「統合医療」エビデンス評価の2段階多次元スケールの開発と分類及び健康被害状況の把握に関する研究

文献情報

文献番号
201325020A
報告書区分
総括
研究課題名
「統合医療」エビデンス評価の2段階多次元スケールの開発と分類及び健康被害状況の把握に関する研究
課題番号
H24-医療-一般-021
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
津谷 喜一郎(東京大学 大学院薬学系研究科・医薬政策学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
9,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
統合医療(integrative medicine: IM)や相補代替医療(complementary and alternative medicine: CAM)には、東アジア伝統医学の一つとしての漢方医学から、近代に海外から流入した療法まで、約20-50種類の大カテゴリーがあるとされる。各カテゴリーに妥当な評価法がなんであるか、またランダム化比較試験(RCT)の必要性を明らかにする。直接的・間接的健康被害の現状を分析する。

研究方法
2年計画の2年目の主たる研究方法として、第1に統合医療全体として、1) 統合医療の定義を日本の厚生労働省のものを含めて分析、2) CAMに関心をもち EBMに一定の理解をもつ医師を対象としたアンケートで、日本で初の統合医療の公的な情報発信サイトであるeJIMに対して期待することを調査した。第2に「効き目」の研究として、1) 園芸療法のランダム化比較試験(RCT)のシステマティック・レビュー(SR)、 2) CAMのRCTの必要性を、CAMの種々の属性と水準の組み合わせからなる設問を用いて、上記の医師に対するアンケート調査に組み入れコンジョイント分析を行った。第3にリスクの研究として、1) 初年度に行った患者を対象とした「もっと早く病医院へ行けばよかった」アンケート調査のデータ分析、2) 直接的健康被害と間接的健康被害の関係を法律学的に分析した。
結果と考察
第1に統合医療全体として、1) 日本の厚生労働省による統合医療の定義(位置づけ)は理念的で分かりにくく、実践的意味合いに欠けるところがある。海外のものの研究を含めて再度議論されるべき。2) 医師がeJIMに対して期待することは、リスクのエビデンスと有効性のエビデンスが多い。第2に「効き目」の研究として1) 園芸療法は 4件のRCTが存在しそのSRでは介入方法の異質性から明確な結論は得られない。2) 医師に対するRCTの必要度のコンジョイント分析により、寄与率としては「有害性」、「効果」、特性値では「人体に有害作用がある(0.5%以上)」や「ランダム化していない比較試験」が高位を示した。RCT実施に対する医療資源の配分においての指針の一つとなろう。第3にリスクの研究として、1)「もっと早く病医院へ行けばよかった」アンケート調査では、疾患を持つ患者の9.6%に、病医院以外で受ける療法や商品の使用を続けていたため医療機関を受診するタイミングが遅れ、受診が遅れた経験があった。2) 直接的健康被害と間接的健康被害の定義を法律学的に明確にした。
結論
2年計画の2年目として、1年目を引き継ぎ、統合医療全体、「効き目」、リスク、それぞれについて研究を遂行した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201325020B
報告書区分
総合
研究課題名
「統合医療」エビデンス評価の2段階多次元スケールの開発と分類及び健康被害状況の把握に関する研究
課題番号
H24-医療-一般-021
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
津谷 喜一郎(東京大学 大学院薬学系研究科・医薬政策学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
統合医療(integrative medicine: IM)や相補代替医療(complementary and alternative medicine: CAM)には、東アジア伝統医学の一つとしての漢方医学から、近代に海外から流入した療法まで、約20-50種類の大カテゴリーがあるとされる。各カテゴリーに妥当な評価法がなんであるか、またランダム化比較試験(RCT)の必要性を明らかにし、臨床的エビデンスの研究のアプローチのモデルを提示する。直接的・間接的健康被害の現状を分析する。

研究方法
第1に統合医療全体として、1) 統合医療の定義を日本の厚生労働省のものを含めて分析、2) 日本のCAM利用状況調査のレビュー、3) CAMに関心をもちEBMに一定の理解をもつ医師を対象としたインターネット調査で、日本で初の統合医療の公的な情報発信サイトであるeJIMに対しての期待の調査、4) 一般人を対象としたインターネット調査で、CAMについての医師とのコミュニケーションの調査。第2に「効き目」の研究として、1) CAMに関する複数の属性・水準を組み合わせた設問を作成し、上記の医師調査での、RCTの必要度のコンジョイント分析、2) 医療用漢方製剤のRCTの予備的な質評価、3) 非東アジア伝統医学のCAMとしての、i) 動物介在療法のシステマティック・レビュー(SR)、ii) 園芸療法のSR、iii) 音楽療法のSRのレビュー、第3にリスクの研究として、1) 医療用漢方製剤の副作用報告のシグナル検出、2) PIO-NETを用いたCAMによる危害事例の分析、3) 患者を対象とした「もっと早く病医院へ行けばよかった」インターネット調査、4) 直接的健康被害と間接的健康被害の関係の法律学的分析。
結果と考察
第1に統合医療全体として、1) 日本の厚生労働省による統合医療の定義(位置づけ)は理念的で分かりにくく、実践的意味合いに欠けるところがある。海外のものの研究を含めて再度議論されるべき。2) CAM利用状況調査の全8件のレビューによると日本でのCAMの利用は高い。だがSTROBE声明を用いた予備的な評価では質は低い。3) 医師がeJIMに対して期待することは、リスクのエビデンスと有効性のエビデンスが多い。4) 一般人でCAM用いているもののうち約70%が医師にその利用を話している。第2に「効き目」の研究として、1) 医師によるRCTの必要度は、寄与率としては「有害性」、「効果」、特性値では「人体に有害作用がある(0.5%以上)」や「ランダム化していない比較試験」が高位を示した。2) 医療用漢方製剤のRCTはエビデンスの質にバラつきがある。3) 動物介在療法の11件のRCTのSRではうつ病など精神的・行動的問題に有効かもしれない、園芸療法の4件のRCTのSRでは介入方法の異質性から明確な結論は得ず、音楽療法では21件のSRのレビューにより、統合失調症におけるメンタルと社会適応などの有効性が明らかとなった。第3にリスクの研究として、1) 医療用漢方製剤の副作用報告による間質性肺炎におけるシグナル検出を行いその方法論としての有用性を示し、2) PIO-NETを用いてCAMによる危害事例の傾向を明らかにした。3) 患者を対象としたアンケート調査で、疾患を持つ患者の約10%に、病医院以外で受ける療法や商品の使用を続けていたため医療機関を受診するタイミングが遅れ、受診が遅れた経験がある。CAMを受け続けて適時に適切な医療を受ける機会を喪失することで症状の進行や悪化に伴う被害は「間接的健康被害」と定義される。4) 医師を対象としたアンケート調査により約25%の医師が過去1年間に代替医療による受信の遅れを経験していることを明らかにした。
結論
非東アジア伝統医学の大カテゴリーのCAMの有効性に疑問がある場合、SRや、SRのレビュー、の方法によるエビデンス全般の状況と課題の把握をまず行い、そのプロセスの中から小カテゴリーのPICOのエビデンスや次の臨床研究の発案というstep wiseのアプローチのモデルを示した。何らかの形ですでに公的な認知がなされている東アジア伝統医学では、小カテゴリーのPICOのRCTの質評価に基づき、さらに質の高いRCTの実施が望まれる。医師の持つCAMの各属性・水準に対するRCT必要性の結果は、RCT実施に対する医療資源の配分においての指針の一つとなろう。有害事象の分析にはシグナル検出が有用であり、医薬品・ワクチン・医療器具・CAMなど全ての医療的介入の一元的報告制度が必要である。CAMの間接的健康被害は予想以上に多く、関係者の認知の向上とヘルスリテラシーの改善が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201325020C

収支報告書

文献番号
201325020Z