家族性LCAT欠損症患者に対する細胞加工医薬品「LCAT遺伝子導入ヒト前脂肪細胞」の早期実用化にむけた非臨床試験

文献情報

文献番号
201324103A
報告書区分
総括
研究課題名
家族性LCAT欠損症患者に対する細胞加工医薬品「LCAT遺伝子導入ヒト前脂肪細胞」の早期実用化にむけた非臨床試験
課題番号
H24-難治等(難)-一般-065
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
武城 英明(東邦大学 医学部医学科)
研究分担者(所属機関)
  • 石橋 俊(自治医科大学附属病院)
  • 佐藤 兼重(千葉大学 医学部)
  • 花岡 英紀(千葉大学医学部附属病院)
  • 黒田 正幸(千葉大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
49,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は根本的治療法のない難治性血清蛋白欠損症である家族性LCAT欠損症に持続的蛋白補充に基づく細胞医薬品を患者へ早期に提供することを目指し、遺伝子治療技術の有効性と安全性にかかわる臨床研究、臨床試験(治験)を経て、国内での医薬品製造・販売承認(薬事承認)へ円滑に繋げる非臨床試験成績を収集する。本研究成果は、これと同時に並行して平成25年度以降実施予定の遺伝子治療臨床研究『家族性LCA T(レシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ)欠損症を対象としたLCAT遺伝子導入ヒト前脂肪細胞の自家移植に関する臨床研究』の成果を有効に活用することにより、これまで根本的治療法のない家族性LCAT欠損症に対して新たな治療法の確立、その予後の改善とQOLの向上に貢献するのである。尚、本治療法の基本コンセプトである持続的蛋白質補充療法はファブリー病、ニーマンピック病、原発性脂質異常症、糖原病、原発性ホルモン産生障害、血友病、小人症などの難治性遺伝病、さらにはアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経難病、Ⅰ型糖尿病、慢性リウマチなど既存療法において様々な課題を有する難病に適用可能であり、将来そのような広い疾患を対象にして国民の保健・医療・福祉の向上を通じ社会貢献を目指す。
研究方法
今年度、厚生労働省より、これまでの一連の研究成果をもとに患者さんへの遺伝子治療臨床研究が認可された。このことにより初めて患者を対象とした移植治療研究と患者脂肪組織を用いた非臨床試験を行うこととなった。さらに、LCAT遺伝子導入前脂肪細胞の品質に関するPMDA相談を受け、今後の検討事項が定められた。このような厚生労働省、PMDA相談のもとで今年度下記のような非臨床試験を実施した。
結果と考察
非臨床動物試験の遂行に向けた検討を行った。薬効・薬理試験用の病態モデルマウスとしてLCAT遺伝子欠損とヒトApoAI遺伝子を有するマウスを作出した。薬効・薬理試験に必要な個体数を確保するための繁殖を実施している。また安全性試験のモデルとして、免疫不全マウスとイヌ(ビーグル)を評価した。免疫不全マウスとしてNOD/SCIDマウスを使用し、LCAT遺伝子導入ヒト前脂肪細胞の移植によりhLCATの血中への持続分泌が認められた。本研究では大動物における安全性評価が重要な課題である。H24年度までの検討結果から、イヌの脂肪細胞がヒトの脂肪細胞と類似した増殖特性を示すことが確認されたため、イヌを用いて自家移植試験が可能かどうかを検討した。ヒト前脂肪細胞と同様の方法によりhLCAT遺伝子導入イヌ前脂肪細胞を調製し、日本バイオリサーチセンターで自家移植試験を実施した。これまで大動物としてカニクイザルやミニブタを評価してきたが、細胞の増殖性が悪く十分量の移植細胞数が得られていなかった。一方、イヌ前脂肪細胞は獲得細胞数や増殖特性がヒト前脂肪細胞と類似し、自家移植個体で少なくとも移植14日目まで血中にhLCAT蛋白が検出された。このことから安全性をイヌで評価することが適当であると考えられた。今後イヌでの持続分泌が可能かどうか、もしくは抗体が出現しているかどうかを精査し、GLP試験へと進める予定である。このようなイヌ動物試験の成果とあわせ、移植するために採取するヒト脂肪細胞の年齢、性別、採取部位などの違いに応じた特性変化を広く検討するため表面抗原解析を用いた基礎検討に着手した。さらに、LCAT蛋白のELISA試験と、細胞移植後のクローナリティー試験(LAM-PCR法)を確立するための試験結果を得た。
結論
今年度の試験成績を基に、来年度PMDAでの非臨床試験に関する相談を受ける予定である。また、H26年度は中間評価結果に基づき、非臨床動物試験として薬効・薬理試験と大動物を用いた安全性試験に注力する予定である。これらの成果の下、標準治療法として共同研究先のセルジェンテック株式会社(移植治療用遺伝子導入前脂肪細胞の製造元)が本細胞を医薬品としての承認を目指す予定である。千葉大学に新たに設置される細胞調製室(CPC)におけるGMP製造体制を構築し、各種品質・特性試験を改善し、確立する予定である。
さらに、前脂肪細胞を用いたex vivo遺伝子細胞治療は我が国が世界に先駆けて進めている独自の技術であり、PMDAとの相談の下、進めていく遺伝子導入前脂肪細胞の製品規格、GMP製造技術構築などにより確立される一連の細胞製造技術並びに、がん化、クローナリティー等の細胞造腫瘍性の評価等の安全性対策やヒト・動物細胞を用いた有効性評価によって取得する非臨床試験成績は、幹細胞やiPS細胞をはじめとするヒト自家あるいは他家の細胞・組織利用医薬品や臓器移植にも適用できる基盤研究成果となる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201324103Z