VCP阻害剤を用いた眼難治疾患に対する新規治療法開発

文献情報

文献番号
201324134A
報告書区分
総括
研究課題名
VCP阻害剤を用いた眼難治疾患に対する新規治療法開発
課題番号
H25-難治等(難)-一般-018
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
池田 華子(京都大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉村 長久( 京都大学大学院医学研究科 )
  • 宮本 和明( 京都大学大学院医学研究科 )
  • 辻川 明孝( 京都大学大学院医学研究科 )
  • 垣塚 彰( 京都大学大学院生命科学研究科 )
  • 清水 章(京都大学医学部附属病院)
  • 池田 隆文(京都大学医学部附属病院)
  • 三村 治(兵庫医科大学医学部)
  • 石川 裕人(兵庫医科大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
31,549,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
希少眼難治疾患である虚血性視神経症および網膜中心動脈閉塞症に対し、京都大学で開発されたKUS剤を用い、医師主導治験を実施していく礎として、1)両疾患に対する非臨床薬効薬理試験をおおまかに完了させること、2)KUS剤のGMP製造検討を行い、GMP製造体制を確立すること、3)第Ⅰ相医師主導治験に必要最低限のGLP毒性試験に着手・完了を目指すこと、4)さらに、被験者リクルートの観点から疾患レジストリの構築を行うこと、5)PMDA対面助言を通して、治験プロトコル作成準備を行うことを目的とする。本研究終了後、第Ⅰ相医師主導治験準備予定である。
研究方法
1) KUS剤の急性神経節障害モデルに対する非臨床薬効薬理試験
網膜神経節細胞が蛍光標識されるthy1-CFPトランスジェニックマウスを用い、眼内(硝子体内)にN-methyl-D-aspartate (NMDA)を注射することで、急性網膜神経節細胞障害モデルを使用し以下の実験を行った。即ち、KUS剤の全身投与、ならびに、硝子体内注射投与を行い、網膜断層のSD-OCT画像およびCFP蛍光眼底撮影を行った。SD-OCT網膜断層像で網膜厚(GCC厚:網膜神経線維層、神経節細胞層、内網状層)を、CFP蛍光眼底撮影画像で、神経節細胞数を計測した。対照として、生理食塩水を全身・硝子体内投与したマウスを用いた。
2) KUS剤の網膜中心動脈閉塞症に対する非臨床薬効薬理試験
網膜中心動脈閉塞症モデルとしては、虚血再灌流を用いた。網膜神経節細胞が蛍光標識された、thy1-GFPラットで、60分虚血を継続させた。
3) KUS剤の製造法・プロセス検討
KUS剤のGMP製造に向けて、原薬の純度をあげ、安定した品質での製造が可能となるように、合成法の検討を行った。改良プロトコルにて製造したKUS原薬に関して、試験項目設定を行い、HPLCにて、純度確認を行った。
4) GLP安全性試験予備検討
KUS剤のGLP安全性試験に向けて、原薬の測定法確立、分析法バリデーションを行った。また、カニクイザルを用い、KUSを硝子体内注射し、血漿中のKUS濃度をHPLCにて測定した。
5) 疾患レジストリ構築
 網膜中心動脈閉塞症および虚血性視神経症に関して、1)KUS剤の投与タイミングを確定、2)無治療コントロールとしての自然経過、3)発症早期での患者紹介体制構築を行う。自然経過観察に対する、臨床研究に関して、倫理委員会に申請した。

(倫理面への配慮)
動物実験に関しては、眼科動物研究のスタンダードであるARVOのガイドラインを遵守し、京都大学の「動物実験委員会」に申請し、承認を受けている。患者臨床研究に際しては、ヘルシンキ宣言を遵守するとともに、すでに京都大学の倫理員会にて承認済である。


結果と考察
1) KUS剤の急性神経節障害モデルに対する非臨床薬効薬理試験
KUS全身投与および、硝子体注射投与ともに、網膜内層(GCC)厚は、対照生食投与群と比べて有意に厚く、NMDAによる菲薄化が抑制されていた。残存網膜神経節細胞に関しても、KUS投与群では、対照に比べて、有意に多く、細胞死の抑制効果があることが明らかになった。
2) KUS剤の網膜中心動脈閉塞症に対する非臨床薬効薬理試験
虚血再灌流ラットにおいては、内層網膜の菲薄化が認められた。KUS剤投与群では、その菲薄化が有意に抑制されていた。また、網膜神経節細胞は、虚血再灌流後急速に減少したが、KUS剤投与群では、その減少が有意に抑制された。
3) KUS剤の製造法・プロセス検討
これまでのKUS剤の製造工程を変更し、より高純度の原薬製造が可能となった。スケールアップ合成されたKUS剤は、原薬としてほぼ問題ないことが確認できた。
4) GLP安全性試験予備検討
生理食塩水を媒体とした調整液中のKUS濃度測定を実施するために、特異性・検量線の直線性・オートサンプラー内の安定性・真度および併行精度に各々問題がないことを確認し、HPLC測定法が妥当であることが明らかになった。
また、カニクイザルを用い、KUSを硝子体内注射すると、注射後2時間をピークに、KUSが血中で検出されることが明らかになった。また、速やかに再分布またはクリアランスを受けることが明らかになった。
5) 疾患レジストリ構築
 網膜中心動脈閉塞症および虚血性視神経症に関して、自然経過をみる前向き臨床研究に関し、研究プロトコルを作成した。
結論
KUS剤の薬効薬理試験、GMP製造検討、GLP安全性試験に対する予備検討が、順調に実施され、特に問題となる事項はなかった。

公開日・更新日

公開日
2014-07-23
更新日
2015-06-30

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-03-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201324134Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
32,900,000円
(2)補助金確定額
32,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,005,345円
人件費・謝金 2,201,335円
旅費 32,320円
その他 23,310,000円
間接経費 1,351,000円
合計 32,900,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
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