文献情報
文献番号
201324118A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性両側性脳内石灰化症(ファール病を含む)のiPS細胞を活用した診断と治療法の確立
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-難治等(難)-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
保住 功(岐阜薬科大学 薬物治療学)
研究分担者(所属機関)
- 犬塚 貴(岐阜大学 神経内科・老年学分野)
- 辻 省次(東京大学 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
原因不明の両側性脳内石灰化症は、従来ファール病と呼称されてきたが、国際的にはidiopathic basal ganglia calcification (IBGC)と言う名称が提唱されている。当研究室では予想を超え、200症例を超える登録がある。2012年2月、Nature Genetics(44:254-265)に中国から、家族例でリンの輸送蛋白(type-III sodium-dependent phosphate transporter 2 (PiT2))の遺伝子SLC20A2の変異が報告された。このSLC20A2遺伝子について検索したところ、日本人10家系中4家系、孤発例2症例において新たな部位に変異を認めた。この発見は病因、病態の解明、疾患の分類にとって極めて重要なものとなった。我々は次世代シーケンサー (NGS)を用いた網羅的遺伝子解析を行い、さらなる遺伝子検索を進める。患者の不要となった歯髄組織よりiPS細胞を作製してきたが、遺伝子変異を見出した症例を重点的に患者iPS細胞の樹立・蓄積に努める。iPS細胞を血管内皮細胞、神経細胞に分化させ、機能解析を行って、創薬を提言する。「患者の語り」に基づく質的分析を行い、そのケアを含む診療ガイドラインの作成に努める。
研究方法
1)ゲノム解析
(1) 患者血液DNAの遺伝子解析:これまで収集したDNA検体において、SLC20A2遺伝子のexonすべてをサンガー法にて検索を行う。また最近報告のあったPDGFRB、PDGFB遺伝子についても検索を行う。次世代シーケンサー(NGS)を用いたエクソーム解析にて原因遺伝子の検索を行う。
(2) 遺伝子異常に基づく機能異常の解析:SLC20A2変異遺伝子をCHO培養細胞に導入し、リン酸輸送能の機能を検索する。
2)iPS細胞の作成
(1) 患者のiPS細胞の樹立:外来受診患者で不要となった智歯の歯髄細胞からiPS細胞を樹立する。特に家族例については重点的にiPS細胞の樹立に努める。
(2) iPS細胞の血管内皮細胞・神経細胞への分化と機能解析:患者のiPS細胞を神経細胞、血管内皮細胞に分化させ、上記のリン酸の輸送能などをコントロールと比較する。
3)患者と家族の語りに基づく質的分析
(1) 外来受診患者の面談と質的分析:外来受診患者で、協力が得られた患者と家族の面談、病の語りに基づく質的分析を行い、患者と家族の思いの把握と適切なケアのあり方を見い出す。
(1) 患者血液DNAの遺伝子解析:これまで収集したDNA検体において、SLC20A2遺伝子のexonすべてをサンガー法にて検索を行う。また最近報告のあったPDGFRB、PDGFB遺伝子についても検索を行う。次世代シーケンサー(NGS)を用いたエクソーム解析にて原因遺伝子の検索を行う。
(2) 遺伝子異常に基づく機能異常の解析:SLC20A2変異遺伝子をCHO培養細胞に導入し、リン酸輸送能の機能を検索する。
2)iPS細胞の作成
(1) 患者のiPS細胞の樹立:外来受診患者で不要となった智歯の歯髄細胞からiPS細胞を樹立する。特に家族例については重点的にiPS細胞の樹立に努める。
(2) iPS細胞の血管内皮細胞・神経細胞への分化と機能解析:患者のiPS細胞を神経細胞、血管内皮細胞に分化させ、上記のリン酸の輸送能などをコントロールと比較する。
3)患者と家族の語りに基づく質的分析
(1) 外来受診患者の面談と質的分析:外来受診患者で、協力が得られた患者と家族の面談、病の語りに基づく質的分析を行い、患者と家族の思いの把握と適切なケアのあり方を見い出す。
結果と考察
遺伝子検索を行い、SLC20A2遺伝子変異が5例、PDGFRB遺伝子変異が1例、PDGFB遺伝子変異が4例、すべて新規の変異として見い出した。さらに、これらの変異が認めらなかった症例において、次世代シーケンサーで解析し、アイカルディー・ゴーティエ症候群等の遺伝子変異を見い出した。残りの遺伝子変異が認められない症例においても、全exome解析によって、原因遺伝子の検索を行う。iPS細胞の作製については、今回我々は2人のファール病患者のiPS細胞を樹立した。ファール病の病態解明のみならず現在ほとんど不明となっている細胞初期化機序を解析する糸口になる可能性がある。今後は作製したiPS細胞から神経細胞、血管内皮細胞に誘導を行いファール病の病態解析を行う。患者と家族の語りに基づく質的研究においては、今回SLC20A2遺伝子変異を認めた家族例4症例、また孤発例8症例について面談を終えたが、今後さらに2症例を加え、孤発例10症例として同様の質的分析を行う。これらは情報不足で不安を感じて暮らす患者と家族を支援する全く新しい試みであり、医療の向上に寄与する。
結論
新規SLC20A2遺伝子変異を家族例を中心に高率に見い出し、American Academy of Neurologyの学会誌 NeurologyにNeurologyに報告した。またPDGF/PDGFRB遺伝子変異に関しても検索を終えて、機能解析が行われている。さらに全く新規の原因遺伝子についてもNGSを駆使して検索中である。すでに、その中の2症例に、アイカルディー・ゴーティエ症候群の原因遺伝子RNASEH2Bに変異があることを見い出している。SLC20A2遺伝子変異をもった家族例3症例の歯髄細胞と血液細胞からiPS細胞の作製を試みた。歯髄細胞より試みた症例で初期化抵抗性が認められ、細胞初期化機序の解明に繋がる可能性がある。またPDGFB/PDGFRB変異を認めた患者や未だ遺伝子異常が見い出されていない孤発例患者でのiPS細胞の作製も順次行われており、各群間での比較、検討も含めて、病態解明に向けて研究は逐次進んでいる。日本発のiPS細胞技術を駆使し、創薬に向けて現在、日々邁進している。
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
-