文献情報
文献番号
201324149A
報告書区分
総括
研究課題名
ATR-X症候群の臨床研究および基礎研究のための基盤整備に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-難治等(難)-一般-033
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
和田 敬仁(京都大学医学部医学研究科 医療倫理学・遺伝医療学分野)
研究分担者(所属機関)
- 小坂 仁(自治医科大学 小児科)
- 黒澤 健司(神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
- 田辺 秀之(総合研究大学院大学 先導科学研究科)
- 岡本 伸彦(大阪府立母子保健総合医療センター 遺伝診療科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我々の研究の対象としているX連鎖性αサラセミア・精神遅滞(ATR-X:X-linked α-thalassemia/Mental Retardation)症候群は、重度精神遅滞、特異顔貌、サラセミア、性分化異常、骨格異常、行動異常など多彩な症状を特徴とする奇形症候群であり、その責任遺伝子ATRXはX染色体に局在する、X染色体連鎖性精神遅滞症候群の一つである。
ATR-X症候群は、日本国内には約80名、世界的にも約200症例程度が診断されていると推測される、「稀少疾患」であるが、本症候群が周知されておらず、診断されていない症例が多数存在することが推測されている。また、症例が少ないために、医療情報が不足し、患者・ご家族が不利益を被っている。
平成25年度以降は以下を目標とした。1.作成した臨床診断の妥当性の評価、2.患者の臨床情報のデータベース化の継続、3.家族会の開催による臨床情報をの共有化、4.わが国のエビデンスに基づいた診断・診療および治療指針の作成、5.患者検体のリサーチリソースの構築と病態解明の基礎研究を推進
ATR-X症候群は、日本国内には約80名、世界的にも約200症例程度が診断されていると推測される、「稀少疾患」であるが、本症候群が周知されておらず、診断されていない症例が多数存在することが推測されている。また、症例が少ないために、医療情報が不足し、患者・ご家族が不利益を被っている。
平成25年度以降は以下を目標とした。1.作成した臨床診断の妥当性の評価、2.患者の臨床情報のデータベース化の継続、3.家族会の開催による臨床情報をの共有化、4.わが国のエビデンスに基づいた診断・診療および治療指針の作成、5.患者検体のリサーチリソースの構築と病態解明の基礎研究を推進
研究方法
患者の臨床情報解析のための臨床的研究
1.患者臨床情報の収集およびデータベースの作成(和田、黒澤、岡本)
2.患者データベースの管理(和田)
現在までに、全国の医療機関から紹介された80名の患者の医療情報を登録した.
3.診断基準(案)の作成(和田、黒澤,岡本)
4. エビデンスに基づいた診療手引きの作成と健康管理方法の検討(和田、黒澤、岡本)
5.患者・家族や医療者を対象にした情報提供(和田、黒澤,小坂)
ホームページを作成、および、X連鎖αサラセミア・精神遅滞症候群( ATR-X症候群)患者さんに関わる皆さんのための勉強会を開催した.
1.患者臨床情報の収集およびデータベースの作成(和田、黒澤、岡本)
2.患者データベースの管理(和田)
現在までに、全国の医療機関から紹介された80名の患者の医療情報を登録した.
3.診断基準(案)の作成(和田、黒澤,岡本)
4. エビデンスに基づいた診療手引きの作成と健康管理方法の検討(和田、黒澤、岡本)
5.患者・家族や医療者を対象にした情報提供(和田、黒澤,小坂)
ホームページを作成、および、X連鎖αサラセミア・精神遅滞症候群( ATR-X症候群)患者さんに関わる皆さんのための勉強会を開催した.
結果と考察
ATR-X病態解析のための基礎的研究
6.細胞および分子遺伝学的解析(和田、小坂、黒澤)
現在までに、全国の医療機関から紹介された80名の患者の分子遺伝学的診断をおこなっている.25年度中は、10例の検体を依頼され、うち4例でATRX遺伝子の変異を同定し、分子遺伝学的に確定診断した.
7.患者検体の保存とリサーチリソースとしての活用(和田、黒澤、岡本)
現在までに患者の皮膚線維芽細胞からiPS細胞の作成(熊本大学 発生医学研究所幹細胞部門 幹細胞誘導分野 江良択実教授)を行い、樹立(1例)あるいは樹立中(2例)である.
8.病態解明のための3D-FISH法を用いた細胞分子遺伝学的な検討(田辺)
3D-FISH法を用いた細胞機能学的解析を行い、ATRX遺伝子と標的遺伝子の一つであるαグロビン遺伝子との空間配置を解析し、患者由来細胞においては正常者由来細胞とは異なる挙動を示した.
9.Atrxモデルマウスを用いた病態研究と患者さんへの臨床応用の検討(和田)
東北大学大学院薬学部塩田倫史先生がAtrxモデルマウスを用いて病態解析をされている.また、本研究により樹立されたiPS細胞を用いた病態解析が始まっている.
10.海外研究グループとの情報交換および国際的な診断基準作成(和田)
Oxford大学RJ Gibbons教授の来日により、”Understanding the role of the chromatin remodeling factor ATRX in health and disease”のタイトルでご講演いただき、臨床および基礎的研究における情報交換を行った(平成26年3月21日).
6.細胞および分子遺伝学的解析(和田、小坂、黒澤)
現在までに、全国の医療機関から紹介された80名の患者の分子遺伝学的診断をおこなっている.25年度中は、10例の検体を依頼され、うち4例でATRX遺伝子の変異を同定し、分子遺伝学的に確定診断した.
7.患者検体の保存とリサーチリソースとしての活用(和田、黒澤、岡本)
現在までに患者の皮膚線維芽細胞からiPS細胞の作成(熊本大学 発生医学研究所幹細胞部門 幹細胞誘導分野 江良択実教授)を行い、樹立(1例)あるいは樹立中(2例)である.
8.病態解明のための3D-FISH法を用いた細胞分子遺伝学的な検討(田辺)
3D-FISH法を用いた細胞機能学的解析を行い、ATRX遺伝子と標的遺伝子の一つであるαグロビン遺伝子との空間配置を解析し、患者由来細胞においては正常者由来細胞とは異なる挙動を示した.
9.Atrxモデルマウスを用いた病態研究と患者さんへの臨床応用の検討(和田)
東北大学大学院薬学部塩田倫史先生がAtrxモデルマウスを用いて病態解析をされている.また、本研究により樹立されたiPS細胞を用いた病態解析が始まっている.
10.海外研究グループとの情報交換および国際的な診断基準作成(和田)
Oxford大学RJ Gibbons教授の来日により、”Understanding the role of the chromatin remodeling factor ATRX in health and disease”のタイトルでご講演いただき、臨床および基礎的研究における情報交換を行った(平成26年3月21日).
結論
1)達成度について
臨床研究においては、上述したように日本国内の患者の9割以上を把握していると推定され、そのデータベースは充実しつつあると評価される.
基礎研究に関しても、病態解明に関するデータが蓄積され、また、それを検証するiPS細胞の樹立も進んでおり、今後の基礎研究の推進が期待される.
とくに、ある化学物質が治療法の候補となっており、患者への投与に向け、準備が進められている.
2)研究成果の学術的・国際的・社会的意義について
ATR-X症候群に関する臨床研究は世界では数少ないが、Oxford大学RJ Gibbons教授とは定期的に情報交換し,今後国際的なデータを発表していくことが期待される.
3) 今後の展望について
臨床、基礎研究とも一層の充実が期待される.
4)研究内容の効率性について
臨床研究を進める上での全国の主治医からの患者の紹介や医療情報の収集を今後も継続していく.
基礎研究に関しては、本研究による検体数の充実、iPS細胞化が進められており、また、基礎研究者との共同研究も継続しており、来年度以降の研究の進展が期待される.
臨床研究においては、上述したように日本国内の患者の9割以上を把握していると推定され、そのデータベースは充実しつつあると評価される.
基礎研究に関しても、病態解明に関するデータが蓄積され、また、それを検証するiPS細胞の樹立も進んでおり、今後の基礎研究の推進が期待される.
とくに、ある化学物質が治療法の候補となっており、患者への投与に向け、準備が進められている.
2)研究成果の学術的・国際的・社会的意義について
ATR-X症候群に関する臨床研究は世界では数少ないが、Oxford大学RJ Gibbons教授とは定期的に情報交換し,今後国際的なデータを発表していくことが期待される.
3) 今後の展望について
臨床、基礎研究とも一層の充実が期待される.
4)研究内容の効率性について
臨床研究を進める上での全国の主治医からの患者の紹介や医療情報の収集を今後も継続していく.
基礎研究に関しては、本研究による検体数の充実、iPS細胞化が進められており、また、基礎研究者との共同研究も継続しており、来年度以降の研究の進展が期待される.
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
-