先天性高インスリン血症に対するオクトレオチド持続皮下注療法の有効性・安全性に関する研究 

文献情報

文献番号
201324108A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性高インスリン血症に対するオクトレオチド持続皮下注療法の有効性・安全性に関する研究 
課題番号
H24-難治等(難)-一般-070
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
依藤 亨(大阪市立総合医療センター 小児代謝・内分泌科)
研究分担者(所属機関)
  • 横谷 進(国立成育医療研究センター 生体防御系内科部)
  • 緒方 勤(浜松医科大学 小児科)
  • 有阪 治(獨協医科大学 小児科)
  • 長谷川行洋(東京都立小児総合医療センター 内分泌代謝科)
  • 増江道哉(木沢記念病院 小児科)
  • 西堀弘記(木沢記念病院 放射線科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
46,895,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性高インスリン血症は、新生児・乳児期に重篤な低血糖症をきたす稀少難治疾患である。現時点ではジアゾキサイド内服のみが保険適用で、これらの治療に反応不良な場合は膵亜全摘が行われてきたが、術後は大部分の症例に医原性のインスリン依存性糖尿病を発症した。ソマトスタチンアナログであるオクトレオチドは本症に対しての血糖上昇効果が報告されているが、国内年間発症が10-20例の新生児・乳児の超稀少難病で、従来の枠組みでは本格的な臨床試験は困難であった。本研究では、こうした実態を打開するため、将来の保険適用を目指した臨床試験を計画した。
研究方法
1)先天性高インスリン血症に対するオクトレオチド皮下注射療法の保険適用をめざした臨床試験ストラテジーの確立
将来的な保険適用を目指した臨床試験のありかたを検討して臨床試験計画を立案し、医薬品医療機器総合機構の助言を受けて計画を策定した。
2)先天性高インスリン血症に対するオクトレオチド皮下注療法の有効性・安全性に関する観察研究(SCORCHレジストリ)国内でオクトレオチド皮下注射が使用された症例を対象にした観察研究としてのレジストリを計画した。15例以上を目標とし、ホームページを介して担当者登録、患者登録を行い、データを電子的に送付してもらい、データセンターにてクリーニングして登録する。
3)先天性高インスリン血症に対するオクトレオチド持続皮下注療法の有効性・安全性に関する研究(SCORCHスタディ)5例について、先進医療Bとしてオクトレオチド持続皮下注射療法の前向き介入試験を行う。国内の主要な小児医療施設に協力医療機関として参加依頼し、患者発生した場合に近隣の医療機関で治療が可能な体制を確立する。
4)先天性高インスリン血症31症例の18F-DOPA PETによる局在診断と治療予後に関する研究 木沢記念病院において18F-DOPA PETを施行した31例を対象に、遺伝子型、臨床経過、手術所見とPET所見を比較して、同検査の有用性と限界を検討した。

結果と考察
1)SCORCHレジストリ15例以上、SCORCHスタディ5例の臨床研究を行って公知申請の枠組みで保険承認を目指すこととし、臨床試験全体の枠組みを確立できた。
2)SCORCHレジストリは平成25年8月に患者登録を開始した。平成25年度中に11例の担当者登録があり、現在データ蓄積中である。
3)SCORCHスタディは平成26年1月より、まず大阪市立総合医療センターから先進医療による臨床試験を開始した。その後、日本小児内分泌学会の後援のもと、国内の主要小児医療施設67施設から参加の意思を得たが、平成25年度末の時点で先進医療登録施設は2施設に留まっており、症例登録は0例である。
4)18F-DOPA PET検査は、局在性集積を認めた場合は病変を診断できる検査で適切な部分切除が行えることで術後治癒率を向上させることができるが、非典型例においては、病変局在を示しても広がりを反映しない場合がみられた。PETびまん型や手術の難しいPET頭部型は内科的治療を継続して自然治癒を待つ選択もあると考えられた。
ジアゾキサイド不応性先天性高インスリン血症は、新生児・乳児の超稀少疾患で、かつ救急疾患である。このような疾患に対して、通常の治験で薬剤の保険承認を得るのは困難であったが、今回の臨床試験はそのモデルのひとつとなり得ると考えられた。症例が国内のどの施設にいつ発生するかが不明で、かつ慢性疾患のように遠方へ転院することが困難であるため、予め多数の参加施設を国内に配置し、患者が発生した地区の近隣で臨床試験を行う体制とした。個々に施設では患者が生じない可能性が高い。このようなシステムを構築するためには、学会のバックアップが必須である。また、現行システムでは、計画開始から終了までの期間が長期に渡り、資金計画や体制の維持に困難が生じることも判明した。SCOCHレジストリは比較的順調であるが、SCORCHスタディは今後迅速に症例登録を進める必要があると考えられた。また、長期的には本疾患のような超稀少疾患に対応できるような、規制システムそのものの改革も検討すべきと考えられた。
結論
平成25年度にジアゾキサイド不応性先天性高インスリン血症へのオクトレオチドの保険承認を目指した2組の臨床試験(SCOCHレジストリ、SCORCHスタディ)を開始した

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201324108Z