EBMに基づく診療ガイドラインの導入が医療に与える影響に関する研究

文献情報

文献番号
201325019A
報告書区分
総括
研究課題名
EBMに基づく診療ガイドラインの導入が医療に与える影響に関する研究
課題番号
H24-医療-一般-020
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 友紀(東邦大学 医学部 社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 邦愛(東邦大学 医学部 社会医学講座)
  • 北澤 健文(東邦大学 医学部 社会医学講座)
  • 瀬戸 加奈子(渡辺 加奈子)(東邦大学 医学部 社会医学講座)
  • 飯田 修平(全日本病院協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
EBM手法に基づく診療ガイドライン(診療GL)は、医療の質確保、標準化を図る重要な役割を担っている。診療GLの評価ツールであるAGREE評価票は世界的に利活用されており、質向上に貢献している。本研究では、AGREE評価票を用いた診療GL評価の経年比較、AGREE調査票改訂に伴うデータの移行、診療GL作成における専門家支援の事例検討、診療GL・クリティカルパスの導入状況、ケアの標準化が死亡率にもたらす影響を明らかにすることを目的とした。
研究方法
日本で2012年までに作成された280診療GL(改訂を含む)について経時的な分析を実施した。2011-12年に発行された68診療GLについてはAGREEⅠとAGREEⅡ(改訂版)の2つの評価票を用いて同一評価チームが評価を実施し、項目別、領域別の相関係数を算出した。高血圧診療GLの作成にあたり草稿版と最終版についてAGREE評価を実施し前後比較を実施した。1505のDPC対象病院に診療ガイドラインやクリティカルパスの導入状況についてアンケート調査を実施した。公益社団法人全日本病院協会の医療の質評価事業であるMedi-Target事業のデータベースより192施設において2008年1-12月に退院した患者2,025,781人の連結不可能匿名化DPC/PDPSデータを用いて、モデルを作成し予測死亡数を算出した。
結果と考察
280診療GLのAGREE評価結果からは、作成手順が定着してきており全体的に質の向上傾向にあることが窺えた。特に最近の社会的要請を背景として、#5適応可能性や#6編集の独立性は改善傾向にあったが、標準化得点は50%未満と十分とは言えない状況が明らかとなった。AGREEⅠとⅡは、設問間の相関は0.810-0.995と相関が高く、AGREEⅡで追加された全体項目はQ1-23全項目の標準化得点との相関が0.698と高く、全項目の評点で代用できるものと考えられた。高血圧診療GLの作成支援においては、AGREEの事後評価は事前と同等もしくは向上しており、草稿段階での専門家によるAGREEを用いた支援では、標準化得点とともに改善点をコメントとして明示することにより、加筆修正の必要な事項が作成者サイドに明確に伝わったことで、質の向上に繋がったと考えられた。DPCデータ解析では、ケアの標準化の度合いと死亡退院割合の関係を疾患別に検討したところ、肺炎、脳梗塞で高標準化群の死亡退院割合が低標準化群に比して有意に低値となった年が認められた。
結論
診療GLの質は向上しており、AGREE評価票の改訂後もデータの連続性を担保できることが明らかとなった。診療GL作成では草稿段階の専門家によるAGREEを用いた支援を実施することにより、質向上に貢献できることが明らかとなった。DPCデータ解析からは肺炎、脳梗塞では、ケアの標準化と死亡退院割合との関係性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201325019B
報告書区分
総合
研究課題名
EBMに基づく診療ガイドラインの導入が医療に与える影響に関する研究
課題番号
H24-医療-一般-020
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 友紀(東邦大学 医学部 社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 邦愛(東邦大学 医学部 社会医学講座)
  • 北澤 健文(東邦大学 医学部 社会医学講座)
  • 瀬戸 加奈子(渡辺 加奈子)(東邦大学 医学部 社会医学講座)
  • 飯田 修平(全日本病院協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
診療ガイドライン(診療GL)は、医療の質確保、標準化を図る上で重要な役割を担っている。その評価ツールであるAGREE評価票は、世界的に活用され、質向上に貢献している。本研究では、AGREE評価票を用いた診療GL評価の経年比較、改訂に伴うデータの移行、診療GL作成における専門家支援の事例検討、診療GLやクリティカルパスの導入状況、診療GL作成の問題点や必要な支援、ケアの標準化が死亡率にもたらす影響を明らかにすることを目的とした。
研究方法
日本で2012年までに作成された280診療GL(改訂を含む)について経時的な分析を実施した。2011-12年に作成された68診療GLについてはAGREEⅠとAGREEⅡ(改訂版)の2つの評価票を用いて同一評価チームが評価を実施し、項目別、領域別の相関係数を算出した。高血圧診療GLの草稿版と最終版についてAGREE評価を実施し前後比較を実施した。1505のDPC対象病院に診療ガイドライン等の導入状況について、2006年以降に発行された167の診療GL作成者に作成上の問題点、支援体制についてアンケート調査を実施した。公益社団法人全日本病院協会の医療の質評価事業であるMedi-Target事業のデータベースより192施設において2008年1-12月に退院した患者2,025,781人の連結不可能匿名化DPC/PDPSデータを用いて、モデルを作成し予測死亡数を算出した。
結果と考察
診療GLの評価結果からは、作成手順が定着してきており全体的に向上傾向にあることが窺えた。特に最近の社会的要請を背景として、#5適応可能性や#6編集の独立性は改善傾向であるものの、標準化得点は50%未満と低い傾向にあった。AGREEⅠとⅡは、設問間の相関が高く、AGREEⅡの全体項目はQ1-23の全項目の標準化得点との相関が高いことから、全項目の評点で代用できると考えられた。診療GL改訂版の作成支援では、AGREEの事後評価は同じもしくは向上しており、草稿段階の専門家支援では、AGREEの標準化得点とともに改善点をコメントとして明示することにより、作成者サイドに加筆修正の項目が明確に伝わり、質の向上に繋がったとものと考えられた。DPC対象病院の過半数で診療GLの使用が推奨されており、治療方針の決定、クリティカルパスの作成、患者への説明に用いられていた。DPCデータ解析では、ケアの標準化の度合いと死亡退院割合の関係を疾患別に検討したところ、肺炎、脳梗塞で高標準化群の死亡退院割合が低標準化群に比して有意に低値となった年が認められた。
結論
診療GLの質は向上しており、AGREE評価票の改訂後もデータの連続性を担保できること、AGREEを用いた診療GL作成支援は、質向上に貢献できるなど有用であることが明らかとなった。DPCデータ解析からは肺炎、脳梗塞では、ケアの標準化と死亡退院割合との関係性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201325019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
諸外国でも利活用されているツールであるAGREE評価票は、診療ガイドラインの評価ツールである。経年比較ではわが国の診療ガイドラインの質は向上していることが示唆された。また、評価票改訂後も過去のデータとの連続性が担保されることを示したことは学術的に重要な成果といえる。また、診療ガイドラインが急性期病院の過半数で利用の推奨がなされていることは、医療の現場において標準化が進んでいることがうかがえる。
臨床的観点からの成果
DPC/PDPSのデータより肺炎、脳梗塞では、平均在院日数のばらつきが大きく、ケアの標準化の度合いが低い施設において、死亡退院割合が高く、ケアの標準化と死亡退院割合との関連性が示唆された。臨床での医療の実践を可視化し、改善へのきっかけを提供することができる等、医療の質向上に貢献するものといえる。
ガイドライン等の開発
診療ガイドライン改訂版の作成では、AGREE評価票を用いた作成支援を行い、事後評価での平均化得点が向上するなど、質向上に貢献することが示唆された。診療ガイドラインの質向上においては、AGREE評価票等のツールを用いた外部評価の実施が有用といえる。
その他行政的観点からの成果
診療ガイドラインは医療の標準化、質担保を図るための重要な役割を有している。質の高い診療ガイドラインの作成・公表は、医療の政策的な観点から重要といえる。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
2019-06-10

収支報告書

文献番号
201325019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,000,000円
(2)補助金確定額
3,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 685,128円
人件費・謝金 515,100円
旅費 1,550,292円
その他 249,480円
間接経費 0円
合計 3,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-