難治性潰瘍性大腸炎を対象とした医師主導治験のためのアドレノメデュリン製剤の作成

文献情報

文献番号
201324137A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性潰瘍性大腸炎を対象とした医師主導治験のためのアドレノメデュリン製剤の作成
課題番号
H25-難治等(難)-一般-021
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
北村 和雄(宮崎大学 医学部 )
研究分担者(所属機関)
  • 芦塚 伸也(宮崎大学 医学部)
  • 稲津 東彦(宮崎大学 医学部)
  • 北 俊弘(宮崎大学 医学部)
  • 一圓 剛(ヒュービットジェノミクス株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
109,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アドレノメデュリン(AM)は本研究代表者等が発見した強力な降圧作用を有した循環調節に重要な生理活性ペプチドである。興味深いことに、炎症性疾患ではAMの産生が増加し、AMが抗炎症・臓器保護因子として作用していることを見出した。実際、本研究代表者等は炎症性腸疾患のモデルである酢酸誘発潰瘍性大腸炎モデル動物にAMを投与すると、炎症が抑制され、病態が改善することを明らかにし、AMの炎症性腸疾患治療薬としての特許を取得した。さらに、平成21~23年度に臨床応用基盤研究事業として、「AMの炎症性腸疾患治療薬としての臨床応用」として、基礎研究と探索的臨床研究を実施した。その結果、ステロイドやLCAPに抵抗性の難治性潰瘍性大腸炎の患者に1.5pmol/kg/min のAMを投与することで、顕著な腸管粘膜再生がみられ、潰瘍が治癒し寛解に導入できた。現在までに7例の患者に投与を行い、有効性は80%以上ときわめて良好であり、有害事象は認めなかった。AMの難治性潰瘍性大腸炎患者に対する効果は明白であり、従来の治療薬とは異なる作用機序の薬剤で、既存の薬剤に上乗せして使用することもできる。しかし、2014年にAMの物質特許が切れることや、低分子化合物ではなく52個のアミノ酸からなるペプチドであるため、合成が難しいことなどから、企業の参入は得難い状況である。そこで、次のステップとして医師主導型治験を実施し、できるだけ早期に治療薬としての承認を得たい。本研究では、医師主導型治験のための製剤の確保とプロトコール作成を行う。
研究方法
AM原末の作成はペプチド研究所に委託して、前臨床試験を含めて今回のAM製剤化に必要なペプチド原末の一括生産(ペプチドは化学合成)を行なう。製剤化は富士薬品に委託して実施する。治験プロトコールの作成については、ノイエス株式会社の天本敏昭博士に研究協力者として参加していただき、治験の第一段階である第一相試験の単回投与試験のプロトコール作成を行った。
結果と考察
医師主導型治験を実施するための製剤の確保とプロトコール作成を行う計画であり、現在までの結果と考察は次の通りである。
1.AM原末の作成
ペプチド研究所に委託して、前臨床試験を含めて今回のAM製剤化に必要なペプチド原末の化学合成を開始している。原薬は平成26年7月に完成予定であり、その後富士薬品で製剤化を実施する予定である。
2.非臨床試験
急性心筋梗塞治療薬として開発するために実施した非臨床試験データの大半が流用可能である。PMDAでの2回の事前面談と1回の対面助言を行い、phase1に入るための非臨床試験等の充足性について助言いただいた。
非臨床試験では、ペプチド研究所製およびアメリカンペプチド(APC)社製アドレノメデュリン原薬を使用して実施していることが問題であった。これらの、ロットの分析結果を検討した。
その結果、
(1)各ロットについて質量分析から得られたメインピークのスペクトルはアドレノメデュリンの構造を支持した.
(2)各ロットについて,確認試験として実施したアミノ酸分析結果から,アドレノメデュリン由来の17種のアミノ酸のピークを認め,モル比率も理論値と一致した.
(3)全てのロットについて純度試験結果は何れも95%以上で,高純度であった.
結果は、各ロット間に有意差はなく同等であった。
さらに、平成25年12月にペプチド研究所において、同一の分析条件で、上記5種類のロットに関して、再分析を実施した。その結果、上記(1)~(3)の結果が再確認できた。
以上の結果、ペプチド研究所製およびアメリカンペプチド(APC)社製アドレノメデュリン原薬の各ロット間で有意差はなく、同等であったことから恒常性は保たれていると判断している。それ故、アドレノメデュリン原薬を用いた非臨床試験は本剤の医師主導治験(Phase1)開始時資料として活用できると判断した。
3.AM製剤化・製剤の物性・安定性検証
ペプチド研究所製のAM原末を用いて、GMP基準を満たした富士薬品富山第二工場に委託してAM製剤の作成を行う。今年度は予備的検討をペプチド研のAMペプチドを用いて、行っており、予定通り予備的検討は昨年度末に終了し、原末完成後に来年度に実機での試作と製造を行う予定である。
4.治験プロトコールの作成
SMOのノイエス株式会社の天本敏昭博士に研究協力者として参加していただき、治験の第一段階である第一相試験のプロトコール作成を行っている。第一相治験のプロトコール案に関しても、PMDAの対面助言で相談し、現在PMDAからの指摘事項にしたがい、改訂を実施している。
結論
アドレノメデュリン原末の製造と製剤化は順調に進んでおり、phase1を開始するための非臨床試験も充足していることから、本事業はほぼ順調に進展している。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201324137Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
141,800,000円
(2)補助金確定額
141,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 23,844,084円
人件費・謝金 771,591円
旅費 43,540円
その他 84,417,785円
間接経費 32,723,000円
合計 141,800,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
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