文献情報
文献番号
201325045A
報告書区分
総括
研究課題名
看護師等の高度な臨床実践能力の評価及び向上に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-医療-指定-039
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
福井 次矢(聖路加国際病院 )
研究分担者(所属機関)
- 大滝 純司(北海道大学大学院医学研究科医学教育推進センター教育研究開発部)
- 中村 惠子(札幌市立大学)
- 山内 豊明(名古屋大学大学院医学系研究科)
- 高橋 久美子(日本医科大学武蔵小杉病院)
- 洪 愛子(公益財団法人日本看護協会)
- 高橋 理(聖ルカ・ライフサイエンス研究所臨床疫学センター)
- 池ノ上 克(宮崎大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,281,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
看護師が患者の安全性を確保しながら特定の医行為(特定行為)を含めた高度な看護実践を行うために必要な能力とそれらの修得方法、評価方法を明示し、周産期のチーム医療の中で助産師が主体となる分娩を実践するための医師とのより良い連携体制を明らかにする。
研究方法
海外の研究者との面談、文献検索、医師臨床研修制度における基幹型研修病院や「特定看護師(仮称)養成調査試行事業」で指定された課程の修了者・指導医師・施設などを対象としたアンケート調査、継続研修を受けた研修者を対象とした自己評価などを行い、収集したデータを解析した。
助産師による会陰縫合術・局所麻酔に関する調査では、研究者が所属する施設のデータを前方視的に収集・解析した。
助産師による会陰縫合術・局所麻酔に関する調査では、研究者が所属する施設のデータを前方視的に収集・解析した。
結果と考察
1.オランダでは、Nurse Practitioner(NP)の修了認定は養成機関ごとに行われていて、全国統一的な試験・評価基準は存在しない。米国でも、高度な臨床実践能力に関するNPの修了認定は、個別の教育機関によって行われていて、OSCEの標準化も十分ではない。
2.過去5年間のNP教育プログラムの有効性や費用効果分析に関する論文では、Simulation-based programやe-learning、case management program、process oriented trainingなどの有効性、NP制度導入の効率性が示されていた。
3.基幹型臨床研修病院のアンケート調査では、137病院中、プログラムがある病院は38で、41行為中平均14行為がプログラムとして設定されていた。最も多かったのは「経口・経鼻気管内挿管の実施」、最も少なかったのは「心嚢ドレナージ」と「褥瘡・慢性創傷における腐骨除去」であった。研修方法は、講義、シミュレーション、実践などで、最も多かったのは「指導監督下で患者へ実施」であった。
4.「人工呼吸器装着中の患者に対するウィーニングの実施」のOSCEを開発し、専門看護師(CNS)と調査試行事業養成課程の修了者5名を対象として試行し、妥当性・信頼性を確認した。OSCEに関する詳細な文献検索と講演会を開催するとともに、前年度に3分野(救急、皮膚・排泄ケア、感染管理)18名を対象として行ったOSCEの記録ビデオを用いて構造分析を行い、フィジカルアセスメント能力を測る項目、臨床推論能力を測る項目に高く配点する妥当性の高い評価表改良版を作成した。
5.看護師特定能力養成調査事業の修士課程修了者が、臨床業務の中で医行為を自律的に行えるまでに要する期間は、薬剤投与に関するもので平均3~8ヶ月、それ以外の処置・医療機器類の操作に関するもので1~7ヶ月であった。
6.同修士課程修了者の所属については、診療科64%、看護部36%で、希望するOJT研修期間は2年間が最も多かった。OJT研修としては、プライマリケア領域では「医師の回診に同行」が、クリティカルケア領域では「研修医と一緒に研修を受ける」、「医師の回診に同行」などが多く、OJT研修で不足していると感じているのは、プライマリケア領域、クリティカルケア領域に共通して「画像の初期評価」、「臨床推論のトレーニング」などであった。「臨床薬理学講座」受講後の調査では、感染症に用いる薬剤、抗凝固療法・降圧薬の理解が困難であり、「アセスメント」、「病態機能学」、「臨床薬理学」、「マネジメント」のニーズが高く、「疾病予防」、「医療倫理」などのニーズが低かった。高齢者総合診療に関する継続研修は、受講生にとって研修目的が明確になり、満足度が高かった。
7.助産師主体の分娩管理を行った218件中、148件(67.9%)で助産師による会陰裂傷縫合術が行われていた。114件(74.2%)は助産師がすべての縫合を行い、42件(36.8%)は医師の立会なしに縫合が行われていた。会陰裂傷縫合術に伴う合併症の発生はなく、局所麻酔に伴う合併症の発生もなかった。
2.過去5年間のNP教育プログラムの有効性や費用効果分析に関する論文では、Simulation-based programやe-learning、case management program、process oriented trainingなどの有効性、NP制度導入の効率性が示されていた。
3.基幹型臨床研修病院のアンケート調査では、137病院中、プログラムがある病院は38で、41行為中平均14行為がプログラムとして設定されていた。最も多かったのは「経口・経鼻気管内挿管の実施」、最も少なかったのは「心嚢ドレナージ」と「褥瘡・慢性創傷における腐骨除去」であった。研修方法は、講義、シミュレーション、実践などで、最も多かったのは「指導監督下で患者へ実施」であった。
4.「人工呼吸器装着中の患者に対するウィーニングの実施」のOSCEを開発し、専門看護師(CNS)と調査試行事業養成課程の修了者5名を対象として試行し、妥当性・信頼性を確認した。OSCEに関する詳細な文献検索と講演会を開催するとともに、前年度に3分野(救急、皮膚・排泄ケア、感染管理)18名を対象として行ったOSCEの記録ビデオを用いて構造分析を行い、フィジカルアセスメント能力を測る項目、臨床推論能力を測る項目に高く配点する妥当性の高い評価表改良版を作成した。
5.看護師特定能力養成調査事業の修士課程修了者が、臨床業務の中で医行為を自律的に行えるまでに要する期間は、薬剤投与に関するもので平均3~8ヶ月、それ以外の処置・医療機器類の操作に関するもので1~7ヶ月であった。
6.同修士課程修了者の所属については、診療科64%、看護部36%で、希望するOJT研修期間は2年間が最も多かった。OJT研修としては、プライマリケア領域では「医師の回診に同行」が、クリティカルケア領域では「研修医と一緒に研修を受ける」、「医師の回診に同行」などが多く、OJT研修で不足していると感じているのは、プライマリケア領域、クリティカルケア領域に共通して「画像の初期評価」、「臨床推論のトレーニング」などであった。「臨床薬理学講座」受講後の調査では、感染症に用いる薬剤、抗凝固療法・降圧薬の理解が困難であり、「アセスメント」、「病態機能学」、「臨床薬理学」、「マネジメント」のニーズが高く、「疾病予防」、「医療倫理」などのニーズが低かった。高齢者総合診療に関する継続研修は、受講生にとって研修目的が明確になり、満足度が高かった。
7.助産師主体の分娩管理を行った218件中、148件(67.9%)で助産師による会陰裂傷縫合術が行われていた。114件(74.2%)は助産師がすべての縫合を行い、42件(36.8%)は医師の立会なしに縫合が行われていた。会陰裂傷縫合術に伴う合併症の発生はなく、局所麻酔に伴う合併症の発生もなかった。
結論
研修医の医行為研修に関する研修病院での経験が、今後「特定行為に係る看護師の研修制度」を創設するうえで、大いに役立つ可能性が高い。
「特定行為に係る看護師の研修制度」における特定行為(案)のかなりのものは、質の高いOSCEでの評価が可能である。
高度臨床実践に係る指定研修を終えた修了生の勤務状況や継続研修の状況を踏まえて、「特定行為に係る看護師の研修制度」の効果的なカリキュラムの作成が可能となった。
助産師主体の分娩管理に関しては、会陰裂傷縫合術とそのための局所麻酔は安全に合併症なく行われているが、さらに一般化するためには、教育体制の整備が必要である。
「特定行為に係る看護師の研修制度」における特定行為(案)のかなりのものは、質の高いOSCEでの評価が可能である。
高度臨床実践に係る指定研修を終えた修了生の勤務状況や継続研修の状況を踏まえて、「特定行為に係る看護師の研修制度」の効果的なカリキュラムの作成が可能となった。
助産師主体の分娩管理に関しては、会陰裂傷縫合術とそのための局所麻酔は安全に合併症なく行われているが、さらに一般化するためには、教育体制の整備が必要である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-09
更新日
-