歯科技工の技術革新に対応した管理体制と専門家養成に関する研究

文献情報

文献番号
201325058A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科技工の技術革新に対応した管理体制と専門家養成に関する研究
課題番号
H25-医療-指定-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 秀夫(新潟大学 大学院歯学総合研究科 口腔生命科学専攻 予防歯科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤博信(福岡歯科大学 歯学部 歯科補綴学 )
  • 末瀬一彦(大阪歯科大学歯科技工士専門学校)
  • 阿部   智(帝京大学 医学部  衛生学公衆衛生学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,トレーサビリティ指針の対象となる歯科技工の海外委託に関するトレーサビリティ指針の遵守状況とトレーサビリティ指針に指定される帳票(「補綴物管理票」等)の内容の評価と検討を行うために,海外委託に感心があると推察された歯科医師群を対象として,トレーサビリティ指針の遵守状況など歯科補綴物の委託(外注)に関する現状を把握すること,加えて,アナログからデジタルへ歯科技工が大きく変化する中,歯科技工士の養成課程に必要な教育カリキュラムのあり方を検討するに当たり,歯科技工士学校での教育実態を把握することも目的とした。
研究方法
海外技工にかかわりがある国内歯科技工所のホームページに公開されている1060 歯科診療所の歯科医師を対象に,「歯科医療における歯科補綴物等のトレーサビリティに関する指針」の認知や「補綴物管理票」等の帳票の使用状況,患者への情報提供の有無などについて無記名・自記式郵送アンケート調査を実施した。発送数は1060通,未着数(転居等で)26通,回収数が541通(52.3%)であった。また,某歯科技工士学校で補綴物の製作委託(外部委託)に関わる教育実態について調査を行った。
結果と考察
厚生労働省から示されている「歯科医療における歯科補綴物等のトレーサビリティに関する指針」については24.3%と4 人に1 人程度しか知られていない結果で,指針の認知レベルは低かった。年代別では70 歳代が34.8%と最も高く,30 歳代の16.2%が最も低かった。医院が歯科補綴物製作を外部に委託する際,取り引きする歯科技工士の資格免許および歯科技工所の保健所への届け出についての確認が必要であるが,対象者の 6 割しか確認していなかった。医院から海外の歯科技工所へ歯科補綴物を発注する際に,「補綴物管理票」等の帳票使用が必要であるが,「補綴物管理票」の使用状況は1 割程度にとどまっていた。しかしながら,対象集団の6 割超が「海外へは発注していない」と回答しているので,海外委託件数に占める割合はもっと高率となるが,それでも25%程度と見積もられた。歯科補綴物製作の外部委託に関して,内容を把握できる情報を文書にて患者へ配布している対象者は3 割程度に留まっていた。患者に提示している内容の主なものとしては,「補綴物維持管理」に関してが31 件,「装着物の取り扱い・保証等」に関してが13 件であった。歯科技工所から補綴物等が納品される時に作業工程,材料の組成やロット番号等の情報提供を受けている内容あるいは情報提供を指示している内容については「ジルコニアフレームのロット番号」が22 件,「作業責任者/担当者名」が15 件,「作業工程」11 件,「患者の氏名」が3 件,おのおの2 件が「性別」と「年齢」,「クリアラ_ンス」「マージン」であった。歯科技工所が海外へ委託(外注)する場合,8 割が歯科医院に対して事前承認を得ており,その方法として,90%強が紙媒体を採っていた。海外での歯科補綴物製作の「作業行程」に関して7 割弱(67.2%)が理解していた。歯科補綴物の委託(外注)件数が多い程,理解している割合は高くなる傾向であった。海外での歯科補綴物製作に使用される「材料」に関しては, 8 割以上が理解していた。海外で製作された歯科補綴物について, 3割弱が患者に対して説明をおこなっているが,4 割弱は説明していないという結果であった。海外で製作された歯科補綴物に対しては,8 割強が保証していると回答し,1 日あたりの来院患者数が多いほど,保証している割合は高くなる傾向であった(30 名以上で9 割) 。
 補綴物の製作委託(外部委託)に関わる教育は「歯科技工学概論」(50 時間),「関係法規」(15 時間)においてなされていた。「歯科技工学概論」では歯科技工士の役割,歯科技工士の管理と運営,また「関係法規」では歯科技工士法,歯科技工士の業務,歯科技工所の管理などで補綴物の製作委託について教授されていた。
結論
今回の調査からは「海外での補綴物製作」に関して歯科医師側の作業工程や材料に対する認知度は決して高いとは言えず,また,患者に対する説明,承諾に関しても約半数は実施されていないのが現状である。今後,トレーサビリティの具体的推進方法について検討するために,保証書,技工伝票,技工指示書等,具体的なサンプルとともに,関連学会,歯科医師会,歯科技工士会,メーカー等関係者への周知,ディスカッションが必要と結論づけることができる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201325058C

成果

専門的・学術的観点からの成果
トレーサビリティ指針の認知度の低さや患者に対する説明,承諾に関して約半数が実施されていない現状が把握できた。歯科技工の海外委託に関するトレーサビリティ指針の遵守状況とそれに指定される帳票(「補綴物管理票」等)を有効で実用的なものとするために,ガイドラインなどで提示することが課題にあげられた。
臨床的観点からの成果
歯科医師側の作業工程や材料に対する認知度は決して高いとはいえず,また,患者に対する説明,承諾に関しても約半数は実施されていない現状であった。なにより,「歯科医療における補綴物等のトレーサビリティに関する指針」(平成23 年6 月厚生労働省)についての認知度は24.3%と極めて低く,患者に対する説明責任という点から問題が大きいことがわかった。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
取扱業者・歯科技工所の基準,歯科技工材料に関わる国際規格化,輸入される補綴物に対する検査体制など海外技工に関わる法的検討が必要であり,さらに,保証書,技工伝票,技工指示書等,具体的なサンプルを用いて,トレーサビリティの具体的推進方法についても関連学会,歯科医師会,歯科技工士会,メーカー等関係者への周知と議論を通して今後ガイドライン等の開発が必要である。
その他のインパクト
歯科技工士養成機関で,補綴物の製作委託(外部委託)に関わる教育カリキュラムは存在するが,歯科医師教育課程での検討も必要であることがわかった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
2018-08-16

収支報告書

文献番号
201325058Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,500,000円
(2)補助金確定額
2,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 407,618円
人件費・謝金 0円
旅費 23,940円
その他 1,668,442円
間接経費 400,000円
合計 2,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-08-16
更新日
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