医療安全をめぐる応答的規制(Responsive Regulation):民事・刑事・行政の多元的な法的介入と医療安全対策の相互関係を探る

文献情報

文献番号
201325015A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全をめぐる応答的規制(Responsive Regulation):民事・刑事・行政の多元的な法的介入と医療安全対策の相互関係を探る
課題番号
H24-医療-一般-016
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岩田 太(上智大学 法学部国際関係法学科)
研究分担者(所属機関)
  • 樋口 範雄(東京大学大学院 法学政治学研究科)
  • 佐藤雄一郎(東京学芸大学 教育学部)
  • 木戸浩一郎(帝京大学医学部 産婦人科)
  • 織田有基子(日本大学大学院 法務研究科)
  • 磯部 哲(慶應義塾大学大学院 法務研究科)
  • 児玉 安司(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 我妻 学(首都大学東京 都市教養学部法学系)
  • 佐藤恵子(京都大学大学院  医学研究科 )
  • 小山田朋子(法政大学法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,078,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,今後日本で喫緊な対応が求められる医療事故をめぐる法的介入の限界を考察し,医療安全向上などの努力と矛盾しない形の総合的な紛争処理制度の構築と,適正な法的介入のあり方の実現を目指し,諸外国における制度の全体像を整理し,具体的な論点を明確化することを目標とした.
研究方法
そのため本研究では,従来十分検討されることのなかった刑事・民事・行政的な制裁という複層的な法的介入内部の相互関係,医療安全対策と法的介入の連関を意識しつつ,以下の2つの観点から分析を行った.第1は,日本および英米仏独豪ニュー・ジーランド,スウェーデンなどの諸外国における医療への法的介入の制度・実態,さらに応答的規制をめぐる先行研究を網羅的に検討する(平成24-25年度).第2は,第1の文献調査などから明らかになった疑問点を解消すべく,国内外の専門家へのインタビューなどの実態調査(25年度)を行うことによって,諸外国における医療事故への法的介入の全体像および運用実態を明らかにする.調査においては,民事裁判と無過失補償制度の並列の可否を含め,被害者・加害医療者双方にとって公正な解決と,真摯な原因究明に基づく医療安全向上という2大目標を実現しうる制度構築に向けての論点の明確化のための基礎的資料の提供を目指した.応答的規制とは,医療のように専門性が高く急速に発展する領域における規制のあり方として,合意ベースから強制度の高い手段という多元的な規制類型の中で,対象の性格に応じて適切な規制手段を選択し目的実現を目指す規制のあり方であり,本研究ではその視覚を重視しつつ研究計画を立てた.
結果と考察
H24年度は医療事故への法介入をめぐる諸外国および日本の状況について集中的に文献調査を行ったので,本(H25)年度は,それらを基礎としつつ,以下のような検討を行った.(Ⅰ)まず医療事故に関する研究として,喫緊の政治課題である医療事故の調査のあり方における「独立性・中立性・透明性」をいかに担保するかについての基本的な視覚の分析,(Ⅱ)医療事故の調査のあり方に関するいわゆるWHOドラフト・ガイドライン(World Alliance for Patient Safety, WHO Draft Guidelines for Adverse Event Reporting and Learning Systems (World Health Organization; 2005))の諸外国での実施状況に関する検討,(Ⅲ)国内ですでに存在している医療事故の調査に関するガイドラインについての調査と整理分析,(Ⅳ)医療事故をめぐる事後的対応の一場面として,遺族などに対する医師の説明義務に関して最新の動向の分析,(Ⅴ)合衆国における医療過誤訴訟の動向,(Ⅵ)EUにおける国境を越えた医療提供場面における患者の権利をめぐるEU指令の分析,(Ⅶ-XⅣ)医療事故調査をめぐる第三者機関の意義についてのシンポジウム開催,である.
結論
これらの諸外国の議論状況,および,日本における医療事故をめぐる法的な介入の問題点についての検討結果などは,年度末報告書に掲載すると同時に,それら成果の一部はすでに公表されている(総括分担報告書の業績欄参照).これまでの検討から明らかとなったのは例えば以下である.医療ミスに対する刑事的な介入が日本独自の現象ではないのみならず,諸外国においても近年刑事的介入が増加している国が少なからず存在している.同時に制裁強化の傾向が必ずしも医療安全には繋がらないという認識は広く共有されており,基本的には非制裁的な将来の安全向上を志向する方策が模索されてきた.しかし,どんな場面にも個人の責任が否定されるわけではなく,ミスの原因をめぐるシステム要因の公正な考慮を念頭に置きつつも,ミスを繰り返すレピーターを含め故意的な行為に対しては一定の制裁も必要であると考えられている.行為の非難度を公正な形で評価した上で,その非難度に適した規制方法が擁するという意味において,Just Cultureが目指されてきた.まさに本研究が依拠する応答的な規制の必要が求められているといえる.
研究成果の活用に関して,まず研究班の会合には担当部局である医療安全推進室の担当者を招くなどして,行政的観点からの関心にも十分答えるべく研究を進めてきた.また,本研究班に直接関連する厚生労働省の検討会である「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」(平成24年2月から開催)に分担研究者が加わるなど一定程度貢献してきた.さらに医療事故の原因究明のあり方に関して,平成25年4月(東京大学において)には「医療事故に関する第三者機関のあり方」に関するシンポジウムを開催し広く社会との対話も重視してきた.

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201325015B
報告書区分
総合
研究課題名
医療安全をめぐる応答的規制(Responsive Regulation):民事・刑事・行政の多元的な法的介入と医療安全対策の相互関係を探る
課題番号
H24-医療-一般-016
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岩田 太(上智大学 法学部国際関係法学科)
研究分担者(所属機関)
  • 樋口 範雄(東京大学大学院 法学政治学研究科)
  • 佐藤雄一郎(東京学芸大学 教育学部)
  • 木戸浩一郎(帝京大学医学部 産婦人科)
  • 織田有基子(日本大学大学院 法務研究科)
  • 磯部 哲(慶應義塾大学大学院 法務研究科)
  • 児玉 安司(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 我妻 学(首都大学東京 都市教養学部法学系)
  • 佐藤恵子(京都大学大学院  医学研究科)
  • 小山田朋子(法政大学法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,今後日本で喫緊な対応が求められる医療事故をめぐる法的介入の限界を考察し,医療安全向上などの努力と矛盾しない形の総合的な紛争処理制度の構築と,適正な法的介入のあり方の実現を目指し,諸外国における制度の全体像を整理し,具体的な論点を明確化することを目標とした.
研究方法
そのため本研究では,従来十分検討されることのなかった刑事・民事・行政的な制裁という複層的な法的介入内部の相互関係,医療安全対策と法的介入の連関を意識しつつ,以下の2つの観点から分析を行った.第1は,日本および英米仏独豪ニュー・ジーランド,スウェーデンなどの諸外国における医療への法的介入の制度・実態,さらに応答的規制をめぐる先行研究を網羅的に検討する(平成24-25年度).第2は,第1の文献調査などから明らかになった疑問点を解消すべく,国内外の専門家へのインタビューなどの実態調査(25年度)を行うことによって,諸外国における医療事故への法的介入の全体像および運用実態を明らかにする.調査においては,民事裁判と無過失補償制度の並列の可否を含め,被害者・加害医療者双方にとって公正な解決と,真摯な原因究明に基づく医療安全向上という2大目標を実現しうる制度構築に向けての論点の明確化のための基礎的資料の提供を目指した.応答的規制とは,医療のように専門性が高く急速に発展する領域における規制のあり方として,合意ベースから強制度の高い手段という多元的な規制類型の中で,対象の性格に応じて適切な規制手段を選択し目的実現を目指す規制のあり方であり,本研究ではその視覚を重視しつつ研究計画を立てた.
結果と考察
H24年度は医療事故への法介入をめぐる諸外国および日本の状況について集中的に文献調査を行ったので,本(H25)年度は,それらを基礎としつつ,以下のような検討を行った.(Ⅰ)まず医療事故に関する研究として,喫緊の政治課題である医療事故の調査のあり方における「独立性・中立性・透明性」をいかに担保するかについての基本的な視覚の分析,(Ⅱ)医療事故の調査のあり方に関するいわゆるWHOドラフト・ガイドライン(World Alliance for Patient Safety, WHO Draft Guidelines for Adverse Event Reporting and Learning Systems (World Health Organization; 2005))の諸外国での実施状況に関する検討,(Ⅲ)国内ですでに存在している医療事故の調査に関するガイドラインについての調査と整理分析,(Ⅳ)医療事故をめぐる事後的対応の一場面として,遺族などに対する医師の説明義務に関して最新の動向の分析,(Ⅴ)合衆国における医療過誤訴訟の動向,(Ⅵ)EUにおける国境を越えた医療提供場面における患者の権利をめぐるEU指令の分析,(Ⅶ-XⅣ)医療事故調査をめぐる第三者機関の意義についてのシンポジウム開催,である.
結論
これらの諸外国の議論状況,および,日本における医療事故をめぐる法的な介入の問題点についての検討結果などは,年度末報告書に掲載すると同時に,それら成果の一部はすでに公表されている(総括分担報告書の業績欄参照).これまでの検討から明らかとなったのは例えば以下である.医療ミスに対する刑事的な介入が日本独自の現象ではないのみならず,諸外国においても近年刑事的介入が増加している国が少なからず存在している.同時に制裁強化の傾向が必ずしも医療安全には繋がらないという認識は広く共有されており,基本的には非制裁的な将来の安全向上を志向する方策が模索されてきた.しかし,どんな場面にも個人の責任が否定されるわけではなく,ミスの原因をめぐるシステム要因の公正な考慮を念頭に置きつつも,ミスを繰り返すレピーターを含め故意的な行為に対しては一定の制裁も必要であると考えられている.行為の非難度を公正な形で評価した上で,その非難度に適した規制方法が擁するという意味において,Just Cultureが目指されてきた.まさに本研究が依拠する応答的な規制の必要が求められているといえる.
研究成果の活用に関して,まず研究班の会合には担当部局である医療安全推進室の担当者を招くなどして,行政的観点からの関心にも十分答えるべく研究を進めてきた.また,本研究班に直接関連する厚生労働省の検討会である「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」(平成24年2月から開催)に分担研究者が加わるなど一定程度貢献してきた.さらに医療事故の原因究明のあり方に関して,平成25年4月(東京大学において)には「医療事故に関する第三者機関のあり方」に関するシンポジウムを開催し広く社会との対話も重視してきた.

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201325015C

収支報告書

文献番号
201325015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,078,000円
(2)補助金確定額
4,078,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,807,698円
人件費・謝金 200,000円
旅費 525,000円
その他 546,342円
間接経費 0円
合計 4,079,040円

備考

備考
【収支差額】
預金利息  74円
自己負担 966円

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-