医療情報と法:医療サービス向上に向けた患者情報の利用をめぐる法的課題の研究

文献情報

文献番号
201325028A
報告書区分
総括
研究課題名
医療情報と法:医療サービス向上に向けた患者情報の利用をめぐる法的課題の研究
課題番号
H24-医療-一般-029
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岩田 太(上智大学 法学部国際関係法学科)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 智晶(東京大学 公共政策学連携研究部)
  • 溜箭 将之(立教大学 法学部)
  • 畑中 綾子(東京大学 政策ビジョン研究センター/首都大学東京 都市教養学部法学系)
  • 井上 悠輔(東京大学 医科学研究所)
  • 土屋 裕子(立教大学 法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,825,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 畑中綾子 所属機関および職名変更 旧)東京大学 政策ビジョン研究センター 特任研究員 新)首都大学東京 都市教養学部法学系 助教 変更年月日)平成25年10月1日

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,今後日本で喫緊な対応が求められる医療情報の保護法制の見直し作業を見据え,医療サービスの質の向上と発展を目指した医療情報の利活用を促進するための法的論点の洗い出しを行い,そして,あるべき保護法制策定に必須の,諸外国についての基本的資料の提供を目指した.そのため,医療情報の保護と利活用をめぐって,合衆国などの諸外国における制度の全体像および最新動向を整理し,具体的な論点を明確化することを目標としてきた.
研究方法
本研究では,医療情報の利活用の促進を支援するための保護法制という視覚を意識しつつ,以下の2つの観点から分析を行った.第1は,医療情報に特化したHIPAA 法プライヴァシー規則を持つ合衆国の現状および最新動向を中心としつつ,他の英米法諸国との比較も念頭に置きながら,医療情報の保護法制および実態に関する文献研究を可能な限り網羅的に検討した(平成24年度).第2は,第1 の文献調査などから明らかになった疑問点を解消するべく実態について実地調査を行い,運用実態の正確な把握に努めた(平成25年度).以上2つの検討から,医学研究場面も十分射程に入れた,日本における医療情報の保護法制の見直しに資する諸外国の保護法制や最新の論議に関する基礎的な資料の提供を目指した.
結果と考察
研究結果: 初(平成24年)度に,医療情報に特化したHIPAA 法プライヴァシー規則を持つ合衆国の現状および最新動向を中心としつつ,他の英米法諸国との比較も念頭に置きながら,医療情報の保護法制および実態に関して主として文献研究によりながら研究を行い,第2(平成25)年度には,それらを前提に実態調査を行い,医学研究場面も十分射程に入れた,日本における医療情報の保護法制の見直しに資する諸外国の保護法制や最新の論議に関する基礎的な資料の提供を目指した.初年度の文献調査においては,合衆国およびEUにおける医療情報の利活用をめぐる体制整備に関する最新の動向については順調に研究を進めてきた.成果の活用に関して,「社会保障分野サブワーキンググループ及び医療機関等における個人情報保護のあり方に関する検討会」および担当部局(政策統括官付情報政策担当参事官室)への情報提供を,同検討会の作業部会のメンバーである佐藤智晶助教(研究分担者)などを通じて継続的に行ってきた.なお同記検討会は,医療情報の利活用をめぐる報告書(「医療等分野における情報の利活用と保護のための環境整備のあり方に関する報告書」)をまとめている.

結論
本研究のこれまで2年度,医療情報の利活用のために求められる体制整備,また実態運用での論点の理解の深化を目指して研究を進め,近い将来に予定される医療情報の利活用の体制整備の政策実現の際に必要とされる基礎資料の充実を目指してきたが,その成果からも医療情報の利活用をめぐる欧米の最新動向が一定程度明らかになったと思われる.それは一言でいえば,医療情報を含めた利活用であり,その体制整備の必要性であった.本研究班においては,それに必要となる,法整備のあり方に関する課題提示や基礎的な資料の提供も含めて総合的分析を進めた.

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201325028B
報告書区分
総合
研究課題名
医療情報と法:医療サービス向上に向けた患者情報の利用をめぐる法的課題の研究
課題番号
H24-医療-一般-029
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岩田 太(上智大学 法学部国際関係法学科)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 智晶(東京大学 公共政策学連携研究部)
  • 溜箭 将之(立教大学 法学部)
  • 畑中 綾子(東京大学 政策ビジョン研究センター / 首都大学東京 都市教養学部法学系)
  • 井上 悠輔(東京大学 医科学研究所)
  • 土屋 裕子(立教大学 法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 畑中綾子 所属機関および職名変更 旧)東京大学 政策ビジョン研究センター 特任研究員 新)首都大学東京 都市教養学部法学系 助教 変更年月日)平成25年10月1日

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,今後日本で喫緊な対応が求められる医療情報の保護法制の見直し作業を見据え,医療サービスの質の向上と発展を目指した医療情報の利活用を促進するための法的論点の洗い出しを行い,そして,あるべき保護法制策定に必須の,諸外国についての基本的資料の提供を目指すものである.そのため,医療情報の保護と利活用をめぐって,合衆国などの諸外国における制度の全体像および最新動向を整理し,具体的な論点を明確化することを目標とした.
研究方法
研究計画に従い,医療情報の利活用の促進を支援するための保護法制という視覚を意識しつつ,以下の2つの観点から分析を行った.第1は,医療情報に特化したHIPAA 法プライヴァシー規則を持つ合衆国の現状および最新動向を中心としつつ,他の英米法諸国との比較も念頭に置きながら,医療情報の保護法制および実態に関する文献研究を可能な限り網羅的に検討してきた(平成24年度).第2は,第1の文献調査などから明らかになった疑問点を解消するべく実態について実地調査を行い,運用実態の正確な把握に努めた(平成25年度).以上の2つの検討から,医学研究場面も十分射程に入れた,日本における医療情報の保護法制の見直しに資する諸外国の保護法制や最新の論議に関する基礎的な資料の提供を目指した.
結果と考察
初(H24)年度には医療情報の利活用をめぐる諸外国の最新の状況について集中的に文献調査を行った.特に合衆国におけるHIPPA法をめぐる最新の議論に関する分析,またOECDなどでの議論を中心に研究した.初年度の調査として行ったのは,まず合衆国については,匿名化をめぐる議論の動向として,(1)最近の利用促進のための法改正の概要(ARRA&HITEC),(2)2003年の規則改正時における懸念,(3)近年の批判と改革案(個人再特定の危険),(4)連邦健康保健省による新ガイダンス,などである.また欧州の議論については,旧データ保護指令から新データ保護規則制定の動向に焦点を当てつつ,例えば,以下のような論点を射程に入れた研究を行った.(1)欧州連合における医療分野の動き(臨床試験、医療機器でも指令から規則制定の動き);(2)新規則(案)の特徴として,医療情報の定義付け、診療関連目的の利用や研究目的の利用については利用禁止の例外規定を拡大、違反行為の通知公表などの制裁規制も強化;(3)匿名化方法や国際的な医療情報流通に向けた議論,である.
H25年度には,これらの研究過程で浮かんできた疑問点など現地の専門家などに確認するなど実態的な状況の正確な把握を行うとともに,国内外の最新動向についても確認し,医療情報の利活用に対する法整備のあり方に関する課題の提示も含めて総合的分析を進めてきた.具体的には,以下のような調査を行った.(Ⅰ)米欧における医療情報法制をめぐる最新の議論,(Ⅱ)米欧の個人情報保護のアプローチの比較からの日本における情報の利活用の在り方の分析,(Ⅲ)スウェーデンにおける医療情報保護法制の全体像についての紹介,(Ⅳ)ビッグデータ,クラウド環境の整備などの急速な進展下における個人情報保護と利活用の意義の分析,(Ⅴ)研究における偶発的発見をめぐる現況確認,(Ⅵ)死者の情報に関する問題の分析,(Ⅷ)統計解析の倫理基準・行動基準についての検討,である.
2年間の研究の結果,欧米とも医療情報の利用を進めるために必要なプライヴァシー保護についてより精緻な議論を進めていることが明らかになった.例えば,これまで医療情報個別法を持つ米国と,それを持たない欧州は決定的に異なるとされてきたが,医療情報の定義,匿名化方法,違反行為の通知・公表,制裁の拡大は,欧米で共に導入なされようとしており,欧州における欧州の法改正が実現すれば,実質的には両者の法体制のあり方は大きく近づく形となり,従来の差異は形式的なものとみることも可能となるような状況である.日本においても医療情報の利活用促進に向けた体制整備が進められており,このような欧米の動向は大いに参考になるものと考えられる.
結論
本研究のこれまで2年度,医療情報の利活用のために求められる体制整備,また実態運用での論点の理解の深化を目指して研究を進め,近い将来に予定される医療情報の利活用の体制整備の政策実現の際に必要とされる基礎資料の充実を目指してきたが,その成果からも医療情報の利活用をめぐる欧米の最新動向が一定程度明らかになったと思われる.それは一言でいえば,医療情報を含めた利活用であり,その体制整備の必要性であった.本研究班においては,それに必要となる,法整備のあり方に関する課題提示も含めて,諸外国の保護法制や最新の論議に関する基礎的な資料の提供を含め総合的な研究を目指した.

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201325028C

収支報告書

文献番号
201325028Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,972,000円
(2)補助金確定額
4,972,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,674,178円
人件費・謝金 1,376,061円
旅費 134,280円
その他 640,481円
間接経費 1,147,000円
合計 4,972,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-