重症型扁平苔癬の病態解析及び診断基準・治療指針の確立

文献情報

文献番号
201324127A
報告書区分
総括
研究課題名
重症型扁平苔癬の病態解析及び診断基準・治療指針の確立
課題番号
H25-難治等(難)-一般-011
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
井川 健(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科皮膚科分野)
研究分担者(所属機関)
  • 横関 博雄  (東京医科歯科大学皮膚科 )
  • 片山 一朗 (大阪大学皮膚科 )
  • 塩原 哲夫(杏林大学皮膚科)
  • 佐藤 貴浩 ( 防衛医科大学校皮膚科 )
  • 魚島 勝美 (新潟大学口腔健康科学)
  • 小豆澤 宏明 (大阪大学皮膚科 )
  • 西澤 綾 (東京医科歯科大学 皮膚科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)扁平苔癬について、皮膚科医ならびに歯科医にも利用できる診療ガイドラインを作製し、共通した考え方のもとで質の高い診療を提供する。2)皮膚科および歯科を対象に、扁平苔癬、あるいは治療抵抗性で日常生活に支障をきたすような重症扁平苔癬の頻度や合併症、あるいは治療方法についての疫学調査を行い、本邦における現状を把握する。3)マウスモデルを用いて、病態機序の解明に努めることを目的とする。4)金属パッチテストの結果と扁平苔癬の臨床形態についての調査をするとともに、5)保湿剤による治療効果を検討し、6)疾患特異的な遺伝子異常の有無を検討することとした。
研究方法
1)診療ガイドラインの作成
2)疫学調査(井川)
3)動物モデルを用いた扁平苔癬と胸腺との関連の研究(各個研究:小豆澤、片山)
4)扁平苔癬と金属アレルギーとの関連の検討(各個研究:横関、佐藤、井川、西澤)
5)扁平苔癬の発症と発汗の関連を検討する(各個研究:塩原)
6)扁平苔癬における疾患特異的遺伝子の検討(各個研究:魚島)
結果と考察
研究結果
1)診療ガイドラインの作成
疾患の定義:
「扁平苔癬は原因が明らかではない、角化異常を伴う炎症性疾患の一つであり、皮膚においては、多角形の中央かやや凹んだ扁平隆起する、紫紅色調の丘疹が特徴的で、瘙痒を伴い慢性に経過する。爪甲では白濁、肥厚、萎縮、脱落、毛髪部では暗紫紅色で軽度光沢ある脱毛斑がみられることがある。 粘膜病変の場合、最も特徴的な所見は乳白色の細い線条である。乳白色線状は細かい網の目状ないしレース状の病変となることが多いが、輪状、放射線状、さらに円形ないし楕円形の斑を呈することもある。ときにびらん、萎縮、水疱を伴う。組織学的には、苔癬型反応を示し、表皮(粘膜上皮)細胞には明らかな異型を認めない。」
2)疫学調査
アンケートの回収率は全体で44.9%(92施設/205施設)であった。皮膚科、歯科を総合した扁平苔癬患者は、外来患者全体の0.18%という結果であった。また、重症扁平苔癬は、外来患者全体の0.01%、扁平苔癬患者の中ではおよそ1割を占める、ということが判明した。なお、男女比については、扁平苔癬、重症扁平苔癬患者ともに、1.5倍から2倍程度、女性の方が多いという結果であった。重症扁平苔癬は、粘膜、特に口腔内病変が多く見られることが特徴であった。
重症扁平苔癬患者の2割弱にHCV感染症が認められ、また、3割弱で金属パッチテストが陽性であった。注意するべきこととして、重症扁平苔癬患者のうち、4%程度で経過中に局所の悪性腫瘍発生がみられた。最後に、重症扁平苔癬の治療として、皮膚科、歯科、どちらにおいてもステロイド外用が高頻度に行われていることがわかった。
3)動物モデルを用いた扁平苔癬と胸腺との関連の研究
これまでの研究結果と同様に、生後8ヶ月以降のK5-mOVA.OT-Iマウスでは軽度の表皮細胞障害がみられた
4)扁平苔癬と金属アレルギーとの関連の検討
 扁平苔癬患者における金属パッチテスト陽性率は30%であった。
5)扁平苔癬の発症と発汗の関連の検討
扁平苔癬病変部では著明な発汗滴の減少と発汗直径の低下がみられた。
6)扁平苔癬における疾患特異的遺伝子の検討
 現在、各標本の遺伝子発現変動を解析中である。
考察
本研究においては、診断のための疾患の定義、病型分類、治療方針等、診療ガイドラインを策定した。これからはこのガイドラインをたたき台にして、さらなる改訂を重ねる事によって、よりよい本疾患の診療が確立されていくと考えられる。また、日常生活に支障を来たすような広範かつ重症な皮膚病変、爪病変、脱毛、難治性口腔内病変等を呈する、重症型の扁平疾患の発症頻度等の実態が本邦において初めて明らかになった。
臨床的な調査に目を移すと、金属パッチテストの陽性率は扁平苔癬患者では比較的高いことが判明した。またパッチテスト陽性と病変部位に関連が見られる結果が得られた。動物モデルを用いた研究では、胸腺での、自己反応性T細胞の除去、あるいは胸腺由来の制御性T細胞の機能が緩徐に破綻することで、慢性炎症を引き起こすことが示唆された。
結論
本研究が、扁平苔癬の診療において、本邦で初めて共通した考え方のもとで、診断、治療行われる端緒となったことは、本疾患で苦しむ多くの患者、ならびに臨床の現場でそれら患者と向き合う医師、歯科医師にとって、非常に意義のあるものであったと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2014-07-23
更新日
2015-06-30

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201324127C

収支報告書

文献番号
201324127Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,700,000円
(2)補助金確定額
11,700,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,384,275円
人件費・謝金 105,300円
旅費 273,340円
その他 2,216,703円
間接経費 2,700,000円
合計 11,679,618円

備考

備考
見積額より実際の請求額の方が安価であったため、誤差が生じた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-