難治性潰瘍を伴う強皮症、混合性結合組織病、全身性エリテマトーデスに対する低出力体外衝撃波治療法

文献情報

文献番号
201324107A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性潰瘍を伴う強皮症、混合性結合組織病、全身性エリテマトーデスに対する低出力体外衝撃波治療法
課題番号
H24-難治等(難)-一般-069
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
石井 智徳(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 川口 鎮司(東京女子医科大学 膠原病リウマチ痛風センター)
  • 張替 秀郎(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 下川 宏明(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 伊藤 健太(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 石澤 賢一(東北大学病院)
  • 斎藤 真一郎(東北大学病院)
  • 藤井 博司(東北大学病院)
  • 井上 彰(東北大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
37,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
膠原病では小動脈から毛細血管レベルの血管に変化が生じ虚血性病変を起こすが病態は複雑で複数の機序でおこる。強皮症(SSC)、混合性結合組織病(MCTD)、全身性エリテマトーデス(SLE)においてはしばしば重症レイノーに伴い指尖を中心として血管炎によらない虚血性難治性潰瘍が出現する。こうした潰瘍は炎症性病態が中心ではなくステロイドホルモン等の免疫抑制療法の効果は極めて限定的で、血流増加のための薬物療法、外用剤を使用しての加療、交感神経ブロック等の外科的加療に加え対症的、姑息的な加療とならざるを得ない。現在薬物内服療法として血管拡張薬、抗凝固薬、抗血小板薬が使われているが内服療法の効果は不十分で、多くの症例でプロスタグランジン製剤頻回点滴がなされる。しかし、これら加療でも潰瘍の改善は容易ではなく数か月単位で強い疼痛、潰瘍が消失しないままプロスタグランジン製剤の頻回投与を余儀なくされる症例が存在する。このように、同病態はいくつかの点で大きな問題を持ち、膠原病において新しい加療方法が早急に必要とされる病態の一つである。一方、尿路結石破砕治療に用いられている出力の約10分の1という低出力の衝撃波を体外から照射すると同部位の血管内皮細胞などより血管増殖因子が産生される。欧州では、この作用を利用した難治性潰瘍に対する低出力衝撃波療法の有効性が示され薬事承認されている。当院でも虚血性疾患として重症狭心症患者を対象に加療が行われ有効性が示されており、更に心臓以外の虚血性疾患として間歇性跛行を訴える末梢動脈閉塞性疾患患者における臨床研究がなされ歩行能力、生活の質(QOL)、筋酸素需給の改善を認めた。今回の研究では平成24~25年度にSSC、MCTD、SLEにおける虚血性潰瘍病変に対する臨床試験(POC試験)を行い、その効果・安全性を確認した。この結果をもとに平成25~26年度にPivotal試験としての医師主導治験として行い保険収載を目指す事が目的である。
研究方法
平成24年度、25年度
A)本研究は平成25年度に開始した「難治性潰瘍を伴う強皮症に対する低出力体外衝撃波治療法」の医師主導治験を完遂する事を目指している。この治験は東北大学臨床研究推進センターを中心に行われている。当センターでは現在専任のプロトコール作成、治験実施に携わるスタッフが勤務しており、専任CRCも配置している。平成24年、25年度は以下のことを行った。
A)POC試験及び自然歴レジストリーの構築
SSC、SLE、MCTDにおける皮膚潰瘍に対する衝撃波療法に対するPOC試験を臨床試験として行い、自然歴レジストリーを対照として、その有効性及び安全性を確認した。
B)医師主導治験(検証試験:Pivotal試験)体制の構築
1)PMDA開発前相談、治験相談を受け、治験のためのプロトコールの確定と治験概要書の作成を行った。
2)治験プロトコール・患者説明同意文書および同意書・CRF (Case Report Form)作成・治験機器概要書作成をおこなった。
3)東北大学にてIRB承認を受け、治験届を提出し受理された。通常治療群に対しては東北地方11施設、群馬大学に対するIRBを行い通常治療群の治験実施体制を整えた。
C)医師主導治験の開始
結果と考察
PMDA相談を平成25年8月8日に受け、治験のためのプロトコールの確定し治験概要書の作成を行い、治験プロトコール・患者説明同意文書および同意書・CRF (Case Report Form)作成・治験機器概要書作成を行った。更に東北大学にて平成25年9月30日IRB承認を受け、平成25年10月7日治験届を提出した。医師主導治験を平成25年12月2日開始し衝撃波療法群に東京女子医大3例、東北大学14例、計17例の症例が組み込まれている。また通常治療群は現在登録施設12施設において全部で15例の症例が組みまれ試験が進行している。
衝撃波療法の膠原病性非炎症性皮膚潰瘍への治療が効果的あることが確認されれば、保険医療としての承認を得ることができる。それにより、非常に難治であり治療法がなく苦しんでいる多くの患者にとって①病変部の潰瘍改善及びそれに伴う疼痛の改善、②日常生活、仕事内容の改善により、本人の利益のみならず、家族の利益、社会的利益を創出。③プロスタグランディン連日静脈内投与が中止可能となり、頻回通院などによる社会的不利益を減少させる等の利益がある。
結論
強皮症難治性潰瘍に対する低出力衝撃波療法に関して、平成24年度に行われたPOC試験、自然歴レジストリーの結果を用い、本年度から検証試験である医師主導治験を開始した。本治験により、強皮症に合併する難治性潰瘍を治療するための治療法として保険診療に承認されることになれば多大な社会的貢献になるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201324107Z