遠位型ミオパチーにおけるN-アセチルノイラミン酸の薬物動態の検討及び第2/3相試験

文献情報

文献番号
201324142A
報告書区分
総括
研究課題名
遠位型ミオパチーにおけるN-アセチルノイラミン酸の薬物動態の検討及び第2/3相試験
課題番号
H25-難治等(難)-一般-026
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
青木 正志(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科 )
研究分担者(所属機関)
  • 割田 仁(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科)
  • 加藤昌昭(国立大学法人東北大学 東北大学病院)
  • 西野一三(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター神経研究所)
  • 島崎茂樹(ノーベルファーマ株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
54,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は国立精神・神経医療研究センターの西野らの成果をもとに、我々が世界で初めて実施した第Ⅰ相試験等の成果を踏まえ実施された海外第Ⅰ相試験の最高用量で第Ⅰ相試験を平成25年度に実施する。さらに海外で実施中の第Ⅱ相試験の結果を検討し、平成26年度に国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験を開始することにより日本人患者でPOCを確認し、海外と同時期の承認取得を目指すものである。
縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーという筋疾患は、体幹から離れた部位から筋肉が萎縮・変性し次第に体の自由が奪われていく難病で、今のところ治療手段はない。本疾患の患者では、N-アセチルノイラミン酸の生合成経路の重要な酵素であるGNE/MNKをコードするGNE遺伝子に変異がある。西野らは、本疾患のモデルマウスをGNE‐KOマウスとヒトGNE遺伝子のD176V変異トランスジェニックマウスの掛け合わせによりヒトの病態を忠実に再現するモデルマウスを作製した。更にこのマウスによりN-アセチルノイラミン酸の予防効果を示し、世界で初めて治療法の糸口を提示した。この成果はNature Medicine(15(6)690-5, 2009)に掲載され、特許出願された。
また、これまで公的資金の助成も受け、治験薬GMPに準拠した原薬・製剤の製造、ラット及びイヌの慢性毒性、ラット及びウサギの胚・胎児発生、安全性薬理、ラット薬物動態などの試験を実施したが、本助成により、先の薬事戦略相談で指導を受けた未実施の生殖試験を実施する。
なお、プロトコール開発等を含め24年度までの本事業は文科省の橋渡し研究加速ネットワークプログラムの支援で行った。
研究方法
追加第Ⅰ相試験は東北大学病院神経内科において、GNE遺伝子変異を確認できている縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーの患者を対象に、安全性と薬物動態を検討する。今回は海外試験と同じ徐放製剤を使用し、薬物動態では血清中遊離N-アセチルノイラミン酸及び尿中総及び遊離N-アセチルノイラミン酸を測定する。3例に1回2000mgを単回投与、別の3例に1日3回投与、次いで原則としてその中から3例に1日3回を7日間投与する。
また、生殖毒性試験については、25年度にラット生殖毒性試験(ICH-study1)、過去に実施したウサギ生殖毒性試験(ICH-study3)の胎児骨格検査を、25-26年度にラット生殖毒性試験(ICH-study2)を受託機関においてGLPに準拠して実施する。
結果と考察
追加第Ⅰ相試験は、平成25年度には、2000mg単回投与3例、2000mg1日3回投与2例が終了した。安全性には特に問題なく、薬物濃度の測定は最初の4例について終了し、血清中遊離N-アセチルノイラミン酸濃度の上昇、尿中への総及び遊離N-アセチルノイラミン酸の排泄量増加が認められた。
今後、追加第Ⅰ相試験を終了させ、安全性にが問題なく、薬物動態が海外の成績と類似しているかどうか等を検討し、国際共同治験に参加することに問題がないかを判断する。
生殖毒性試験はラット生殖毒性試験(ICH-study1)、先に実施したウサギ生殖毒性試験(ICH-study3)の胎児骨格検査が終了した。ラット生殖毒性試験(ICH-study1)においては、受胎能及び着床までの初期胚発生への影響を検討した。その結果、N-アセチルノイラミン酸の親動物の一般毒性学的および生殖能に関する無毒性量は雌雄とも2000 mg/kg、初期胚発生に関する無毒性量は2000 mg/kgと考えられた。また、先に実施したウサギにおける胚・胎児発生に関する試験(ICH-study 3)の胎児骨格検査を実施した。骨格異常は対照群との差はなく、背景値と同程度の値であるため被験物質投与の影響はないと考えられた。
なお、国内開発企業の協業先が米国及びイスラエルで複数の第Ⅱ相試験を実施している。48週間の二重盲検試験は終了し、安全性に問題なく、上肢混成筋力において高用量で低用量に比較して筋力の有意な改善が認められるなど有効性が示唆された。一方、12gのオープン試験は実施中で、この結果は26年末に判明する見込みである。これらの成績を検討し、国際共同治験への参加可否を判断することになる。
結論
実施中の追加第Ⅰ相試験を早期に終了させ、海外の試験結果、開発方針、PMDAとの治験相談等を踏まえ、国際共同治験に参加するかどうかを判断するが、それまで、海外と同様な有効性評価が可能となるように事前の準備を進めていく。
追加実施した生殖毒性試験より、生殖発生毒性のリスクは低いと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201324142Z