小児期発症脊髄性筋萎縮症に対するバルプロ酸ナトリウム多施設共同医師主導治験準備研究

文献情報

文献番号
201324138A
報告書区分
総括
研究課題名
小児期発症脊髄性筋萎縮症に対するバルプロ酸ナトリウム多施設共同医師主導治験準備研究
課題番号
H25-難治等(難)-一般-022
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 加代子(東京女子医科大学 医学部 )
研究分担者(所属機関)
  • 西尾 久英(神戸大学大学院医学研究科地域社会医学・健康科学講座疫学分野)
  • 齊藤 利雄(独立行政法人国立病院機構刀根山病院神経内科・小児神経内科)
  • 加藤 善一郎(岐阜大学大学院医学系研究科)
  • 野本 明男(公益財団法人微生物化学研究会微生物化学研究所)
  • 中島 孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院神経内科)
  • 中野 今治(都立神経病院)
  • 武田 伸一(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
73,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脊髄性筋萎縮症(SMA)は脊髄前角細胞変性による筋萎縮と進行性筋力低下を特徴とし、I型は2歳までに死亡、II型も生涯起立、歩行が不可能な重篤な疾患であり、治療法の開発は社会的にも望まれている。小児期発症SMAはsurvival motor neuron((SMN)遺伝子変異が原因である。本研究はヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害効果を有しSMN蛋白質を増やす機序をもつバルプロ酸ナトリウム(VPA)による医師主導治験実現の体制整備を目的とする。
研究方法
(1) 医師主導治験の計画と実施のシステム構築
治験薬VPAと併用薬(エルカルチン)を入手し、モニタリング、監査、データマネジメント、統計解析等の委託、補償保険契約締結をする。治験プロトコール・手順書を作成し、2013年中にPMDAの薬事戦略相談(事前面談)を受け2014年に対面助言を終了、医師主導治験(コホート1, 第IIa相探索試験)の治験届を提出、実施準備をする。
(2) 有効性評価の基準設定
主要評価項目、副次評価項目を決定する。
(3) サンプルセンターにおけるバイオマーカーの検討
VPAの有効性評価の指標としてバイオマーカーの開発のため生体試料の収集を行い、SMN蛋白質定量法、SMNmRNA定量法の検討を行う。
(4) 多施設共同治験会議および研修会開催
実施施設の選定を行い治験責任医師を決定する。評価法の均霑化のために研修会を実施する。
結果と考察
(1)医師主導治験の計画と実施のシステム構築
治験調整事務局を開設し、プロトコール概要を作成し、PMDA薬事戦略相談・事前面談を受け、2014年4月4日に対面助言を受審した。本研究においては、コホート1として、第IIa相探索的試験を多施設共同非盲検非対照試験にて実施することとなった。
(2)有効性評価の基準設定
主要評価項目はイメージングフローサイトメトリーによるSMN蛋白質定量に決定した。副次評価項目は、SMN2mRNA定量、体重、PedsQL、運動機能評価:HFMSE(Ⅱ型・Ⅲ型対象)、CHOP INTEND(Ⅰ型対象)とした。
(3)サンプルセンターにおけるバイオマーカーの検討
SMA I型患者由来線維芽細胞でVPA投与によるSMN蛋白質の有意な上昇を観察した。SMN蛋白質の検出法として抗SMN抗体による免疫組織化学染色法を確立した。白血球のSMN2転写産物量を指標としてVPAに対する反応性を調べ、full length SMN転写産物の増加とΔ7SMN転写産物の減少を認めた。VPAの有効性規程因子としてのCD36も検討した。イメージングフロサイトメトリーによるSMN蛋白質定量法にてSMA患者と対照との比較が可能となり、主要評価項目とすることになった。
(4)多施設共同治験会議および研修会開催
多施設共同治験会議として、小児期発症脊髄性筋萎縮症に対するバルプロ酸ナトリウム多施設共同医師主導治験第1回班会議・キックオフミーティングを開催した(2013年11月2日(土)於:ステーションコンファレンス東京605)。SMAの運動機能評価の均霑化のために、SMAの運動機能評価に関する研修会を開催した(2014年1月18日(土)於:東京国際フォーラム ガラス棟G602)。コロンビア大学の理学療法士であるJacqueline Montes,PT, EdD, NCS を招聘し、Ⅱ、Ⅲ型では、Hammersmith運動機能評価スケール拡大版(HFMSE)、I型ではPhiladelphia小児病院神経筋疾患乳児版テスト(CHOP INTEND)の実習を行った。本研修会を受講し、修了証を受けた理学療法士がHFMSEおよびCHOP INTENDの評価を行う体制とした。
結論
小児期発症のSMAに対して、SMN蛋白質増加機序を持つVPAによる病態修飾療法としての適応拡大を目的とした医師主導治験の体制整備を実施し、2014年度から医師主導治験コホート1を開始可能となった。コホート1の主要評価項目はイメージングフローサイトメトリーによるSMN蛋白質定量となった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201324138Z