遺伝学的検査の実施拠点の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
201324146A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝学的検査の実施拠点の在り方に関する研究
課題番号
H25-難治等(難)-一般-030
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
辻 省次(東京大学 医学部附属病院 )
研究分担者(所属機関)
  • 松原 洋一(国立成育医療研究センター研究所)
  • 奥山 虎之(国立成育医療研究センター研究所)
  • 後藤 雄一(国立精神・神経医療研究センター神経研究所)
  • 斎藤 加代子(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター)
  • 宮地 勇人(東海大学医学部基盤診療学系)
  • 福嶋 義光(信州大学医学部)
  • 古川 洋一(東京大学・医科学研究所)
  • 難波 栄二(鳥取大学生命機能研究支援センター )
  • 秋山 真志(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 野口 佳裕(東京医科歯科大学医学部附属病院)
  • 森田 啓行(東京大学大学院医学系研究科)
  • 小崎 健次郎(慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センター)
  • 青木 正志(東北大学病院神経内科)
  • 小野寺 理(新潟大学脳研究所)
  • 松田 文彦(都大学大学院医学研究科)
  • 梅澤 明弘(国立成育医療研究センター研究所)
  • 松本 直通(横浜市立大学医学研究科)
  • 岡本 伸彦(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 山内 泰子(川崎医療福祉大学)
  • 武藤 香織(東京大学医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
15,980,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
次世代シーケンサーを診療に用いる場合に,薬事承認の課題,遺伝学的検査の依頼側から見た課題,技術的課題,倫理的課題,次世代シーケンサーを用いた遺伝学的検査の拠点化に関する課題,大学の研究室などで遺伝学的検査を提供する際の品質管理や認証などの課題がある.これらの課題解決に向けて,遺伝学的検査の拠点のミッション,特定疾患調査研究班との連携,registry, 変異データベースの構築に関する指針,次世代シーケンサーを用いる遺伝学的検査の技術的課題に関する指針,次世代シーケンサーを用いる遺伝学的検査における倫理的課題に関する指針,大学などの研究室で行う遺伝学的検査の品質管理に関する指針,次世代シーケンサーによる遺伝学的検査を医療の中に位置づけるためのロードマップなどについてまとめることを目的とした.
研究方法
本年度2回の班会議を開催し,1) 次世代シーケンサー解析拠点の役割・必要性・意義,特定疾患調査研究班との連携,2) 遺伝学的検査の依頼のシステム,ゲートキーパーの必要性,3) registry,変異データベースの構築(松田, 松原),4) 次世代シーケンサーを用いる遺伝学的検査の技術的課題に関する検討,5) 次世代シーケンサーにより得られるデータの解釈,6) 次世代シーケンサーを用いる遺伝学的検査における倫理的課題に関する指針,7) 大学などの研究室で行う遺伝学的検査の品質管理に関する指針,8) 次世代シーケンサーによる遺伝学的検査を医療の中に位置づけるためのロードマップ,9) 国際的な動向,などの課題について検討を行った.
結果と考察
次世代シーケンサー拠点においては,そのミッションとして,網羅的ゲノム配列解析の提供を行うと同時に,品質管理基準を設定していくことが求められる.また,次世代シーケンサーを用いたゲノム配列解析により見出される膨大な数の変異について,適切な医学的解釈を行うためのアルゴリズム,すなわち,病原性変異の判定アルゴリズムの整備を進めることが必要である.同時に,ゲノム配列解析から見出される可能性のある偶発的所見への対応指針を定めることが求められる.この拠点で得られた変異に関するデータは,データベース化し,適切な形で研究者コミュニティが利用できるようにしていく必要がある.
この拠点が,クリニカルシーケンシングを担当するに当たり,検査の依頼について,その必要性などを判断する,ゲートキーパーの役割を果たす組織を整備することが望まれる.このようなゲートキーパーの役割は,特定疾患の調査研究班が積極的に関わることが,期待される.
次世代シーケンサーを用いたゲノム解析を,クリニカルシーケンシングとして,医療制度の中で実装するには,さまざまな課題が存在する.当初は,研究としての位置づけで開始することが望ましいと考えられるが,その次のステップとしては,保険診療として位置づけていくのか,あるいは,保険診療とは別の制度を設けるのか検討をする必要がある.また,難病のように,検査の頻度が極めて少ない場合,例えば年間で1,000件以上というように,検査に対してかなりのニーズが存在する場合について,制度設計を区別していくことが必要であると考えられる.前者は,次世代シーケンサー拠点が担当し,後者は,企業が担当することが想定される.
保険診療として位置づけていくのであれば,体外診断法として,診断薬や解析機器医の薬事承認が必須事項となるが,最先端のゲノム解析技術を用いる場合,この点が大きな課題となる.特に,次世代シーケンサー拠点において,laboratory-developed testとして実施する場合は,品質管理基準を明確にした上で,薬事承認に変わる弾力的な運用の可能性も検討する必要がある.米国で行われている,CLIA認証は,このような方向性を考える上で,参考になる.医療制度への実装においては,上記に述べたような数多くの検討課題があるが,その準備を進める上では,先進医療として,実績を積みながら,制度の準備を進めるという進め方が,実現性が高いのではないかと考えられる.
結論
次世代シーケンサーを用いたクリニカルシーケンシングの実施に向けて、検討すべき課題を抽出し、実施体制について具体的な提案をとりまとめた。難病研究班との連携による、クリニカルシーケンシング実施体制のネットワーク化、医療制度の中に位置づけていくためのロードマップ、膨大な変異情報を解釈するための情報基盤の整備、Incidental Findingsを含む、倫理面での課題についての提言をとりまとめた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201324146C

収支報告書

文献番号
201324146Z