感染制御システムのさらなる向上を目指す研究/特に中小医療施設を対象として

文献情報

文献番号
201325040A
報告書区分
総括
研究課題名
感染制御システムのさらなる向上を目指す研究/特に中小医療施設を対象として
課題番号
H25-医療-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小林 寛伊(東京医療保健大学 大学院 医療保健学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 森屋 恭爾(東京大学 医学部 感染制御学講座)
  • 賀来 満夫(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 大久保 憲(東京医療保健大学 医療保健学部)
  • 岩田 敏(慶應義塾大学 医学部)
  • 緒方 剛(茨城県筑西保健所)
  • 村上 啓雄(岐阜大学医学部附属病院 生体支援センター)
  • 渡會 睦子(東京医療保健大学 医療保健学部)
  • 菅原 えりさ(東京医療保健大学 大学院 医療保健学研究科)
  • 吉田 理香(東京医療保健大学 大学院 医療保健学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,270,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 厚生労働省院内感染対策中央会議の提言に基づき、継続的に研究してきた項目に検討を重ね、また新たな研究、実施項目も加え、以下の8項目 ①地域支援ネットワーク構築の現状分析と今後のより効果的支援策に関する提言 ②中小医療施設への訪問ラウンドと合同カンファレンスによる介入 ③インフェクション・コントロール・チーム(ICT)ラウンド時の介入項目リストIntervention Item List (IIL )2010 年度版の活用実績評価と必要に応じた改訂 ④中小病院/診療所を対象としたガイドライン及びマニュアルとアウトブレイク早期特定策の改訂 ⑤医療機関と保健所との協力体制 ⑥Japanese Nosocomial Infections Surveillance(JANIS)の評価と提案 ⑦インフェクション・コントロール・ナースおよびインフェクション・コントロール・ドクターの日常業務必要時間に基づく必要人数の算定 ⑧院内感染対策講習会DVD および手引きの作成と全国配布を、総合的に研究、実施することで、特に中小医療施設を対象とし、感染制御システムの更なる向上を目的とした。
研究方法
①は、感染防止対策加算2 施設の現状分析を行い、総務省行政評価局の勧告に基づく現場改善策を提示、更にはモデルケースとして岐阜県内感染防止対策加算算定全施設におけるデータ月例収集とフィードバックによる感染制御レベル向上への取り組みとそのアウトカムを紹介した。②は、東京医療保健大学大学院 感染制御実践看護学講座のカリキュラムである自施設実習において、指導者による訪問ラウンド、ラウンド後のカンファレンスを行った。また「建設設備および環境的視点からみる自施設訪問ラウンドチェック項目(案)」を考案した。③は、2 年に亘る調査の結果から焦点を絞り、チェック項目の具体的な改善点を検討した。④は、“中小病院/ 診療所を対象にした医療関連感染制御策指針(ガイドライン)2009”“小規模病院/有床診療所施設内指針(マニュアル)2009―単純かつ効果的マニュアルの1 例―”“無床診療所施設内指針(マニュアル)2009―単純かつ効果的マニュアルの1 例―”の見直し、改訂による2013 年度版の作成、更には、アウトブレイク発生時の特定方法ならびに原因追求に関する指針案の改善改定をし、アウトブレイク発生時の特定方法ならびに一時的対応に関する指針案-Ⅳ― 肺結核感染対策 ― (感染症治療には言及せず)2013 年度案 2014 年4 月を作成した。⑤は、院内感染管理についての保健所の中小病院などへの支援・連携指針 2013 (案)の作成をした。⑥は、公開されているJANIS参加施設を対象に行われているサーベイランス事業の実践上の課題を抽出し、今後のあり方に関する提言を行った。⑦は、過去5年間に我が国で公表されているICNの必要人数に関する調査結果と、今年に行った感染制御実践看護学講座の受講生を対象としたデルファイ法に基づく調査の結果から、約250床に1名が必要であると算出した。⑧は、院内感染対策講習会のDVDを作成し、更に、感染制御にあまり馴染のない医療施設上層部の方でも研修の内容を知ることができるよう、DVD の内容を紹介し注意点をまとめた手引きを作成し、全都道府県に配布した。
結果と考察
 感染制御策を専門とする先進的な研究者に分担、協力を仰ぎ行われた当研究は、8つもの施策を総合的に関連性を持たせてまとめあげられ、1年目は特に新設された感染防止対策加算の取得状況と効果を調査し、同加算が感染制御の質向上に効果を示していることがわかった。わが国の中小医療施設では、感染制御を専門とする職員の配置ができず組織化も進まなかった現状があり、この総合的研究はそのような状況下であっても感染制御が実践、推進できることを目的として成果を挙げてきた。この加算の新設は、これらの取り組みが診療報酬として評価されたことにも等しく、感染制御システムは大きく向上したといえる。
2年目はこれらの成果を基に、システム化した感染制御の実質的な内容と課題について追及していく必要がある。更には、システムの構築に必要とされる感染制御を専門とする職員(ICN及びICD)の必要人数について、そして、日常の感染制御活動に直接的に関わるラウンド時の介入項目リストの改訂についても継続的に検討を試みる。
結論
8項目にも亘る幅広い視野に立った施策を効果的に組み合わせた本研究は、国内の82%にも及ぶ中小医療施設を意識した施策を中心としており、感染制御システムの更なる向上に資すること多大であり、2012年より始まった感染防止対策加算は、それらの研究成果が結実したものといえる。これらの総合的研究は日本における医療安全、患者サービスに大きく貢献したものと確信する。

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201325040Z