重症拡張型心筋症患者の生命予後改善・人工心臓離脱を目指した新規オキシム誘導体徐放性製剤による体内誘導型再生治療法の開発と実践

文献情報

文献番号
201324135A
報告書区分
総括
研究課題名
重症拡張型心筋症患者の生命予後改善・人工心臓離脱を目指した新規オキシム誘導体徐放性製剤による体内誘導型再生治療法の開発と実践
課題番号
H25-難治等(難)-一般-019
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
宮川 繁(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 )
研究分担者(所属機関)
  • 福嶌 五月(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科  )
  • 齋藤 充弘(国立大学法人大阪大学 医学部附属病院  )
  • 今西 悠基子(国立大学法人大阪大学 大学院薬学研究科  )
  • 大門 貴志(兵庫医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
75,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
拡張型心筋症に対する根本治療は心臓移植であるが、臓器移植法改定後においてもドナーの絶対的不足状態は変わらない。従来の埋め込み型補助人工心臓(LVAD)、心臓移植、および細胞療法に代わり、治療効果が高く、細胞培養を不要とするオキシム誘導体(ONO-1301類)の開発によりLVAD離脱および心臓移植・LVAD装着の回避を目指した体内誘導型心血管・心筋再生療法剤を開発することを目的とする。
研究方法
1)重症拡張型心筋症患者へ補助人工心臓装着時に人工心臓離脱を目的として、ONO-13014週間徐放性製剤(ONO-1301MS;平均粒子径30μm)を心臓貼付投与(心臓局所投与)することを目的とした治療法の開発を検討した。
イヌ高速ペーシングモデルを用いて、ペーシング4週間後に開胸し、ONO-1301MSを単回心臓貼付投与した。投与2週間及び4週間後に心エコーによる心機能(LVEF等)評価を行った。
2)軽症・中等症拡張型心筋症患者にONO-1301を反復経口投与(全身投与)することにより、心臓移植や人工心臓の装着を遅らせたり、回避することを目的とした生命予後改善治療法の開発を目的として検討した。
自然発症拡張型心筋症J2N-kハムスターモデルに20週齢(病態発症)から28週齢まで、ONO-1301を1日2回、56日間反復経口投与し、心エコーにより心機能(LVEF等)悪化抑制および改善効果を検討した。
3)疾患特異的な新規ONO-1301ナノスフェアー製剤(NS;平均粒子径100nm)を作製(特許出願準備中)した。本NS製剤をラット重症心不全モデルを用いてONO-1301NS製剤の週1回間歇静脈内投与とONO-1301反復経口投与を比較検討し、NS剤のDDS効果を検討した。 
結果と考察
1)イヌに高速ペーシング(拡張型心筋症)モデルに対して、発症後におけるONO-1301MS心臓貼付投与では左室収縮機能不全に対して用量相関的に有意な改善効果が認められ、最小有効投与量は0.3 mg/kgであった。
我々はミニブタ陳旧性(OMI)心筋梗塞モデルを用いて、梗塞4週後に同様の投与法にて心臓貼付し、4週後に心機能を評価した結果、最小有効投与量はイヌ高速ペーシングモデルと同等であった。
昨年度PMDA対面助言にて、心臓貼付臨床試験実施に必要な追加非臨床毒性試験を確認し、現在実施中である。
2)自然発症拡張型心筋症(J2N-k)ハムスターモデルにONO-1301を反復経口投与した結果、心エコーによる心機能(左室駆出率等)において、ONO-1301の0.3mg/kg投与群から用量相関的に有意に悪化を抑制し、3.0mg/kg投与群では改善作用が認められた。  
ONO-1301には、拡張型心筋症の改善又は心不全への悪化を抑制する作用があり、最小有効投与量は0.3mg/kgと1.0mg/kgの間であった。
心臓貼付投与は、心不全患者に対する侵襲が大きいため、軽症・中等症拡張型心筋症患者に対しては、より早期からONO-1301(原薬)を反復経口投与(全身投与)をすることにより、心臓移植や人工心臓の装着を遅らせたり、回避することを目的とした生命予後改善治療法の可能性が示唆された。
3)間歇静注投与により、疾患局所に集積(DDS)し徐放するONO-1301ナノスフェアー(NS)製剤(平均粒子径100nm)を作製した(特許出願準備中)。 また、ラット重症心不全モデルを用いて検討した結果、ONO-1301経口投与に比し、NS製剤静注投与は総投与量として1/42の投与量にて同等の効果を示し、疾患局所特異的であることが示唆された。
結論
2014年第3クォーターに「オキシム誘導体徐放性マイクロスフェアー(ONO-1301MS)製剤の心臓貼付投与における重症心不全への適応」を目的として、FIH臨床試験計画に対するPMDA対面助言を行い、医師主導治験を開始する予定である。
 また、J2N-kハムスターモデルに対して、病態発症後からの経口投与においても、副作用(下痢、降圧作用)を発症しない低投与量にて効果を示した。軽症・中等症拡張型心筋症患者にONO-1301(原薬)を反復経口投与(全身投与)することにより、心臓移植や人工心臓の装着を遅らせたり、回避することを目的とした生命予後改善治療法の開発の可能性が示唆された。
一方、ONO-1301の疾患局所に集積する新しいDDS製剤としてONO-1301NSを作製した。ONO-1301NS製剤は間歇静注投与(全身投与)により疾患局所に集積(DDS)されることにより、全身投与に比しより少量投与で有効性を発揮する可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2014-07-23
更新日
2015-06-30

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201324135Z