医療広報におけるソーシャルメディアの可能性

文献情報

文献番号
201325006A
報告書区分
総括
研究課題名
医療広報におけるソーシャルメディアの可能性
課題番号
H24-医療-一般-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
成松 宏人(山形大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 敦(山形大学 工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Twitterの医療(医療機関・患者)における利用実態を明らかにする。
研究方法
1)ソーシャルメディアを用いた医療広報の現状分析
Twitter上で公開されている各ユーザーのプロフィールについて,検索を行った。プロフィールに医療機関の名称が記載されているユーザー数を調べ,それらのツイートの特徴および詳細を明らかにする。
2)生活習慣病とツイッター:がん患者コミュニティーとの比較
平成25年度に開発した手法を利用して生活習慣病に関するTwitterの利用実態を明らかにするために,Twitter上のアカウント間のコミュニケーションネットワークとツイートに含まれる単語の共起ネットワークを分析する。
結果と考察
1)ソーシャルメディアを用いた医療広報の現状分析
 診療科によってTwitterの利用状況が異なる結果となった。歯科,美容外科など自由診療と関係がある診療科のアカウントが多く,内科や外科,小児科など一般的な診療科のアカウント,および,総合病院のアカウントは少なかった。特に小児科のアカウントは少なく,今回の調査で発見できたのは1アカウントであった。情報リテラシーの高い世代である若い母親に育児に関する情報,子どもの病気など小児科診療に関する情報をツイートすることは有用ではないかと思われる。
ツイートの内容に関して,歯科・口腔外科は自身の施設へのリンクを記述するアカウントが多かったが,ツイートには「インプラント」,「虫歯」,「予防」などの名詞が頻出しており,歯科診療に関するツイートが多いと考えられる。美容外科・形成外科・皮膚科では診療案内に関するツイートが多くみられた。そのクリニックで実施している手術の紹介や診療時間,手術担当医師の勤務時間のツイートの他,具体的な費用についてツイートしているアカウントもみられた。ツイートに「予約」,「キャンペーン」,「問い合わせ」といった語が多く,自由診療と関係がある美容外科,形成外科では患者を誘導するための広告として使われていたと考えられる。実際,広告は37.5%をしめていた。これらのツイートのあとにはほとんどその医療機関へのリンクが記載されており,Twitterはユーザー自身のページヘ導くためのツールとして使われていると考えられた。

2) 生活習慣病とツイッター:がん患者コミュニティーとの比較
 生活習慣病とがんのネットワークを比較すると,
がんでは「手術」「抗がん剤」「放射線」といった治療法を表す単語の種類が多く,全てのネットワークに対して少なくても1つはこれらの単語が出現しているのに対し,生活習慣病では糖尿病と高血圧にのみ「薬」,糖尿病にのみ「インスリン」「手術」という単語が現れた。脳卒中,心臓病には治療法を表す単語は1つも出現しなかった。このことから,生活習慣病では治療に関するツイートは少なく,生活習慣を含めた一般的な内容のツイートが多いことが考えられる。
 また,一般的な単語を除外したネットワークを見ると,糖尿病では「尿」,高血圧では「病」,脳卒中では「性」がハブとなっている。心臓病は細かいコミュニティに分割された。このことから,生活習慣病のツイートでも病気に関する会話がされていることが分かる。しかし,元のネットワーク図と一般の単語を除外したネットワーク図を比較すると,ノード,リンク共に生活習慣病では大きく減少している。
 このことからも,生活習慣病の患者は病気に関するツイート以上に多くの普段の会話をツイートしていることが考えられる。
結論
 Twitterは広告など商業目的に多く利用されており,診療科によって活用の程度に違いがあることが明らかになった。
 一方で,Twitter上で交される生活習慣病に関する情報は,がん患者による情報と異なり,より生活に密着したものが多いことが明らかになった。生活習慣病を抱えている人は,病気に関することだけでない普段の会話にソーシャルメディアを利用している割合が高いことが推察された。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201325006B
報告書区分
総合
研究課題名
医療広報におけるソーシャルメディアの可能性
課題番号
H24-医療-一般-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
成松 宏人(山形大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 敦(山形大学 工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Twitterの医療(医療機関・患者)における利用実態を明らかにし、医療広報への活用方法を提言する。
研究方法
1 がん患者におけるツイッター利用度調査・解析
2 情報工学的手法を用いた網羅的ツイッター解析(がん・生活習慣病)
3 医療広報の現状分析
結果と考察
我々は,開発したTwitterのツイート内容の網羅的解析手法を使用し,がんや生活習慣病患者のツイート解析を行ったところ,Twitterを用いた活発な患者間コミュニケーションが行われていることが明らかになった。
 ツイートの共起ネットワークに関しては,どの疾患においても密な構造が観察された。その中でも食道癌等いくつかの疾患において,2つのコミュニティが確認され,それぞれのコミュニティはある意味を持ったものとなっている。たとえば食道癌においては,治療に関する専門的なものと食生活にかかわる日常的なものとに概ね大別された。
 一方で,生活習慣病とがんのネットワークと比較すると,がんでは「手術」「抗がん剤」「放射線」といった治療法を表す単語の種類が多く,全てのネットワークに対して少なくても1つはこれらの単語が出現しているのに対し,生活習慣病では糖尿病と高血圧にのみ「薬」,糖尿病にのみ「インスリン」「手術」という単語が現れた。脳卒中,心臓病には治療法を表す単語は1つも出現しなかった。このことから,生活習慣病では治療に関するツイートは少なく,生活習慣を含めた一般的な内容のツイートが多いことが考えられた。
 上述の様に患者レベルでは全て活用されているTwitterではあるが,医療広報としての活用に関しては診療科によってかなりのばらつきがあることが明らかになった。たとえば,歯科,美容外科など自由診療と関係がある診療科のアカウントは多く,内科や外科,小児科など一般的な診療科のアカウント,および,総合病院のアカウントは少なかった。特に小児科のアカウントは少なく,今回の調査で発見できたのは1アカウントであった。また,ツイートの内容に関して,歯科・口腔外科は自身の施設へのリンクを記述するアカウントが多かったが,ツイートには「インプラント」,「虫歯」,「予防」などの名詞が頻出しており,歯科診療に関するツイートが多いと考えられた一方で,美容外科・形成外科・皮膚科では診療案内に関するツイートが多くみられた。そのクリニックで実施している手術の紹介や診療時間,手術担当医師の勤務時間のツイートの他,具体的な費用についてツイートしているアカウントもみられた。ツイートに「予約」,「キャンペーン」,「問い合わせ」といった語が多く,自由診療と関係がある美容外科,形成外科では患者を誘導するための広告として使われていると考えられた。実際,広告は37.5%をしめていた。これらのツイートのあとにはほとんどその医療機関へのリンクが記載されており,Twitterはユーザー自身のページヘ導くためのツールとして使われていると考えられた。
 このように患者間ではTwitterは医療情報の情報交換ツールとして活用されている一方で,医療機関では一部の診療科で限られた用途でしか主に利用されていない実態が明らかになった。
結論
 患者間で活用されているように医療広報として活用されるならば,ホームページ上で行えないような医療広報が可能になると期待され,同時に患者側からの活動ニーズが上がってくると考えられる。たとえば,診察の待ち時間からインフルエンザなどの流行情報の発信,季節にあわせた健康情報の発信など医療機関側からのリアルタイムの情報の発信をすることは,医療機関と市民との間で医療情報を共有する上では非常に有用だろう。
 これらの効率的な医療広報を行うために,我々は以下の提言を行う。
・ 発信者情報の開示と担保
インターネット上の情報は極めて多いため情報そのものだけではなく,特にその正確性が市民にとっては重要になる。たとえばTwitter上で提供されている本人認証のツールなどを利用し,発信元(個人として行っているのか,機関としてオフィシャルに行っているのか)を積極的に開示することで,情報の正確性の担保につながると考えられる。
・ 医療従事者のインターネットリテラシーの向上
発信者がソーシャルメディアを活用するためには利点,欠点の理解を含むインターネットリテラシーの向上が不可欠である。しかし,現在の医学教育には,もちろんそのようなカリキュラムはなく,生涯教育としての機会を設けるべきであろう。
・ ソーシャルメディア研究の活性化
ソーシャルメディア研究に支援を行うことで事例研究や応用研究を活発化し,成果を医療機関へ広く開示することにより,その活用が促進されると期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201325006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 本研究において、いわゆるビッグデータであるツイッター情報から医療に関係する情報を抽出する手法を開発した。この手法が普及することにより、ツイッターなどのソーシャルメディア上のテキスト情報の解析研究が加速することが期待される。
 また、本研究成果を基盤にした、ソーシャルメディアを利用した医療情報の共有システムの実装が可能になった。今後の開発・実装研究が期待される。
臨床的観点からの成果
 研究成果を活用し、患者間で活用されているように医療広報として活用されるならば,ホームページ上で行えないような医療広報が可能になると期待され,同時に患者側からの活動ニーズが上がってくると考えられる。たとえば,診察の待ち時間からインフルエンザなどの流行情報の発信,季節にあわせた健康情報の発信など医療機関側からのリアルタイムの情報の発信をすることは,医療機関と市民との間で医療情報の共有を促進することが期待される。
ガイドライン等の開発
本研究にて医療広報においてのソーシャルメデイア活用のための提言を行った。この提言が今後の医療広報のガイドライン作成に資することが期待される。
その他行政的観点からの成果
本研究にて医療広報においてのソーシャルメデイア活用のための提言を行った。この提言が今後の医療広報の展開においての医療行政に活用されることが期待される。
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sugawara Y, Narimatsu H, Hozawa A et al.
Cancer patients on Twitter: a novel patient community on social media
BMC Res Notes , 5 , 699-  (2012)
原著論文2
Atsushi Tsuya, Yuya Sugawara, Atsushi Tanaka et al.
Do Cancer Patients Tweet? Examining the Twitter Use of Cancer Patients in Japan
JOURNAL OF MEDICAL INTERNET RESEARCH , in press  (2014)
原著論文3
Sugawara Y, Narimatsu H, Tsuya A, Tanaka A, Fukao A
Medical Institutions and Twitter: A Novel Tool for Public Communication in Japan.
JMIR Public Health Surveill , 2 (1) , e19-e19  (2016)
10.2196/publichealth.4831

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
2018-06-06

収支報告書

文献番号
201325006Z