重篤小児集約拠点にかかる小児救急医療体制のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201325036A
報告書区分
総括
研究課題名
重篤小児集約拠点にかかる小児救急医療体制のあり方に関する研究
課題番号
H25-医療-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
阪井 裕一(国立成育医療研究センター 総合診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 直樹(東京都立小児総合医療センター 救命・集中治療部 )
  • 松本 尚(日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター )
  • 岩中 督 (東京大学大学院医学研究科)
  • 中川 聡 (国立成育医療研究センター  手術・集中治療部 )
  • 前田貢作(日本自治医科大学  外科学講座小児外科学部門)
  • 田口智章(九州大学医学研究院・小児外科      )
  • 太田 邦雄(金沢大学大学院 )
  • 五十嵐 隆(国立成育医療研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
PICU(小児集中治療室)はじめ重篤小児集約拠点のあり方について、救命救急事業を包括した姿として政策提言し、わが国の重篤な小児患者の救命率向上に貢献することを目的とする。次に示す5研究課題を設定し、既存の関連諸学会などの調査を継承・発展させることを狙った。
研究方法
(1)重篤小児集約拠点(小児救命救急センター・PICU等)における人的医療資源要件と計画的養成・配置にかかる研究 (清水直樹)①PICU・小児救命救急センター等の施設実績検証と認定・評価のあり方:各地の既存・新設予定のPICUはじめ、小児救命救急センター・小児専用病床などの厚生労働省事業や、東京都こども救命センターなど、自治体事業の救急応需実績と転帰等を先行研究に継続して検証した。東京都福祉保健局ならびに日本集中治療医学会小児集中治療委員会の協力も得た。②救命救急センター・特定集中治療室等を重篤小児集約拠点とするための要件:重篤小児集約拠点として必要な症例数の閾値に関する議論を行った。 調査手法は聞取調査・アンケート調査・症例台帳等からの疫学的分析等によった。(2)重篤小児集約拠点における物的医療資源と特殊治療機器(小児麻酔術後管理等)の計画的開発・配置にかかる研究(中川 聡)日本の小児重症患者の診療の実態を調べるために、DPCデータベースから2011年にDPC参加病院で人工呼吸が行われた15歳未満の小児患者を抽出し、これらの患者の転帰(生死)と、それぞれの患者での新生児特定集中治療室管理料、総合周産期特定集中治療室管理料、特定集中治療室管理料、救命救急入院料の算定の有無を調査した。(3)ヘリコプター等による緊急患者搬送体制と重篤小児集約拠点にかかる研究(松本 尚)重篤小児患者のヘリコプター搬送について清水分担研究データを用い、単位救命救急センターならびに単位ドクターヘリあたりの総人口、年少人口、面積等を地域毎に検討を行った。(4)重篤小児集約拠点未設置地域における拠点設置にむけた医療政策にかかる研究(太田邦雄)清水分担研究データを用い、単位PICU病床あたりの総人口、年少人口、総面積等を地域毎に検討を行った。(5) 小児外科手術の実態にかかる研究(前田貢作、田口智章、岩中 督、五十嵐 隆)National Clinical Database (NCD)に登録された手術登録票のデータを用いて、15歳以下の小児患者のデータを抽出し、小児外科専門医の外科治療における関与度や専門施設において手術された割合を検討した。このデータを集計し、小児診療に特化したNCDの2階建て部分を構築して、より緻密な分析が出来る基盤を形成した。
結果と考察
わが国のPICU病床数(特定集中治療室管理料を算定している病床数)は178床(うち小児特定集中治療管理料算定は12床)になり、各PICUの診療の体制、質を解析し、重篤な小児患者に対する至適な診療体制を創ることが小児医療の大きな課題である。年間症例数500例を越えるユニット、10床を超える規模のユニットにおいて治療成績が安定してくること、過半数のユニットが目標として10床以上のPICUを想定している現状に鑑みると、欧米で診療の質を保つ年間1000-1500例を診療できるユニット(20-30床のPICU)には遠いが、今後わが国のPICUは10床、年間症例数500例を基準ラインとして目標を設定するのが妥当であろう。規模よりもむしろ重要なのは人で、集中治療専門医、薬剤師、臨床工学技士の乏しい現状は、人材育成の重要性を強く示唆している。ドクターヘリのような搬送手段の重要性を考察し、ドクターヘリとPICUの連携を想定することも次年度の課題である。PICU「未設置」地域の解決策を提示するうえでも、ドクターヘリとの連携は重要である。一方で、2011年度は9,120人の人工呼吸患者がPICU対象であったと推定されたが、その61%が一般病棟で管理され、しかも死亡率の高い緊急入院患者の65%が一般病棟で管理されていた。この原因は、PICUの病床数不足だけではなく、重篤な小児患者の集約化が充分ではにことにあると推察される。小児外科疾患に関しては、新生児外科疾患は集約が進んでいることが明らかになったが、乳幼児期以降の小児外科症例、外傷症例については今後の課題である。集約化を進めるためには、その根拠となる「症例数の多い施設の方が治療成績がよい」というデータを示す必要がある
結論
わが国のPICU、小児人工呼吸患者の管理体制、小児外科手術の現状と課題が明らかとなった。これらの知見を基に、欧米とは異なる「広く薄い」わが国の小児医療体制の中で今後どのように重篤小児患者の集約化を進めてゆけばよいのか、次年度の重篤小児患者の集約化に関する提言につなげる議論の基盤ができたと考える。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201325036Z