歯科疾患の疾病構造及び歯科医療需要等の変化に応じた新たな歯科医療の構築に関する研究

文献情報

文献番号
201325002A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科疾患の疾病構造及び歯科医療需要等の変化に応じた新たな歯科医療の構築に関する研究
課題番号
H24-医療-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 宏子(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎 哲則(日本大学 歯学部)
  • 小坂 健(東北大学大学院 歯学研究科)
  • 大内 章嗣(新潟大学大学院 医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
超高齢社会における歯科医療の需要と今後の歯科医療の提供体制について把握するために、平成24年度の研究事業に引き続き、「高齢期の地域住民における口腔機能低下の現状分析」と、今後の歯科医療の供給体制を支える「20歳代歯科医師のキャリア動向への影響要因の分析」を行った。また、本年度では新たに「在宅要介護高齢者への歯科検診実施体制の現状把握」と「歯科医師数の将来予測プログラムの改良」を加え、需要と供給の両面から、今後の歯科医療の提供体制の在り方について検討を行った。
研究方法
「高齢者の口腔機能低下の現状分析」は地域在住高齢者の咬合状態、咀嚼や摂食・嚥下等の口腔機能と健康関連QOLについて、共分散分析を用いて調べた。「20歳代歯科医師のキャリア動向への影響要因の分析」については、全国の歯科大学・大学歯学部に対してキャリア教育の実施状況とその内容を調べた。「在宅要介護高齢者への歯科検診実施状況の現状把握」については、全自治体を対象として在宅要介護高齢者への歯科検診実施状況を調べた。「歯科医師数の将来予測」については、人口10万人に対する歯科医師数のシミュレーション分析を行った。
結果と考察
地域在住の自立高齢者においては、「咬合」「咀嚼」「嚥下」の3要因は連動し合い、最終的に健康関連QOLの向上に寄与することが明らかになった。また、義歯装着者率は6割以上と高率であったが、そのうちの約4分の1は義歯不適合者であった。在宅要介護高齢者における歯科検診の実施状況は全般的に低率であり、政令指定都市や特別区以外の自治体では1割未満であった。各歯科大学でのキャリア教育は臨床研修歯科医のキャリア展望に大きな影響を与えていた。また、キャリア教育の取組状況は各歯科大学間で大きな格差があった。人口10万人対の歯科医師数は、人口の減少に伴い経年的に増加すると推計された。
 これらのことより、高齢者のQOLを保つ上でも、適切な口腔機能を管理し、健全な咬合状態を保ち、摂食・嚥下機能を維持することが極めて重要であることが示唆された。また、そのための有力なアプローチ方法である歯科検診については、残念ながら多くの自治体にて十分に提供されていない状況が明らかになった。在宅要介護高齢者に対する歯科検診の現時点での実施率が1割未満の自治体が多かったことより、今後、高齢者に対する歯科検診の提供体制の改善を図ることが急務である。一方、シミュレーション分析によって単位人口あたりの歯科医師数は今後の増加が予測された。併せて臨床研修歯科医の今後の就業状況に、キャリア教育受講の有無が大きく係ることが示唆されたことは、臨床研修教育の今後のカリキュラムにも大きな影響を与えると考えられる。
結論
高齢期の地域住民において、「咬合」「咀嚼」「嚥下」は相互に関連し合い、身体的健康や精神的健康に係るQOLに大きな影響を与えることが示唆された。高齢期の口腔機能管理を図るためには、在宅要介護高齢者に対する歯科検診を推進することが必要であるが、その実施率は、多くの自治体で低かった。また、人口10万人に対する今後の歯科医師数は増加することが推計された一方、臨床研修歯科医のキャリア動向はキャリア教育の受講の有無が大きな影響を与えることが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201325002B
報告書区分
総合
研究課題名
歯科疾患の疾病構造及び歯科医療需要等の変化に応じた新たな歯科医療の構築に関する研究
課題番号
H24-医療-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 宏子(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎 哲則(日本大学 歯学部)
  • 小坂 健(東北大学大学院 歯学研究科)
  • 大内 章嗣(新潟大学大学院 医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
超高齢社会における歯科医療の需要と今後の歯科医療の提供体制について把握するために、①高齢期の地域住民における口腔機能低下リスク保有状況の調査、②要介護高齢者等への歯科検診実施状況の把握、③歯科補てつ物製作における歯科医師と歯科技工士間の情報共有の現状把握、④臨床研修歯科医師のキャリア展望に関する調査研究、⑤単位人口当たりの歯科医師数の推計といった5つの研究プロジェクトを行った。
研究方法
高齢期の地域住民における口腔機能低下リスクの保有状況に関する研究においては、自治体の協力を得てフィールド調査を行い、高齢期の摂食・嚥下機能や構音機能について、地域で実施可能な評価指標を用いて実態把握を行った。摂食・嚥下機能評価については質問紙による地域高齢者誤嚥リスク評価指標を用い、構音機能評価については定量的評価指標のひとつであるオーラルディアドコキネシスを用いた。要介護高齢者等への歯科検診実施状況については、全国のすべての市町村を対象とした自記式質問紙によって調査を行った。また、歯科補てつ物製作における歯科医師と歯科技工士間の情報共有の現状把握については、東京都歯科医師会と東京都歯科技工会の会員の双方に調査を行い、両者の認識の相違を明らかにした。臨床研修歯科医師のキャリア展望については、全国の臨床研修歯科医を対象とした実態調査を行い、将来希望する歯科領域や開業の意向等を調べ、これらの将来設計に影響を及ぼす要因について分析した。また、単位人口あたりの歯科医師数の推計については、これまでの厚労科研の研究知見と国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口データをもとに、人口10万人に対する歯科医師数についてシミュレーションを行った。
結果と考察
地域在住高齢者における口腔機能に関する調査の結果、自立高齢者であっても経年的に嚥下機能は低下し、後期高齢者では約半数の者に誤嚥リスクが認められた。また、誤嚥リスクと定量的構音評価であるオーラルディアドコキネシス評価値は、有意な関連性を示した。要介護高齢者等への歯科検診実施状況は、人口規模によって実施率に大きな格差が認められ、政令指定都市と特別区においては約2割の実施率であったが、中核市や保健所設置市ならびにその他の市町村では1割未満の低い実施率であった。歯科補てつ物製作における情報共有の現状を調べたところ、歯科技工指示書のみで十分な情報共有が図られていると回答した者は、歯科医師側で45.1%であったが、歯科技工士側では25.2%と有意に低い値を示した。これらのことより、より質の高い歯科補てつ物製作のためにはICT技術等を活用し、さらなる情報共有を図る必要性があると考えられた。一方、臨床研修歯科医師におけるキャリア展望の全国調査の結果、キャリア教育受講の経験の有無が将来設計に大きな影響を与えていることが明らかになった。また、シミュレーション分析の結果、人口10万人に対する歯科医師数は経年的に上昇を続け、2035年には93.9人に達することが推計された。
結論
在宅要介護高齢者に対する歯科検診実施体制は、現時点では極めて脆弱であり、提供体制を強化する必要がある。また、自立高齢者においても口腔機能の低下リスクを有する者が高率であることから、高齢者歯科検診には妥当性・信頼性のある評価尺度で機能評価を行う必要性が示唆された。一方、歯科補てつ物製作における歯科医師と歯科技工士間の情報共有に関する認識には職種間で大きな格差があることが明らかになった。供給面に着目したシミュレーション推計の結果、人口10万人対の歯科医師数は今後も経年的に上昇することが予測された。また、臨床歯科医師のキャリア展望調査からは開業志向が依然として強く、キャリア教育受講の経験が将来設計に影響を与えていることが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201325002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
高齢期の口腔機能に関する調査研究においては、咬合状態や摂食・嚥下ならびに構音などを定量的に評価することが難しく、詳細な実態把握と要因分析がこれまで十分になされてこなかった。本研究事業では、我々のこれまでの研究知見をもとに、可能な限り口腔機能を定量化し、その低下リスク者の現状について明らかにした。また、共分散分析を行うことにより、交絡要因等を調整した上での相互関連性を把握することができ、高齢期の口腔機能がQOLの良否に密接に関連していることが示された。
臨床的観点からの成果
本研究によって、地域在住高齢者の歯科治療ニーズも明らかになり、義歯装着者であっても、その義歯が不適合な者も多く、義歯治療の必要性が高いものが潜在的に高率であることが示唆された。わが国の義歯装着率は高率であるといわれているが、義歯の管理も含めた口腔管理の視点が必要であることが示唆された。
ガイドライン等の開発
本研究では、高齢期の歯科口腔保健ニーズに関する分析を行っており、、高齢期の歯科医療ガイドラインや高齢者への歯科検診マニュアルを策定するための基礎的指針を提示した。また、臨床研修歯科医のキャリア展望に関する調査研究においては、歯科医師臨床研修や大学学部教育におけるキャリア教育の必要性を示唆しており、今後の歯科医師臨床研修カリキュラムにも大きな影響を与えた。
その他行政的観点からの成果
在宅要介護高齢者に対する歯科検診の全国的な実施状況を調べた最初の報告である。歯科口腔保健法の第9条において、障害者や介護を必要とする高齢者が定期的に歯科検診を受けることができるために必要な措置を講じることが定められているが、そのためにも現在の検診提供状況を把握することは必要不可欠である。また、歯科医師の需給問題を検討するための基盤的資料として、歯科医師の資質向上に関する検討会等で活用された。
その他のインパクト
これまでの歯科医師数の将来推計では、総数としての推移のシミュレーションを行っており、単位人口あたりの推計は十分になされてこなかった。今回、人口減少の要素を踏まえて、人口10万人対の歯科医師数の推計を行ったことより、より実態を反映したシミュレーションが可能となった。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Miura H, Sato K, Hara S, et al.
Development of masticatory indicator using checklist of chewable food items for the community-dwelling elderly
ISRN Geriatrics  (2013)
10.1155/2013/194693
原著論文2
原修一、三浦宏子、山崎きよ子
地域在住の55歳以上の住民におけるオーラルディアドコキネシスの基準値の検討
日本老年医学会誌 , 50 , 258-263  (2013)
原著論文3
三浦宏子、原修一、森崎直子、他
地域高齢者における活力度指標と摂食・嚥下関連要因との関連性
日本老年医学会誌 , 50 , 110-115  (2013)
原著論文4
長谷晃広、相田潤、坪谷透、他
キャリア教育と研修歯科医の将来設計の関係:全国の研修歯科医を対象とした横断研究
口腔衛生学会雑誌 , 50 , 276-282  (2015)
原著論文5
小山史穂子、相田潤、長谷晃広、他
出身大学によって幼児への歯磨剤の資料の推奨は異なるのか-臨床研修歯科医師を対象とした調査結果-
口腔衛生学会雑誌 , 65 , 417-421  (2015)

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
2019-05-23

収支報告書

文献番号
201325002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,200,000円
(2)補助金確定額
2,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 162,461円
人件費・謝金 706,131円
旅費 343,846円
その他 987,067円
間接経費 0円
合計 2,199,505円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
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