医療の質・安全の向上をめざしたシミュレーション教育・研修システムの開発および遠隔教育への応用についての研究

文献情報

文献番号
201325011A
報告書区分
総括
研究課題名
医療の質・安全の向上をめざしたシミュレーション教育・研修システムの開発および遠隔教育への応用についての研究
課題番号
H24-医療-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
井田 雅祥(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 中西 成元(国家公務員共済組合連合会虎の門病院  国家公務員共済組合連合会シミュレーション・ラボセンター)
  • 池上 敬一(獨協医科大学越谷病院救命救急センター)
  • 鈴木 克明(熊本大学大学院社会文化科学研究科)
  • 澤 智博(帝京大学医療情報システム研究センター 帝京大学本部情報開発センター 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科)
  • 武田 聡(東京慈恵会医科大学)
  • 鹿瀬 陽一(東京慈恵会医科大学)
  • 石川 雅巳(国家公務員共済組合連合会呉共済病院)
  • 大森 正樹(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 国家公務員共済組合連合会シミュレーション・ラボセンター)
  • 荒井 直美(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 国家公務員共済組合連合会シミュレーション・ラボセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,697,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療の質・安全、地域医療の水準の向上を目指して、シミュレータを用いた教育研修システムの構築を進めている。シミュレータ教育研修にはe-ラーニング、タスクトレーニング、フルスケール・シミュレータ教育とデブリーフィングがあるが、これらを教育システムとして構築することにより、研修目標の確実な達成が期待でき、人材活用、指導者養成にも役立つ。こうしたシステムの構築、開発を行うとともに、ネットを活用した遠隔教育の実践とその効果を確認する。これらに教育設計学Instructional Design(以後ID)の手法やITを適応することで効率化を図る。アウトカムとして、実臨床場面での有効性を検証する。
研究方法
1.シミュレーション教育研修システムを構築し、それに基づくシステム開発を行い、効果を確認した。
2.IDに基づく人材教育として、e-ラーニングの開発研究を行い、研修の有用性を確認した。
3.教授法
1)シミュレーション医療学習について提言した。
2)シミュレーション・トレーニングを開催して教授法の有効性を評価した。
3)医学生教育における臨床の早期導入とシミュレーション教育の活用について提言した。
4.問題解決を指向したシナリオ・シミュレーションの作成
1)IDの知見をもとに、シナリオ作成とアウトカムとして指導者養成研修についてプロトタイプを作成し、現場での行動変容が期待できる教育設計を試みた。
2)医療安全を指向した短時間シミュレーションを作成し、教育効果を検討した。
5.指導者養成:遠隔地での指導者養成を目的として、遠隔教育を試みた。
6.遠隔教育
1)ITの適応を検討した。
2)シミュレーション教育プログラムの遠隔教育の有用性を検証した。
7.シミュレーション教育の実臨床現場での効果・有効性を検証した。
結果と考察
1.シミュレータ教育研修システム化
1)シミュレーション教育システムを構築し、この設計に基づいて、クラウド上にインターネットサイトを開設した。サイト上で研修の事前テストにe-ラーニングを用いたところ有効性が確認された。
2)各種ITを検討してシステム設計と実装を行った結果、効率向上が示された。
2.e-ラーニングの開発・活用
IDを活用して計画的に人材育成を図る際には、職場の行動変容を支援する内容を指向すべきである。学習履歴を利用すれば人材活用にも有効と思われる。
3.教授法
1)医療教授システムが指向するアウトカムは、標準的な医療を確実かつ安全に実践できる医療者の育成である。
2)Rapid Response Systemのためのシミュレーション教育を開催した結果、有効な行動変容を促すことができた。
3)米国ではフルスケール・シミュレータ教育を活用して、医学部1年生から実践的な臨床実習を行っている。本邦でも、導入が期待される。
4.問題解決を指向したシナリオ・シミュレーションの作成
1)IDの知見をもとに、シナリオ作成とアウトカムとしてのプロトタイプを作成した。課題に見合った形態で研修し、職場で必ず実践するという課題設定を組み込むことによって行動変容が期待できた。
2)実事例をフルスケール・シミュレーションで再現し、8分間の研修とした。その結果、多忙な初期研修医の臨床経験を補う体験として有効と思われた。
5.指導者養成:中央からの遠隔支援教育で地域の指導者養成を行った結果、自立支援の役割を果たすことが確認できた。
6.遠隔教育
1)クラウドテクノロジーなどの情報技術を適応し実証実験を行った。その結果、情報を遠隔地でも共有することが可能となった。情報の地域差解消に有効と思われる。
2)遠隔操作による2次救命処置講習会が、日本救急医学会の認定条件を満たすことが確認され、承認された。これは、遠隔地の医療者にとって朗報と思われる。
7.シミュレーション教育の実臨床現場での効果・有効性を検証した。入院患者における心肺停止時の蘇生率は、BLS受講を年一回必須とした結果、有意に改善した。実臨床現場でも有効であることが示された。
結論
1)シミュレータ教育研修システムを構築した。
2)各種ITの適応とIDに基づく教育プログラムの導入により、教育の効率を高め、臨床現場で有効な行動変容が期待できる。さらに、遠隔教育の実施により、地域に限定されない計画的な人材育成・指導者養成に寄与することが期待できる。
3)遠隔操作による研修が学会認定研修として承認された。
4)シミュレーション教育が医療現場での患者救命に有効であることが示唆された。
5)今後、シミュレーション教育の効果を上げる手法の研究や,臨床現場での教育効果を蓄積するとともに、遠隔教育を活用した地域医療の向上への貢献、災害対応、国際貢献などへの応用も視野に入れて研究を進めて行く必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201325011B
報告書区分
総合
研究課題名
医療の質・安全の向上をめざしたシミュレーション教育・研修システムの開発および遠隔教育への応用についての研究
課題番号
H24-医療-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
井田 雅祥(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 中西 成元(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 国家公務員共済組合連合会シミュレーション・ラボセンター)
  • 池上 敬一(獨協医科大学越谷病院救命救急センター)
  • 鈴木 克明(熊本大学大学院社会文化科学研究科)
  • 澤 智博(帝京大学医療情報システム研究センター 帝京大学本部情報開発センター 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科)
  • 武田 聡(東京慈恵会医科大学)
  • 鹿瀬 陽一(東京慈恵会医科大学)
  • 松本 尚浩(東京慈恵会医科大学)
  • 石川 雅巳(国家公務員共済組合連合会呉共済病院)
  • 松本 みどり(国家公務員共済組合連合会立川病院)
  • 大森 正樹(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 国家公務員共済組合連合会シミュレーション・ラボセンター)
  • 荒井 直美(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 国家公務員共済組合連合会シミュレーション・ラボセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療の質・安全、地域医療の水準の向上を目指してシミュレータを用いた教育研修システムの構築を進めている。シミュレータ教育にはe-ラーニング、タスクトレーニング、フルスケール・シミュレータ教育とデブリーフィングがあるが、これらをシステムとして構築することにより、研修目標の確実な達成が期待でき、人材活用、指導者養成にも役立つ。こうしたシステムの構築、開発を行うとともに、ネットを活用した遠隔教育の実践とその効果を確認する。これらに教育設計学Instructional Design(ID)の手法やITを適応することで効率化を図る。アウトカムとして、実臨床場面での有効性を検証する。
研究方法
1.シミュレーション教育システムを構築してシステム開発を行い、効果を確認した。
2. 人材教育としてe-ラーニングの開発研究を行い、研修の有用性を確認した。
3.教授法
1)シミュレーション医療学習について提言した。
2)シミュレーション研修を開催して教授法の有効性を評価した。
3)医学生教育における臨床の早期導入とシミュレーション教育の活用について提言した。
4.問題解決を指向したシナリオ・シミュレーションの作成
1)現場での行動変容が期待できる教育設計を試みた。
2)研修医用シミュレーションを作成して教育効果を検討した。
5.指導者養成
1)国際標準の指導者技能記述ibstpi instructor competency (IIC) の研修効果を検討した。
2)指導者養成を遠隔教育で試みた。
6.遠隔教育
1)ITの適応を検討した。
2)自施設事例のプログラムを遠隔操作でインストールしたシミュレータを用いて研修効果を検証した。
3)学会認定コースを遠隔操作による研修で申請した。
7.シミュレーション教育の実臨床現場での効果を検証した。
結果と考察
1.シミュレータ教育研修システム化
1)システム設計に基づいて、クラウド上にインターネットサイトを開設した。サイト上で研修の事前テストにe-ラーニングを用いたところ有効性が確認された。
2)各種ITを検討してシステム設計と実装を行った結果、効率向上が示された。
2.e-ラーニングの開発・活用
人材育成では職場での行動変容を指向すべきである。学習履歴は人材活用にも有用である。
3.教授法
1)医療教授システムの目標は標準的な医療を確実かつ安全に実践できる医療者の育成である。
2)Rapid Response Systemのシミュレーション研修は有効な行動変容を促した。
3)米国ではフルスケール・シミュレータ教育を活用して、医学部1年生から実践的な臨床実習を行っている。本邦でも、導入が期待される。
4.問題解決を指向したシナリオ・シミュレーションの作成
1)IDに基づいてシナリオを作成した。課題に見合った研修と職場での実践を組み込むことにより行動変容が期待された。
2)実事例をフルスケール・シミュレーションで再現し、8分間の研修を行った結果、初期研修医の臨床経験を補う体験として有効であった。
5.指導者養成
1)IICのコンピテンシーを用いた指導者養成は、指導技能が実践される場面が確認され、自己学習促進に作用した。
2)遠隔支援教育で指導者養成を行った結果、自立支援の役割が確認できた。
6.遠隔教育
1)遠隔教育にITを適応した結果、遠隔地でも情報共有が可能となり、地域差解消に有効と思われた。
2)自施設でシナリオを起案して専門職にプログラミングを依頼、遠隔操作によるシミュレータへのシナリオインストールと動作確認が実証できた。自施設での研修は有用であった。
3)遠隔操作による2次救命処置講習会が日本救急医学会で認定された。
7.シミュレーション教育の実臨床現場での効果・有効性が確認された。
結論
1)シミュレータ教育研修システムを構築した。
2)各種ITの適応とIDに基づく教育プログラムの導入により、教育の効率向上と臨床現場での行動変容が期待できる。また遠隔教育により地域に限定されない人材育成・指導者養成が期待できる。
3)IICの18項目のコンピテンシーは指導者養成に有用であった。
4)遠隔操作による研修が学会認定研修として承認された。
5)遠隔操作でシミュレータへのプログラムインストールが可能であり、遠隔地でも施設に応じた有用な研修ができた。
6)シミュレーション教育が医療現場での患者救命に有効であることが示唆された。
7)今後、教育効果の向上、臨床現場の教育効果の蓄積とともに、遠隔教育による地域医療への貢献、災害対応、国際貢献なども視野に入れて研究を進める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201325011C

収支報告書

文献番号
201325011Z