT、MRI、上下部消化管内視鏡検査についても実施件数の施設間格差の拡大を認めたが、中小規模病院については人口過疎地であるほどCTと内視鏡の所有率が高い一方、病床規模を問わず過疎地の病院ほどこれら検査の撮影/実施件数が少ないことが明らかとなった。
在宅医療サービスの地理的検討では、医療施設静態調査データを市区町村別に集計・人口あたり件数等に単位化した上で、全国の地方間、首都圏の都県間でのサービス提供状況の地理的差異を検討したところ、地方間ではサービス提供量(中央値)には違いがあり、均てん化していないこと、さらにサービスの種類別に見ると、精神科訪問看護・指導などで特に普及が進んでいないことが明らかとなった。
専門医分布の地理的特性に関する研究では、医師・歯科医師・薬剤師調査、医療施設調査のデータを用いて全国市区町村の人口10 万人当たりの医師数を地図上に表記した。その結果北海道、東北、信越に医師密度が低いところが比較的多く見られた一方、大都市以外で医師密度が高いところは、大学医学部や医科大学が設置された人口が少ない市区町村であることを明らかとした。
専門医の必要数の推計に関する事例研究では、アメリカ、ドイツ、イギリスを対象に、専門医制度に係る論文、調査報告書、政府機関等の公開情報から、専門医数の推計方法を整理したところ、ドイツについては、2012 年の医療供給構造法の施行後、連邦共同委員会の保険医需要計画ガイドラインに基づき、医師1 人あたりの住民数に基づく専門医の必要数に地域の年齢構成等を医療需要の補正方法として取り入れていることが明らかとなった。
結論
新たな専門医に関する仕組みの検討にあたっては、まずは現状の地域単位での各専門領域の専門医の分布やサービス提供の状況等を把握・分析することが重要であり、本研究により専門医の分布や専門医以外を含めた地域における医療提供の現状の一端について明らかすることが出来たことは、今後の新たな専門医制度の構築に当たって検討を行う上での基礎資料として活用されるのみならず、医療計画の策定の際にも活用できることと期待される。
公開日・更新日
公開日
2015-06-09
更新日
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