緩和ケア病棟における鍼灸治療介入の客観的評価ならびに緩和ケアチームにおけるシステム化に関する調査研究

文献情報

文献番号
201325023A
報告書区分
総括
研究課題名
緩和ケア病棟における鍼灸治療介入の客観的評価ならびに緩和ケアチームにおけるシステム化に関する調査研究
課題番号
H24-医療-一般-024
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
篠原 昭二(明治国際医療大学 鍼灸学部 基礎鍼灸学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 糸井 啓純(明治国際医療大学 ・外科(本学附属病院))
  • 神山 順(明治国際医療大学 ・外科(本学附属病院))
  • 和辻 直(明治国際医療大学 鍼灸学部 基礎鍼灸学講座)
  • 斉藤宗則(明治国際医療大学 鍼灸学部 基礎鍼灸学講座)
  • 関 真亮(明治国際医療大学 鍼灸学部 基礎鍼灸学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
6,654,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
緩和ケアチームにおける鍼灸治療介入の有用性、適応の評価とチーム医療のためのシステム化を目的として以下の項目に関する調査研究を実施してきた。①緩和ケアにおいて鍼灸治療介入の効果に関する研究。②緩和ケアチーム内でチーム医療の一員として鍼灸治療を実践できる鍼灸師の育成のための教育システムの構築。③ターミナル中期から後期の患者さんにも応用可能な、軽微な鍼灸治療方法の構築。④口内炎の発症と関連する胃熱証の症状としての口のかみしめ(歯ぎしり) を指標として、睡眠ポリグラフを用いた鍼治療効果の評価等について検討した。また、⑤患者および患者家族、医療スタッフの健康状態に関する鍼灸治療に関する意識調査も実施した。
研究方法
研究①~③:平成25年4月~平成25年12月末まで、鍼灸治療介入の有効性の検討ならびに適応評価の調査を、某市民病院緩和ケアチーム内で25症例(男性19名、女性6名)を対象として行った。鍼治療は、可能な限り軽微な刺激を心がけ、短時間で少数穴の刺激とした。個々の症例については、その詳細な記述および要約をつけて参考に資するよう配慮した。研究④:顎関節の痛みを有する健常成人ボランティアを対象として、2時間の間における睡眠時間内のかみしめ動作の回数を指標として、鍼治療介入前後の比較を行った。研究⑤:患者および患者家族に対する鍼灸治療に関する意識調査、医療スタッフの健康管理に対する鍼灸治療のニーズ等について調査した。
結果と考察
研究①:主治医または患者本人からの依頼に対して鍼灸治療を介入した結果、著効9例(23.1%)、有効14例(35.9%)、やや有効10例(25.6%)、不明6例(15.4%)、無効0例(0.0%)であり、治療効果が得られた者は全体の59.0%となった。また、有害事象の発生頻度がのべ治療回数384回中、2回(0.5%)と極めて低く、その程度も安静臥床で消失する軽微なものであったことから、非常に安全な治療法であるといえる。平成24年度からは4日/週の治療介入とし、連日治療をおこなった結果、症状緩和を維持することが可能となり、患者および医師からの依頼や相談に早期対応ができるようになった。研究⑤:平成25年度は、さらに患者家族およびチームスタッフにも視点を向け、患者家族に対して鍼灸治療アンケート調査を、チームスタッフには体調管理に対する調査を行った。その結果、看護する家族に対して、鍼灸治療を行ってほしいという声が多く聞かれた。そこで、患者を対象に意識調査を行った結果、自身と同じ病気の知人に鍼灸治療を勧めると答えた患者は 62%であった。また、チームスタッフを対象とした治療相談を行った結果、平成25年4月末より10月末までの間、のべ155名のスタッフからの依頼があったことから、患者のみならず医療スタッフの健康管理にも貢献しうることがわかった。
 研究②:緩和ケアで活躍しうる鍼灸師を育成するためのプログラムとして、日本緩和医療学会の「緩和医療専門医をめさす医師のための研修カリキュラム」をベースとして、鍼灸師向けの研修システムとして構築した。さらに、これまでの研究成果を、平成26年2月22日に市民向けに「緩和ケアにおける鍼灸の活用」と題して一般公開するとともに、研究③:今後緩和ケアに携わろうとする鍼灸師向けのセミナーとして、「鍼灸師のための緩和ケア入門セミナー」を実施した。また、研究で得られた知見を教材として、医歯薬出版社から、「緩和ケア鍼灸マニュアル」として刊行した。研究④:一方、緩和ケアでは、抗癌剤の副作用により口内炎を訴える患者が多い。東洋医学では口内炎を「胃熱」と考えて、治療を行うが、同じ「胃熱」 症状で起こる睡眠時の歯ぎしりに注目して、鍼治療介入前後の効果を調査した。歯ぎしり自体は観察されなかったが、しかし、鍼治療介入によって噛みしめる動作が明らかに減少することがわかった。
結論
今回、25例の症例に対し、緩和ケアに対する鍼灸治療介入を行い、鍼灸治療の有用性および有害事象の発生頻度等に関する調査研究を行った。その結果、モルヒネ等を使っても緩和困難であったターミナル中期から後期の症例においても約60%の症例で症状の軽減が認められることがわかった。また、有害事象の発生頻度は 0.5%と極めて安全な治療法であることが分かった。さらに、患者だけでなく患者の家族が鍼灸治療を希望している現状ならびに、医療スタッフも鍼灸治療を強く希望している事実が明らかとなった。また、化学療法の副作用として生じる口内炎と類似の噛みしめを指標として鍼灸治療介入を行った結果、鍼治療によって明らかに噛みしめ回数の減少する症例のあることが分かった。さらに、日本式の微鍼を用いた緩和ケアにおける鍼灸治療が有用であることを明らかにすることができた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201325023B
報告書区分
総合
研究課題名
緩和ケア病棟における鍼灸治療介入の客観的評価ならびに緩和ケアチームにおけるシステム化に関する調査研究
課題番号
H24-医療-一般-024
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
篠原 昭二(明治国際医療大学 鍼灸学部 基礎鍼灸学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 糸井 啓純(明治国際医療大学 ・外科(本学附属病院))
  • 神山 順(明治国際医療大学 ・外科(本学附属病院))
  • 和辻 直(明治国際医療大学 鍼灸学部 基礎鍼灸学講座 )
  • 斉藤 宗則(明治国際医療大学 鍼灸学部 基礎鍼灸学講座 )
  • 関 真亮(明治国際医療大学 鍼灸学部 基礎鍼灸学講座 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
緩和ケア病棟あるいは緩和ケアチームにおける鍼灸治療介入の有用性、適応の評価とチーム医療のためのシステム化を目的として以下の項目に関する調査研究を実施してきた。①緩和ケアにおいて鍼灸治療介入の効果に関する研究。②緩和ケア病棟あるいはチーム内でチーム医療の一員として鍼灸治療を実践できる鍼灸師の育成のための教育システムの構築。③ターミナル中期から後期の患者さんにも応用可能な、軽微な鍼灸治療方法の構築。④口内炎の発症と関連する胃熱証の症状としての口のかみしめ(歯ぎしり) を指標として、睡眠ポリグラフを用いた鍼治療効果の評価等について検討した。また、⑤患者および患者家族、医療スタッフの健康状態に関する鍼灸治療に関する意識調査も実施した。
研究方法
研究①~③:平成22年7月から平成25年12月末の75症例(男54名、女21名)のべ113愁訴(症例)を対象として、鍼灸治療介入の有用性の検討ならびに適応の評価を行った。鍼治療は、可能な限り軽微な刺激を心がけ、短時間で少数穴の刺激とした。個々の症例については、その詳細な記述および要約をつけて参考に資するよう配慮した。研究④:顎関節の痛みを有する健常成人ボランティアを対象として、2時間の間における睡眠時間内のかみしめ動作の回数を指標として、鍼治療介入前後の比較を行った。研究⑤:患者および患者家族に対する鍼灸治療に関する意識調査、医療スタッフの健康管理に対する鍼灸治療のニーズ等について調査した。
結果と考察
研究①:主治医または患者本人からの依頼に対して鍼灸治療を介入した結果、著効35例(31.0%)、有効32例(28.3%)、やや有効27例(23.9%)、無効3例(2.7%)、判定不明16例(14.2%)であり、59.3%に有効であったといえる(症例の重複あり)。また、有害事象の発生頻度がのべ治療回数1028回中、有害事象は5回(0.5%)と極めて低く、その程度も安静臥床で消失する軽微なものであったことから、非常に安全な治療法であるといえる。平成22年度~平成23年度は治療介入を2日/週として調査をおこなった。その結果、鍼灸治療効果時間が1日以内20名(57.1%)、2日以内6名(17.1%)、3日以内2名(5.7%)から、鍼灸治療介入のタイミングは毎日治療を行うことが望ましいことが示唆された。そこで、平成24年度からは4日/週の治療介入とし、連日治療をおこなった結果、症状緩和を維持することが可能となり、患者および医師からの依頼や相談に早期対応ができ、信頼関係が得られやすくなった。研究⑤:平成25年度は、さらに患者家族およびチームスタッフにも視点を向け、患者家族に対して鍼灸治療アンケート調査を、チームスタッフには体調管理に対する調査を行った。その結果、看護する家族に対して、鍼灸治療を行ってほしいという声が多く聞かれた。そこで、患者を対象に意識調査を行った結果、自身と同じ病気の知人に鍼灸治療を勧めると答えた患者は 62%であった。また、チームスタッフを対象とした治療相談を行った結果、平成25年4月末より10月末までの間、のべ155名のスタッフからの依頼があったことから、患者のみならず医療スタッフの健康管理にも貢献しうることがわかった。
 研究②:緩和ケアで活躍しうる鍼灸師を育成するためのプログラムとして、日本緩和医療学会の「緩和医療専門医をめさす医師のための研修カリキュラム」をベースとして、鍼灸師向けの研修システムとして構築した。さらに、これまでの研究成果を、平成26年2月22日に市民向けに「緩和ケアにおける鍼灸の活用」と題して一般公開するとともに、研究③:今後緩和ケアに携わろうとする鍼灸師向けのセミナーとして、「鍼灸師のための緩和ケア入門セミナー」を実施した。また、研究で得られた知見を教材として、医歯薬出版社から、「緩和ケア鍼灸マニュアル」として刊行した。研究④:一方、緩和ケアでは、抗癌剤の副作用により口内炎を訴える患者が多い。東洋医学では口内炎を「胃熱」と考えて、治療を行うが、同じ「胃熱」 症状で起こる睡眠時の歯ぎしりに注目して、鍼治療介入前後の効果を調査した。歯ぎしり自体は観察されなかったが、しかし、鍼治療介入によって噛みしめる動作が明らかに減少することがわかった。
結論
今回、4年間で75例の症例に対し、緩和ケアに対する鍼灸治療介入を行い、鍼灸治療の有用性および有害事象の発生頻度等に関する調査研究を行った。その結果、モルヒネ等を使っても緩和困難であったターミナル中期から後期の症例においても約60%の症例で症状の軽減が認められることがわかった。また、この間に取り扱ったのべ治療回数1028回の治療介入において、治療後に軽度の症状の増悪を認めた5例のみであり、発生頻度は 0.5%と極めて安全な治療法であることが分かった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201325023C

収支報告書

文献番号
201325023Z