文献情報
文献番号
201325009A
報告書区分
総括
研究課題名
医療事故に対する医療機関内における包括的対応マネジメントモデルに関する研究
課題番号
H24-医療-一般-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 英夫(名古屋大学 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 相馬 孝博(公益財団法人日本心臓血圧研究振興附属榊原記念病院)
- 兼児 敏浩(三重大学医学部附属病院)
- 鳥谷部 真一(渋木 真一)(新潟大学危機管理本部危機管理室)
- 吉井 新平(医療法人立川メディカルセンター立川綜合病院)
- 土田 正則(新潟大学大学院医歯学総合研究科)
- 遠山 信幸(自治医科大学医学部)
- 藤澤 由和(静岡県立大学経営情報学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,425,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本邦においては、これまで「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」「産科医療補償制度」など、医療事故に関わる紛争解決のための方策が模索され、これらは一定程度の成果をもたらしてきたといえるが、医療紛争に最前線で直面する各医療機関にとっては、たんなる紛争対応に留まらない、より踏み込んだ医療安全を確立するための組織支援のためのスキームが求められている。
本研究は個別の医療機関が紛争に対して、包括的に対応しうるための具体的な方策や資源として、医療機関内において事故調査を実施するための標準化された調査プロトコル、それらによる結果を踏まえての医療事故調査委員会の実施および報告書作成のためのマニュアル、事故発生時から報告書の引渡しまでにわたって患者およびその家族に対する一貫した情報開示のためのプロトコルなどからなる、医療事故に対する医療機関内における「事故対応」およびそれに関わる「情報開示」のあり方からなる、包括的対応マネジメントモデルの提示とそのためのガバナンスのあり方を明らかにすることを目的とした。
本研究は個別の医療機関が紛争に対して、包括的に対応しうるための具体的な方策や資源として、医療機関内において事故調査を実施するための標準化された調査プロトコル、それらによる結果を踏まえての医療事故調査委員会の実施および報告書作成のためのマニュアル、事故発生時から報告書の引渡しまでにわたって患者およびその家族に対する一貫した情報開示のためのプロトコルなどからなる、医療事故に対する医療機関内における「事故対応」およびそれに関わる「情報開示」のあり方からなる、包括的対応マネジメントモデルの提示とそのためのガバナンスのあり方を明らかにすることを目的とした。
研究方法
「医療機関内において事故調査を実施するための標準化された調査プロトコル」という課題に関しては、標準化事故調査プロトコルの実際の適応に際しての論点の洗い出しとそれに基づく調整作業を踏まえ、具体的な事故調査における当該プロトコルの妥当性、現実性などに関しての検討を行った。「医療事故調査委員会の実施および報告書作成マニュアル」という課題に関しては、院内事故調査委員会に関わる諸要素の適応範囲の確定とその論点の検証を踏まえ、具体的な状況下における検証をおこなった。「事故発生時から報告書の引渡しまでにわたって患者およびその家族に対する一貫した情報開示のあり方」という課題に関しては、関係者への事故情報開示に関わる具体的なプロトコルとその具体的な適応に関する理論的な検討を実施し、それに基づいた実際の情報提示における論点の洗出しを行った。これら三つの課題の統合的な課題である、医療機関内における包括的なマネジメントモデルに関しては、実務関係者らの現状認識に関する定量データを構築し検討を行う中で、それを支えるガバナンスのあり方に関する検討を行った。
結果と考察
本研究により以下の点が明らかとなった。まず本研究における事故調査プロトコルは基本的に有効であるが、その適応範囲の明確化が必要であることが明らかとされ、さらに標準化された事故調査プロトコルを実際に運用するに際して、最終的にプロトコルにどの程度までコンプライアンスを求め、どの程度までその医療機関独自の状況に合わせた柔軟性を認めるかという点が大きな課題とされた。
事故調査委員会の実施および報告書作成のためのマニュアルに関しては、事故調査委員会の諸要素、具体的な事故調査の実施環境との適合性に関しての検討を行い、その諸要素の適応範囲に関して、医療事故調査委員会を医療機関内部で実施する際の資源的制約との関連性が示された。
事故情報の開示に関しては、中でもいわゆる標準化された基準と個別組織における具体的な状況、さらには個別事案の特殊性を加味した形で、具体的な事故情報の開示とその効果を検証する必要があるとの結論に至った。
事故調査委員会の実施および報告書作成のためのマニュアルに関しては、事故調査委員会の諸要素、具体的な事故調査の実施環境との適合性に関しての検討を行い、その諸要素の適応範囲に関して、医療事故調査委員会を医療機関内部で実施する際の資源的制約との関連性が示された。
事故情報の開示に関しては、中でもいわゆる標準化された基準と個別組織における具体的な状況、さらには個別事案の特殊性を加味した形で、具体的な事故情報の開示とその効果を検証する必要があるとの結論に至った。
結論
本研究において検討を行い、具体的にその提示を行った医療機関内において事故調査を実施するための標準化された調査プロトコル、それらによる結果を踏まえての医療事故調査委員会の実施および報告書作成のためのマニュアル、事故発生時から報告書の引渡しまでにわたって患者およびその家族に対する一貫した情報開示のためのプロトコルは、医療機関における具体的な事故対策の根幹を成すものであるといえる。ただし、これらが一貫性を欠いた形でバラバラに実施された場合、その成果はかなり限定的なものとならざるをえず、こうした個々の対策を束ねる形で、包括的なマネジメントの体制の構築が求められる。さらにこうしたマネジメント体制の構築には、我が国の医療機関における新たなガバナンスの構築も必要である。
公開日・更新日
公開日
2015-05-19
更新日
-